第97話 ネル・ルード
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そう言ってネルは掴んでいた瞭司をその辺に放り投げた。幸いまだ意識はあるようで地面に着地した時にうめき声が聞こえて来た。とは言え長時間放置するのは危険である。従って陸疾と凛夏は前情報が何も無い状態でネルを出来るだけ早く倒す事が求められることになる。
「さて、肯定こそしてないが仲間であることは違いないな?お前らはこの俺を楽しませてくれるのかな?」
いきなりネルが突撃を仕掛けて来たのである。こちらを倒すためではなく小手調べのような直線的な突撃である。凛夏は距離を取り、陸疾は《逆襲ノ舞》によるカウンターを仕掛けようとした。
「―技能解放―《逆襲ノ舞》」
「カウンターとは面白い。だがそれは俺には届かない。…残念ながらな。」
ネルの突撃自体にそこまでの威力は無かったのだろうが陸疾の《逆襲ノ舞》は軽く受け止められてしまったのである。陸疾にはまるで手応えが無かった。
「ならこれならどう?―技能解放―《不失正鵠》」
「…!これは面白い。」
ネルは瞬間驚いた顔をしたのだ。それは《不失正鵠》の効果である着弾まで対象の動きを制限する効果に驚いたのだろう。しかし当てられたとしてもネルには大したダメージにはならなかった。
「…拍子抜けだな。まあ見たところそれはアサルトライフルか。なら仕方あるまい。アサルトライフルごときに葬られるほど柔な鍛え方はしておらん。」
最初こそ驚いた顔をしていたネルであったが食らったとしても大したダメージにならないと知るとがっかりした表情を浮かべていた。その隙を見て陸疾は一旦凛夏の近くまで退避したのだ。ネルには聞こえないような小声で陸疾は声を発した。
「凛夏、特製銃弾ってあっただろ。それあと何発いけるんだ?」
「一応2発ある。…ただあからさまに準備がいるからあいつの注意を引いてほしいかな。」
「…分かった。」
「何を話しているかまでは聞こえんが…。俺を倒す算段でも立てているな?ふふ、それでこそ面白い。俺は真っ向からそれを叩き潰すのが好きでな。それで来るのか?来ないのか?来ないのならこちらから仕掛けてやろう。―技能解放―《双爪乱舞》」
先程よりも素早い動きで2人に迫ったネルは鉤爪で2人を襲ったのだ。陸疾はロブスティラでそれを防ごうとしたがそれだと凛夏が無防備となってしまう。強引に凛夏とネルの間に入り込むとロブスティラを構えた。
「なるほど、良い盾だ。だがまだ甘い!」
素早く回り込んだネルは横から陸疾を襲った。一度は上手く反応し防いだものの何度も回り込むネルは死角から陸疾を捉えた。
「…ほう、良い防護服だな。となると腹部へのダメージは期待出来んか。」
《双爪乱舞》によって鎧に打撃を加えたネルだったが鎧の下に着ているチョッキに反応を示した。強烈な攻撃だったがチョッキはなんとかそれを防ぎきることが出来るらしい。特に陸疾にはダメージは無かった。
「今度はこちらの番だ!―技能解放―《空歩ノ理》」
「ほう、空中戦か。面白いぞ受けて立ってやろう!」
宣言通りネルは陸疾の《空歩ノ理》による突撃を真正面から受けたのである。陸疾は先程の《逆襲ノ舞》よりも手応えを感じていた。しかしネルには大したダメージにはならなかったようだ。
「それで俺が倒せるとでも?やはり千年も昔だ、マイケルがやられたかもしれないと聞いて心が躍ったものだが…。技能開花ならともかく技能解放ごときでは俺は倒せんよ。仕方ない何やら準備しているそいつの攻撃に期待するかな。」
ネルは凛夏の動きに気づいていたようだ。真正面で陸疾と戦いながらも凛夏にも気を配っていたということである。その視野の広さに驚いた凛夏であったが特製銃弾の準備もその時整ったのである。
「やっぱりバレてたか。でもおかげで準備は整った。特製銃弾を食らえ!」
ネル目掛けて放たれた特製銃弾はまっすぐ飛んで行った。やはりこれも正面から受けるのだろうか、ネルは瞬き一つせず待ち構えていた。
「…なるほど、今までの攻撃じゃあ一番ダメージを食らったかもな。だが所詮この程度、生身で食らってなおろくにダメージを与えられんお前らには到底俺は倒せんだろうな。…さて、ダメージとはどう言うものかお前らに教えてやろう。―技能開花―《乱舞双撃・紫陽花》」
ネルは鉤爪を正面に構えた。何をされても対応出来るようロブスティラを前に構えた陸疾に向かってネルは突如走り出した。まるで規則性の無い鉤爪による切り裂き攻撃が無作為に陸疾を襲った。重めの一撃を防ぐのには定評のあるロブスティラでも何度も別の方向から攻撃されることは防げない。ついには盾ごと飛ばされた陸疾は飛ばされている間にも数回その攻撃を受けたのである。大きく壁に打ちつけられた陸疾であったが戦闘不能までは追い込まれてはいない。すぐさま立ち上がり梔子を構えたのである。
ネル・ルードはリーダーではありませんが、今回侵略をしてきたパラドクスの中では一番の実力者です。相手の攻撃を避けもせず受けたがるので攻撃こそ当たりますがかなりのタフさを持っているため中々倒せません。渾身の一撃を直撃させたいところですが…。




