第98話 陸疾の技能開花
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「やはり盾と言い防護服と言い、良いものを着けているな。だがそれにも防ぎきるには限界がある。次同じ攻撃を防ぐことは出来んだろう。となればカウンターを仕掛けるまでだがこの《乱舞双撃・紫陽花》は俺でも把握出来ないほど無作為に攻撃する。その間にカウンターを仕掛けるのは至難の業だ。」
「つまりカウンターを仕掛けるのは無理だと?ご丁寧にどうも。つまりあんたが言いたいのはカウンターではない純粋な攻撃力ってのをぶつけて来いってことだ。」
そう言いながら陸疾は自分の足に力を巡らせた。何かをしてくることはネルにも伝わったらしい。余裕そうに笑みを浮かべていた。
「…まあそう言うことになるな。今まで受けてきた中ではそこまでのダメージは期待出来ないが…。果たして純粋な攻撃力とやらがお前から出されるのかな?」
「見せてやるよ、俺のとっておきの攻撃をね。―技能開花―《空歩ノ理・鋭刺突》」
陸疾はネル目掛けて猛然と走り出した。槍による突撃の威力を上げるにはもちろん突撃のスピードが大切である。《空歩ノ理・鋭刺突》は鋭い突撃を実現するために空歩ノ理で出現されられる足場の数を瞬間的に倍にするものである。これにより文字通り空を駆け上がることが可能になったのである。瞬間身の危険を悟ったネルが回避を試みたため直撃とは行かなかったがその一撃はネルの脇腹を抉ってみせた。
「ぐふっ。俺に真剣な回避を考えさせるとはな。認めようその攻撃は俺に確かなダメージを与える純粋な攻撃力を持つ。だがそれはもう俺には当たらない。当たれば俺は負けてしまうからな。」
「なるほど、それじゃあ俺はこれをもう一度あんたに当てれば勝てるって訳だな。」
「もちろん。…その前に俺がお前を葬るがな。―技能解放―《双爪乱舞》」
突如距離をつめてきたネルによって放たれた攻撃で陸疾は吹っ飛ばされてしまった。着込んでいるチョッキがある程度の衝撃を防いでくれているとは言えこれ以上の負担はまずいかもしれない。もしこのチョッキが壊れた場合陸疾はネルの猛攻を防ぐ手段がロブスティラ以外無くなってしまうのだ。そしてロブスティラだけでは《乱舞双撃・紫陽花》を防ぎ切ることは出来ない。つまりこれ以上戦闘が長引けば陸疾にとって不利であり、すぐにけりをつける必要があった。
「さっきの攻撃が技能開花ならまずかったかもな。そろそろチョッキが限界だよ。」
「…なるほど、やはり防護服では限界があったか。お前との戦いは楽しかったがそろそろ終わらせるとしようか。」
「あぁ、そうしようか。この勝負ガーディアンズが勝たせてもらう。…行くぞ!―技能開花―《空歩ノ理・鋭刺突》」
「お前の最高の攻撃、俺も最高の攻撃で受け止めよう。―技能開花―《乱舞双撃・紫陽花》」
2人は技能開花を同時に発動しそれぞれが先に相手に攻撃を浴びせようとしていた。先に攻撃を食らわせてた方が勝つ。そんな雰囲気が辺りに漂っていた。しかしネルは冷静であった。戦闘に介入して来ないもう1人が先程の特製銃弾と言っていたものを準備しているのに気づいていたのである。今まさに銃弾を発射しようとする準備が整ったようだ銃を構えるのが視界の端に映った。
「無駄だ、お前の銃弾が届く前に俺の技能開花がこいつを葬る。そして攻撃は俺の方が早い!」
「いいや、この銃弾が届く頃に葬られているのはあんただ。―技能解放―《不失正鵠》」
凛夏は技能解放を発動させた。特製銃弾の残りは1発。ここぞと言う時にしか使えないにも関わらず準備が大袈裟すぎるために敵に攻撃がバレてしまうのが難点である。凛夏はそれを逆手に取った。大掛かりな準備をしているふりをして《不失正鵠》を発動させたのである。放たれた銃弾ではネルを倒すことは不可能だろう。しかしその銃弾が届くまで敵に一切の行動を制限するのだ。
「これがあんたを倒すための算段だ!食らうが良いー技能開花―《空歩ノ理・鋭刺突》」
陸疾の技能開花は回避を取ることの出来ないネルを真っ向から貫いた。絶命にこそ至らないが戦闘し続けるのが不可能と言える程のダメージがネルを襲った。
「やったな、陸疾。」
「あぁ、作戦通りだ。後はこいつを拘束するだけだ。拘束出来次第ディメンションズの職員に引き渡そう。…これで良し、と。ええと、ディメンションズの職員はどこにいるんだ?…あれがそうか?」
何とか勝利することが出来ました。陸疾の勝ちというより凛夏の《不失正鵠》をうまく使った作戦勝ちですね。パラドクスとの戦いにおいてガーディアンズの基地が本拠地に、ディメンションズの基地が捕虜の収容所となっており倒したパラドクスを連行するのはディメンションズの職員の役目になります。




