第93話 星核
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「…俺がやろう。サポートしてもらって何とかと思ったがそんな次元でも無さそうだ。下手に2人の技能は使えん。逆に利用されてダメージを負うかもしれないからな。」
「…最後はお前か。一応聞いとくか、お前技能開花は知ってるか?」
「…知っていたら何になる?」
「一応聞いただけだ。さて、お前の攻撃も見せてもらおうか。」
無言で研悟はガレキの中に突っ込んで行った。ティアゴへの道を阻むように漂うガレキを最小限の動きで斬りながら進んで行きついにはティアゴのすぐ近くまでやって来た。
「ほう、技能解放も無しにここまで来るとはな。…だがこいつは結構骨が折れるぞ?」
ティアゴがそう言うと上空からさらに大きな鉄の塊が降ってきた。大きさと形からして戦車の類いだろうか?先程の飛行船よりも質量が多いため流石に技能解放無しでは対処出来そうに無かった。
「…でかいな。―技能解放―《納刀術・乱撃》」
《納刀術・乱撃》によって降ってきた戦車は斬りつけられバラバラにこそならなかったが研悟の上に落ちる事なく地面に不時着しスクラップと化した。そしてこの攻撃によって研悟の3つ目の技能解放の発動条件が満たされたのである。もうティアゴは目前でありティアゴをまっすぐ見据えて研悟は日本刀を構えた。
「やるねぇ!中々パワーもあるじゃないの。これは攻撃が楽しみだ。」
「―技能解放―《次元切断》」
「お、これはちょっとヤバいかな?」
研悟は構えた日本刀をそのまま振り抜いた。それによって飛ばされた斬撃がまっすぐティアゴを襲った。この斬撃は《次元切断》の効果により当たったものが確実に切断されるようになっている。つまり余裕をかましているティアゴに直撃した場合一気に勝敗が決する訳である。しかしティアゴはそれを瞬時に感じ取っていた。肩口から鉄パイプを取り出すとそれによって棒高跳びの要領で器用に回避したのである。なお斬撃が直撃した鉄パイプはもちろん一刀両断されていた。
「…っち、回避するとはな。攻撃を見るんじゃ無かったのか?」
「さすがにあれをそのまま受けはしねぇよ。この俺に回避させた礼だ、受け取りな。―技能解放―《磁場凹凸》」
ティアゴは研悟に向かって手をかざした。研悟は瞬時には何が狙いか分からなかった。慌てて回避を試みたが少し遅く先程スクラップにしたガレキが左脚に突き刺さった。
「…痛ぇな。」
かなり深々と突き刺さったそれを研悟は力任せに引き抜いた。止血をしている余裕は無いが長時間の放置は出来ないほどの血が流れていた。
「ほう、タフだな。それだけの血を流してなお戦おうと?だが動きに精彩さが無くなっているぞ?」
「うるせぇ、いくら血を流そうと俺は負ける訳にはいかないんだよ。」
「…なるほど、戦うだけでなく勝つ意志もあるわけだ。俺は長い戦いも好きなんだが…、お前にそれは野暮ってもんだな。全力でいかせてもらおう。―技能開花―《磁場凹凸・星核》」
ティアゴは右手を前にかざした。研悟はその手の前に鈍色の球体がある事に気づいた。恐らくはそれを飛ばすもしくはそこから何かしらが出てくるのだろう、そんな読みをして身構えた研悟は自分が前に重心を置いていることに気がついた。不思議に思った時には既に遅く恐るべき力で研悟は引き寄せられていたのだ。
「…!これはヤバいな。」
研悟は引き寄せられるまいとその場で強く踏ん張っていた。先程の傷が痛むがそれを気にする余裕などは無い。
「精々踏ん張っておくんだな。こいつは俺でも巻き込まれる可能性があるほどに強い磁力を放つ。」
既に多数のガレキが引き寄せられティアゴはまるで鉄柱を手から伸ばしているかのようである。強烈な指向性を持った磁力により引き付けられたガレキは磁力に従って遠ざかるほどに鋭く突き刺さっていた。
「ほう、案外足腰は強いんだな。だが、さっきの傷が効いてるなぁ、もう少しで踏ん張りが効かなくなりそうだ。…お前がいくら踏ん張ってもこいつからは逃れられねぇよ。」
そう言うとティアゴは研悟に向かって歩いて近づいてきた。前方に強い指向性を持つ故にティアゴ自身の動きには何ら干渉しないのだ。つまりティアゴはいたって普段通りに動くことが出来る。近づかれたことでさらに強くなった磁力に最早踏ん張ることが困難になったその時ティアゴが振りかぶった。
ティアゴの技能開花である《磁場凹凸・星核》が発動しました。鈍色の球体が星核になります。指向性の説明が難しいんですが要するに星核から一直線上にあるものだけを引き寄せているという事です。これによりティアゴ自身には動きになんの不自由もありません。




