第8話 結構もらえました
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そう言いながら研悟は手袋を取り出し陸疾に手渡した。革で出来ているらしきその手袋には甲の部分にやや機械質なボタンのようなものがついていた。
「それは装備をしまっておける手袋だ。必要になればそのボタンを押せば登録済みの装備が装着できる優れものだ。」
なるほど装備ってどうするのかよくわかんなかったんだけど、こういう仕組みか。確かに模擬戦で使った装備で普段は過ごせないし、いざって時に着る時間は無いだろうからね。
陸疾は差し出された手袋を装着した。まるで以前から陸疾のものだったかのようにその手袋は手に馴染んだ。
「いいねぇ、似合ってんじゃねぇの?さて、戦闘スタイルも粗方決まったことだし、今度はそのスタイルに慣れないといけないな。本番で焦ってしまうのが一番あり得る撃破のされ方だからな。お前が戦闘に慣れるまで模擬戦をしてやろう。」
「…よろしくお願いします。」
その言葉通り陸疾が槍での戦闘に慣れるまで研悟との模擬戦は続いた。夕方を大きく越え夜がどっぷり更けてきた頃ようやくその模擬戦が終わったのである。
「…ふぅ、まあこんなもんで戦闘は大丈夫だろ。」
そう言いながら研悟は弓の装備を解いた。それにより長引いた模擬戦は終わりを迎え2人は第8ブースから出てきたのであった。研悟は解放された《集中》によりある程度なら得意ではない武器でも扱えるのである。そのため色々な攻撃スタイルを防ぐ練習やそこから攻撃を仕掛ける練習をする相手としてはうってつけであった。
陸疾はいくらVR空間で戦っていたとは言えずっと張りつめていたためか疲れたようにその場で座り込んだ。
「…はぁはぁ。…ようやく終わった。俺はもう限界…。研悟さんよくあんなに連戦で武器も変えて疲れないんですか?」
「疲れないに決まっているだろ、戦闘で息が切れたから休憩させてくださいなんて言えねぇからな。でもまあこんだけ長く戦闘することはもう無いだろうな。お前も頑張ったよ。ほらこれお前にやるよ。」
そう言うと研悟は二戦前に使っていた槍を陸疾へ投げて来た。模擬戦で用意された装備と違う槍であったことから私物であると判断していた代物である。
「…え?この槍って…。かなり良いものに見えるけど…良いんですか?」
「それは黒槍梔子俺がここに入った頃に丈さんから貰ったもんだ。あの人は何でも持っているからな。俺が使っていても良いんだが俺よりお前の方が槍は扱うだろうしな。お前が使ってくれれば丈さんも喜ぶだろ。」
研悟の話を聞きながら梔子と呼ばれたその槍を陸疾は見ていた。見た目の割には軽くとても扱いやすそうである。
「それは扱いやすい上に威力も結構ある。…まあよほどの敵じゃなけりゃ大負けすることは無いだろうし、善戦していたら誰かしらが助けに来てくれるはずさ。盾もあるしそのあたりの戦闘はスタイルに合っているだろうよ。」
「あざっす。大事に使いますね。」
「丁重に使えよ?壊しても直せねぇからな。」
…こうして陸疾は自分の武器である梔子を手にした。それと同時に鍛えた戦闘スタイルが役に立つのはそう遠くないだろうと言う予感も陸疾にはあったのである。そしてその予感は思っているよりも早く当たってしまうことになるのであった。
さてと、もう夜も遅いことだし家に帰るとしますか。夏休みだから良かったけど学校があったら次の日に支障が出そうだよ全く。
そんなことを考えながら陸疾はガーディアンズ基地を出ようとしたのである。出る時もやはり満島古書店からだろうと出ようとした陸疾だったが近くの職員に呼び止められた。どうやらあれは入り口専用らしく出口は別にあるんだそうだ。そんな大事なことをなんで教えてくれなかったんだろうと陸疾が考えていると更なる衝撃が陸疾を襲ったのである。
「それから…、相谷陸疾さん…ですよね?」
「…?そうっすけど。…なにか?」
「…今から寮に戻られるんですよね?」
「寮?」
橋田丈
技能:収集 武器:どれでも
武器収集が趣味の通称丈さん。自身は特に武器を選ばずに扱える上に他の人に適した武器を提供していることも良くある。