第91話 技能開花の発動条件とは
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「千年前の銃弾は面白い物を使うのだな。ガラスのように見えるが何かまでは正確には分からない。…まあ後で放った本人に聞くとしようか。…ふふ、まだ仲間がいたのか、最後まで油断出来ない相手だ。だがそのあがきも無駄に終わった。最後にこれからの後学のために、貴様のあの技能開花について聞いてからトドメをさすとしよう。どうせ私にトドメをさされるんだ技能開花について話してから死んでも違いはあるまい。」
優しげな口調でトッドはまっすぐ定平を見た。最早トッドの興味は先程の定平の技能開花にしか向けられていなかった。定平はその表情から確かにこの目の前の人物はこの戦闘の最後に自分の技能開花について聞こうとしていることを、そしてその後自分にトドメをさそうとしていることを読み取った。同じく定平もまたその説明が終わった時この戦闘は終わりを迎えることを感じていた。定平はゆっくりと技能開花について話し始めた。
「…《狡猾ナル箱罠・大棺》は、技能解放である《狡猾ナル落下罠》同様相手を罠にはめるもしくはそれによって動きを制限させることによってその効果が発揮される。そして食らわせた相手の意識を奪って拘束する事が出来る。あの時食らわせる事が出来ていたなら今頃君は意識を手放し2度と取り戻せはしなかっただろう。」
「食らってたらそうだったろうな。それほど強い技能開花だ、発動条件もかなり難しいのだろう?勿体ぶらずにそれもさっさと言ったらどうなんだ?」
どうやらトッドは技能開花の発動条件が気になっているようだ。他人の技能開花の発動条件が何の参考になるのかは分からなかったがトッドは一歩もその場から動かずじっと定平の方を向いていた。
「発動条件はそれほど難しいものじゃあない。…大棺を出現させるには相手を一定時間ある場所にいさせ続けないといけない。さっきは焦ってしまって10秒程時間が足りなかった。だから不完全な結果に終わってしまった。本来なら回避なんてものは不可能なんだよ。時間にして1分相手をその場所に留めることでその効果が発揮される。…その場所には目印となるように私によって設定されたものが置かれる。分かりやすく言えば、君がつい1分前に避けたものがそれに当たる。」
そこまで定平が言った時初めてトッドは自分が回避してさほど興味も示さなかった銃弾を見た。銃弾は先程と同じ光を放っていた。体に負担のかかる《衣纏・疾風怒濤》は連発が出来ない。トッドには技能解放でしか回避の策が無かった。
「今度は失敗しないよ。―技能開花―《狡猾ナル箱罠・大棺》」
光り輝く大きな棺が姿を現した。先程の大棺とは違い数秒程異様な存在感を放った後で消え去った。その後には意識を手放し昏睡状態となったトッドが倒れ込んでいたのである。ディメンションズの職員がトッドを拘束しどこかへ連れて行った。それを見届けていた定平のところへケイトがやって来たのだ。
「上手くいったようですね。」
「あぁ、作戦通りだったよ。あのタイミングでの君の銃弾は本当にナイスタイミングだった。」
「おぉいケイト、こっちに手を貸してくれ。はまってしまって自力では出て来れない。」
「何やってるんですか透さん。その状態で他のパラドクスに狙われたら一巻の終わりですよ?」
そう言いながらケイトは透を引っ張り上げた。どうやら右足と左手がはまってしまって出ることが出来なかったようだ。引っ張り上げられた当初は肩で息をしていたがすぐに息は整ったようだ。
「危なかった、定平の方に興味がいっていなかったら俺にはなす術が無い。」
「片山透さんには損な役回りをさせてしまいましたからね。技能解放をわざと見せた上でそれを警戒させてその場にこれをこっそり仕掛ける…。それが最初の作戦でしたから。ただ私が焦ってしまって回避されてしまいました。敵の攻撃を食らう前提の作戦だったのに焦ってしまって本当に申し訳無かったです。」
「良いさ、もう一個の作戦で上手くいったんだからな。パラドクスに勝ったんだ今は素直にそれを喜ぼうぜ。…他のところは大丈夫かな?」
「技能開花が出来るなら勝負にはなるでしょうね。ディメンションズも含めてバランス良く担当されていたはずですよ。陸疾は少し心配ですが研悟は大丈夫でしょう。」
「だと良いがな。とりあえず俺たちはこの戦いで勝利を収めた。カズの奴に報告して指示を待とうか。」
「…お前らの実力はその程度か?もっと楽しめると思ったんだがよ、正直言って興醒めも良いところだ?」
定平が技能開花でパラドクスを撃破したのと丁度同じ頃、ガーディアンズ基地近くの高校では宙に浮いた人物が周囲を見下ろしていた。ボロボロになりながらその人物を睨みつけていたのはディメンションズの佐久間拳司、ガーディアンズの二宮永遠、そして伊狩研悟の3人であった。
定平の作戦勝ちですね。技能『狡猾』は伊達ではないという事です。
さて話題の研悟ですがちょっとピンチのようですね…。




