第84話 朝が来た
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案内した陸疾はもし何も無い状態で初めてここに来た時ならそんな反応も出来たかもしれないとは思った。実際改めて見るとかなり立派に作られてはいるように感じる。陸疾がこの医務室に来るのは2回目である。目の前にいる定平との戦闘に敗れ訪れた場所のためやや居心地の悪さを感じていた。
「ディメンションズだとその辺に薬とかが放置してあってここまで綺麗に片付いてはいない。仮眠室も無いから寝るためにそこを利用する場合まず片付けから始めなくちゃいけない。だから寝たり休憩する場所には不適切なんだがここだと結構な頻度で利用したくなるな。…おや?君も今日はここで寝るのかい?」
「まあ寮に帰っても良いんですけど明日の朝案内しにわざわざここに寄るくらいなら初めからここにいようと思いまして。」
「ほう、明日も案内してくれるための行動か。素晴らしい、実に良い心がけだ。研悟はそんなこと絶対にしないから君の行動が余計に素晴らしく感じるよ。」
「そんなこと言わずにさっさと寝た方が良いですよ。明日も朝早いんですから。」
大袈裟に言う定平にさらに陸疾は居心地が悪く感じた。多分悪い人では無いんだろうがいちいち大袈裟と言うか疲れるのである。多分研悟が定平のことが苦手なのはこういう側面もあるのでは無いか、そんな風に考えた。ディメンションズ側への業務報告だろうか?定平は何やら端末を少し操作したあとで寝る事にしたようだ。しばらくすると静かな寝息が聞こえて来た。一応何か起こった時のために気を張っていた陸疾も安心して寝る準備を整えた。色々なことが起こり過ぎた1日であったがために陸疾はすぐに深い眠りについたのである。
設定されたアラームが鳴る前に陸疾は目が覚めた。普段よりは短い睡眠だったものの疲れは取れたようで大きくのびをした陸疾はすぐにどこからか香るコーヒーのにおいを感じ取った。定平の姿を探すとどこから持ち出して来たのか椅子に座って美味しそうにコーヒーを飲む定平が目に入った。近づくと定平も気がついたようで陸疾に顔を向けた。
「やぁ、君ももう起きたのか。ゆっくり眠れたかな。」
「まあまあっすね。コーヒーですか?」
「あぁ、習慣でね。朝起きたらすぐにコーヒーを飲まないと落ち着かないんだよ。君も飲まないかい?」
「いや、いいっす。コーヒーは苦手なんで。」
「そうかい。それじゃあ君は準備を整えると良い。私もコーヒーを飲み終わったらすぐに出られる
ようにしよう。」
そう言われて陸疾は準備を整えることにした。とは言えそう時間はかからない。自分の家では無く帰ることもしなかったため着替えることは出来ず、出来ることはせいぜい顔を洗ったり口をゆすぐ程度である。やがて準備を終えて定平のところへ戻ると定平も丁度準備が終わったようですぐに医務室を出発し景計の部屋に向かうことになった。
部屋に入ると景計は何やら書類のようなものを整理していた。陸疾たちにはゆっくり休むよう言っていたのにどうやら景計は休まず何やら整理をしていたようだ。何をしているのか気になった陸疾がのぞき込もうとするとようやく陸疾たちに気づいて景計は書類から顔を上げた。
「お、来たね。透にはもうある程度の連絡はしてあるからこれからすぐに向かうと良いよ。それから相谷くんにはこれを渡しておこう。透に会ったらそれを渡してくれ。透は多分朝の日課の筋トレをしてるはずだからいつもの場所に向かうと良い。」
「いつものって言うと、…あの場所ですね。了解っす。…朝の日課の筋トレっすか?いつもの日課の筋トレじゃなくてですか?」
「はは、確かに透はいつも筋トレをしてるね。あいつに朝何してるって聞いたらいつもそれが返ってくるんだよ。気になるなら本人に聞くといいさ。」
「そこまで気になるわけじゃないっす。それじゃあ透さんのところに向かいますね。」
そう言って陸疾たちは景計の部屋を出た。渡された書類のようなものの中身が気になるところだがそれは透に渡してから透に聞くことにした。定平を案内した場所はもちろんあの技能を解放した何も無いただ広いだけの空間である。その場所に辿り着いて透の姿を探すとすぐに見つかった。どうやら筋トレをしていた訳ではなく研悟と何やら喋っていたようだ。陸疾が呼びかけると透がゆっくりと顔を上げ研悟が腰につけた日本刀を抜刀した。
「おう、陸疾か。そこのスーツを着ているのはカズの言ってたディメンションズの人だな。名前までは聞いて無いんだが何て言うんだ?」
「椎橋定平と言います。ええと研悟私別に君に何もしてないよね?」
「どうもディメンションズと合併するって言うのがあんまり信じられなくてな。まだ他の人が来るなら何も思わなかったがあんたなら話は変わる。いきなり俺らに攻撃を仕掛けて逃走することも考えられる。」
人間には休息が必要です。休息を取らずに活動するには限度があります。景計もどこかで休息を取ってもらわないといけませんね。
研悟…、気持ちは分からないでもないが…。仕舞って下さいね。




