第95話 良く知る技能開花
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完全にティアゴはキレてしまったようだ。両手の掌を前に向けて技能開花を発動させた。先程同様凄まじい磁力が研悟を襲った。しかし研悟は顔色一つ変えなかった。必殺技は一度で相手を必ず殺すからこそ必殺技なのである。研悟は自分の技能開花で相殺出来てかつ何をしてくるか大体分かっている技能開花で自分が死ぬとは微塵も思っていない。研悟は静かに日本刀を構えた。
「発動条件が分かっていない技能開花はもう出せまい。お前が負けるのは技能開花に対する練度の差だ。それを精々悔やむんだな。」
ティアゴが研悟を嘲ったその時研悟の背後から人影が現れた。
「今度こそお前に叩き込んでやる!―技能開花―《百ノ追撃》」
現れた人影は拳司である。拳司はどうやら研悟しか見ていないティアゴの隙をつこうと探っていたようだ。恐らく研悟の戦闘を見て自分でもいけると踏んだのだろうか、一直線にティアゴに突撃して行った。
「邪魔をするな!技能解放如きで俺を倒せるとでも?」
拳司は簡単にあしらわれ鉄柱により薙ぎ払われ地面に叩きつけられた。叩きつけられながら拳司は後ろに向かって叫んだ。
「今だ!投げろ‼︎」
その声と共に細長く尖った物体がティアゴ目掛けて飛んできたのだ。いつの間にか近くまで永遠が来ていたようだ。すなわち飛んできた物体は永遠の技能解放である《爆撃矛槍》なのである。反応が少し遅れたが見たことのある技能解放を咄嗟に対処出来ないティアゴではない。回避しながら左手の鉄柱でこれを受けた。殆どの鉄柱が砕けてしまったが星核の磁力で再生が可能なため実質ノーダメージと言って良い。
「二度言わせるな!技能解放では俺は倒せん‼︎」
戦闘の邪魔をする2人に腹を立てたティアゴは思わず2人を睨みつけていた。咄嗟の判断とは言え回避した時に自分から研悟に近づく格好になってしまった事にまだティアゴは気づいていなかった。
「なんだよ、サポート出来るじゃんか。それじゃあさっさと技能開花で終わらせるとしますかね。」
「何⁉︎いつの間にこんな近くに来た!それに技能開花だと?発動条件も分からんものに惑わされる俺ではない!不用意に近づいたお前はこの星核の餌食になるのだ‼︎」
左手の鉄柱はまだ再生している途中であり強度も脆く研悟に大ダメージは与えられない。しかし右手の鉄柱は未だ健在であり、近づいてきた研悟に思い切り突き刺そうとした。研悟は避ける素振りも見せない。ただ日本刀を構えているだけである。
「さっきのは出せない、偶然だからな。お前に俺のよく知ってる技能開花を教えてやるよ。―技能開花―《居合ノ匠・繊月》」
素早く振り抜かれたその一撃は突き刺そうと猛然と迫る鉄柱ごとティアゴを切り裂いた。居合のその太刀筋はまるで月のように弧を描いてティアゴの両手を斬りつけたのである。斬られた衝撃と痛みで動けずにいたティアゴを流れるように体を回転させて研悟が渾身の前蹴りを喰らわせた。壁に打ちつけられたティアゴはそのまま意識を失ったのである。
「…ふぅ、痛いのに蹴りなんてするもんじゃねぇな。」
どこからかディメンションズの職員が現れティアゴを連行していった。その様子を研悟が見届けていると拳司が近づいて来た。
「なんとか勝てたな。やはりパラドクスは強敵だった。」
「さっきの職員はお前らの所の職員だろう。他の所の情報を何か言ってなかったか?」
「侵略してきた人数は確認出来ているところでは5人。うちの基地の近くで1人、川沿いでもう1人が無力化して拘束されているらしい。俺らのこいつで3人目だ。」
「そうか…。誰が倒したとかも分かったのか?」
「それはまだ何とも言えない。基地に戻れば何かしら分かるだろうがそこまでは教えてはくれなかった。多分職員も把握出来て無いんだろう。」
少し心配そうになった研悟に永遠が近づいて来た。永遠は特に心配はしていないようだ無事にこの場での戦いが終わった事に安堵しているのか笑みを浮かべている。
「そんなに心配することないわよ。あなたが心配してるのはあの子でしょう?相谷くんだっけ?大丈夫、彼もパラドクスに勝つはずよ。」
「俺だって心配だぜ。俺の弟の所からも何の情報も来てないからな。多分今も戦闘中だろう。だが二宮が言うようにきっと勝って帰ってくるはずだ。俺らは俺らの出来ることをする。とりあえず基地に戻って指示を待つのが良いんじゃないか?」
「そうだな…。ひとまずそうするか。」
《納刀術・乱レ桜》は本当に偶然のラッキーだったようですね。研悟が技能開花として習得したのは《居合ノ匠・繊月》だったようです。他2人のサポートもあり見事にティアゴに勝つことが出来ました。
さて今回侵略してきたのは5人だそうです。今のところ3人を倒した模様です。後2人からも勝つことが出来るんでしょうか。




