第94話 研悟の反撃
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「もちろん引きつけて作ったこの鉄柱で相手を攻撃することも出来るんだよ。」
ティアゴは手にした鉄柱で研悟を薙ぎ払おうとした。振りかぶった瞬間磁力が研悟に干渉しなくなったため研悟はその薙ぎ払いを回避しようと試みた。上下どちらにするか瞬間迷ったが研悟はその場に伏せてやり過ごすことにしたのだ。それを見てティアゴはニヤリと笑った。
「お!正解だよその避け方は。空中でどうにかする技能でも無い限り空中に避けるのは愚策だ。空中のお前目掛けてこの鉄柱をかざせば戦闘が終わるからな。」
「ご丁寧にどうも。お前のその技能開花、強力だが効果時間があるはずだ。その《磁場凹凸・星核》とやらが解除された時反撃させてもらう!」
「残念ながらこいつに効果時間は無いんだな。」
「何!」
研悟にティアゴは更に鉄柱で攻撃を仕掛けようとするが全てそれを回避し研悟はひとまず距離を取った。技能開花の効果時間の終了を狙ったのである。しかしその読みは外れたようだ。ティアゴは右手を横に構えながら研悟を見下ろしていた。
「この星核は俺の技能開花によって生み出されたものだ。技能開花自体はこれで終了しているのさ。そして生み出された星核が壊れない限り俺はこいつを使って自由に戦闘することが出来る。つまりお前の狙いは大外れって訳だ。…大外れした奴には絶望が似合う。」
そう言うとティアゴは左手を前にかざした。まさかと目を見開いた研悟には左手の先に鈍色の球体が見えたのである。
「―技能開花―《磁場凹凸・星核》」
再び強烈な磁力が研悟を襲った。先程と比べると距離が離れていたためかやや磁力は落ちているもののそれでも踏ん張っておかないとすぐに引き寄せられそうである。研悟は永遠と拳司はどうしていると少し気になって振り向いた。2人とも磁力の届かない距離まで離れていたのだ。そしてそれは言い換えれば戦場に干渉出来ない程離れているとも言える。やはり2人のサポートは得られそうになかった。
「ここにきて仲間の力が必要か?だがお前の仲間は加勢する気は無さそうだ。お前が敗れればすぐに狙われると言うのに楽観的な奴よ。」
「…言い換えれば、信頼されてるってことだな。」
「あ?意味が分からんぞ?何の信頼だ?」
「俺が単独でお前を倒せることを信頼してくれてんだよ。」
「…まさかお前もそんな楽観的だとは思わなかった。それじゃあさっさと終わらせるか。」
ティアゴは両手を前にかざした。当然の如く先程とは比べものにもならないほどの磁力で研悟は引き寄せられた。最早地面から足が離れれば地面につくことが無いと思えるほどの磁力を感じた研悟は逆に地面を蹴って前に出たのだ。
「強力な磁力も使いようはあるはずだ。俺の自慢のこの刀もってくれよ!」
強力な磁力と研悟の前に進む力で勢いが増した日本刀を前にした突撃は凄まじい音を立てながら鉄柱を引き裂いていった。およそ半分ほど引き裂いたところでその勢いは止まった。研悟は刺さった日本刀を引き抜くと鉄柱の下へ潜り込みながら日本刀を鞘に収めた。
「どうやら使いようはあったらしい、少なくともこの鉄柱が突き刺さることは無くなったな。そして今のが攻撃に当たるらしい。発動条件もよく分かって無いし効果もまだよく分からないがな、お前で試すとするか。―技能開花―《納刀術・乱レ桜》」
思い切り振り抜いた研悟のその技能開花は凄まじいほどの乱撃となりティアゴの両手の星核は見事に砕け散った。咄嗟に鉄柱を盾にしたためティアゴ自身にそれほどのダメージは無かったが星核が砕け散ったことの精神的なダメージはかなり大きいようだ。
「この野郎…、よくも星核を…。」
「あんなに鉄を引き寄せるのに本体は案外そこまで強度無いんだな。俺の技能開花で対処出来そうだ。」
「技能開花は技能を持つものの内選ばれし者だけが出来る必殺技だ。お前のあれを技能開花とは俺は認めねぇ。…第一発動条件も効果も良く分かってないだと?技能開花を舐めるんじゃねぇよ!」
「あぁ、悪いな。発動条件や効果が良く分からなかったのは理由があるんだ。何しろさっき出来るようになったからな。」
「…は?お前は何を言っている?さっき出来るようになっただと?それじゃあお前は全く偶然の産物で俺の技能開花を破ったとでも言うのか?もう良い、お前は俺に勝てはしない。偶然で技能開花するなんてラッキーは一度で充分だ。だが戦場に二度の偶然は存在しねぇよ。それがお前の敗因だ。―技能開花―《磁場凹凸・星核》」
《納刀術・乱レ桜》は一定以上のダメージを相手に与えた際に発動できる技能開花です。技能解放と比べるとその威力は段違いと言えるでしょう。研悟は脆いと言っていましたが鉄柱も星核もかなりの強度があります。発動出来たのは星核の持つ磁力に助けられたからなのかもしれませんね。




