第86話 デモンストレーション
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「もっともらしく聞こえるがあんたはただ単にガーディアンズの技能解放が聞きたいだけなんじゃないのか?」
相変わらず研悟は定平をずっと警戒しているようだ。実際警戒はし過ぎる方が良いため研悟が必要以上に警戒するのも分からないでは無い。だがそんな事を言っている場合では無いのだ。マイケルの言葉を信じて2日の猶予があるとしているがそれが全くの嘘で今この瞬間に既にパラドクスの侵略が始まっているかもしれないのだ。
「そう警戒するなら私の技能解放から開示しようか。研悟はもちろん他の人も気になることがあれば何でも聞いて下さい。…まず1つ目、《狡猾ナル落下罠》。これは『狡猾』の技能解放で地面に落とし穴を仕掛けるわけですが、それに少しでも引っ掛かれば相手に痺れを直撃させれば相手の意識を奪い拘束が出来ます。マイケルを倒したのもこの技能解放です。」
「ひえぇ、おっかねぇ技能解放だぜ。しかしあれだなそんなに強いものなら範囲が狭いとか発動条件が厳しいとかあるんじゃねぇのか?」
「その通りです。発動条件は地面に手をかざすことで比較的緩いんですが、まあ発動すれば相手にすぐにバレます。名前と見た目からしてまず引っかかろうとはしないでしょう。」
「どうやってマイケルに仕掛けたんです?わざわざ掛かりにきてくれた訳じゃ無いっすよね?」
「…まあ似たようなものだがね。《狡猾ナル落下罠》に誘導するために使うのがもう1つの技能である『過信』です。これは技能解放にこそ至ってはいませんが相手に過信させ油断が誘えます。まあ慎重な性格の持ち主には通用しませんが直情的な人なら効果はかなり期待出来ますね。」
どうやらこっそりと技能を発動させていたようでそれにより上手くマイケルを《狡猾ナル落下罠》に誘導出来たようだ。『過信』の効果が定平の言うままであれば確かにマイケルには効果はてきめんだろう。
「なるほどな、中々凶悪な使い方が出来そうだな。それじゃあ次は俺の番だな。ええとまず1個目が…」
「待ってください透さん。ちょっとおかしくないですか?技能スペースの解放の時3つ目が解放出来たのは2つとも技能解放出来た者に限られました。他ならぬこの男から3つ目のスペースの解放が分かったのにこの男が技能解放に至っていないはずがありません。恐らく『過信』が3つ目で2つ目の技能解放を隠しているはずだ!」
そこまで一息にまくしたてた研悟はまっすぐに定平を睨んだ。睨まれた定平は少し研悟の方を見たかと思うとやれやれとばかりに肩をすくめて見せた。
「まったく、研悟のそれは慎重じゃなくて疑いだな?まあ良いや、確かに私は技能解放を意図的に隠しました。研悟の言う通りです。」
「おいおい、そりゃ困るぜ。合併前ならともかくパラドクスに対抗するために隠すようなものはないはずだぜ?なんで隠すようなことをしたんだよ。」
「言うなればデモンストレーションですかね。なぜ隠そうとしたのかではなくて『過信』の効果のほどを知ってもらいたくてね。研悟以外の人は私が技能解放を隠したまま説明を終えても何の違和感も持たなかった。これもまた『過信』の力なんですよ。相手の間違った判断を誘う事が出来ます。説明するより身をもって体験してもらった方が早いと思いましてね。…ああ、そうだ。忘れるところだった。私のもう1つの技能解放は《絶対回避》。これは『回避』の技能解放になりまして、文字通り発動後に受ける初めての相手からの攻撃を回避すると効果なっています。以上が私の持つ技能と技能解放についてですね。」
「ええい、ごちゃごちゃ分かりにくいな。要するに『過信』ってのは相手を油断させて判断を間違わせるものなんだな?そしてあんたのもう1つの技能解放は《絶対回避》だと。…中々面白い技能解放だな。今すぐ発動出来るのか?」
「…?問題は無いですけど。―技能解放―《絶対回避》」
定平は言われるがまま《絶対回避》を発動させた。その様子は陸疾にはやや青みがかったオーラのようなものを纏っているように見える。それを見た透はニヤリと笑って口を開いた。
「あんたはさっき『過信』をデモンストレーションしてくれたんだろ?なら《絶対回避》とやらもデモンストレーションさせてくれよ。俺の技能解放の説明のついでにな。―技能解放―《大地緊縛》」
定平は自分の技能解放を意図的に隠していたようです。全く油断も隙もないですね。《絶対回避》に対して透は《大地緊縛》を放つようですね。…一体どうなるんでしょうか?




