第82話 組織の合併
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「分かった分かった。1から説明するから一旦大人しくしてくれ。…どこから話せば良いかな。ええと、そもそもディメンションズのリーダーとそっちのリーダーの関係性は知ってるかい?」
「…確か兄弟なんですよね?」
「なんだそれは知ってるのか。そしてうちのリーダーの技能は『予知』なんだがそれによってパラドクスがここ数日のうちに来ることを予知した。それを受けうちのリーダーは君らのリーダーに協力を要請、そっちのリーダーから組織の合併が提案されうちのリーダーがそれを受諾。まだ一部のメンバーにしか伝わってないだろうけどディメンションズはパラドクスの侵略を防ぐ名目のもとガーディアンズと協力関係を結ぶ事になったのさ。」
「…それも何となく知ってます。」
「え?それも知ってるのか⁈それじゃあ早く案内してよ、グズグズしてる時間はないんだ。」
「…俺が聞いたのは、組織の合併が実現するかもしれないってことだけです。実際どうなのかは全然知らない。だから敵対関係にあるディメンションズの言う事を鵜呑みにするのはどうなのかって思って…。」
陸疾は感じていることを定平にぶつけた。結局陸疾は流れを見て判断すれば恐らく定平の言うことが真実であると判断はしているが頭の片隅で間違いかもしれないという思いが拭えないと言う訳である。
「なるほど…、それじゃあ君に案内ってのは無理だな。となると誰に頼もうか。…他のガーディアンズの連中だと…、研悟になるかな。だが連絡が面倒だな。それならこうしようか。相谷陸疾、君に基地までは案内してもらおう。その後君から研悟にその役目をバトンタッチしてもらって研悟に君らのリーダーのところまで案内してもらうことにするよ。」
「…あんまり変わってない気がするけど。…あぁもう!良いや。基地まで案内しますよ。すれば良いんでしょう?」
「お!案内してくれるのか。ありがたいありがたい。それじゃあ満島古書店だっけ?早く行こうか!」
「…そこまで分かってるのに案内は必要なんです?」
どうやら定平はガーディアンズ基地の入り口の1つに満島古書店があることまで把握しているようだ。やや意地になって案内を拒もうとしていたが別に案内自体はさほど必要が無さそうであった。むしろ定平は陸疾が近くにいることによる無闇ないさかいの抑止の方を陸疾に頼んでいるのだなと陸疾は感じていた。
「ちょっと待て、あそこに伸びている…ええと、佐久間って奴はどうするんです?」
「ん?拳司の事かい?彼はうちの職員が回収するから放っておいて構わないさ。さ、早く基地へ行こうか。」
定平に急かされて陸疾は基地へと案内したのである。途中満島古書店の本棚裏のスイッチを操作した際、なるほどそこにスイッチがと定平が呟いた時、陸疾はやっぱり騙されているんじゃないかと思ったのである。だがそこまで案内してしまった以上陸疾は最後まで案内する事にしたのだ。定平の希望通り景計の部屋の前まで定平を案内したのだ。幸い定平を見て騒ぎ立てる人はいなかったのでスムーズに案内することが出来たのだ。
「…はじめまして、私ディメンションズの椎橋定平と申します。」
「こちらこそはじめまして、ガーディアンズリーダーの藍原景計だ。さて用件を聞こう。」
「何点かありまして、まず1つ目に英永より組織合併を受諾した事を伝えに来ました。英永が言うには直接言った方が良いとのことでしたので。」
定平はそこまで淀みなく言い切った。恐らく景計に会えばこのように言うよう指示があったようである。そしてその言葉を聞いて景計は安堵の笑みを浮かべた。その表情を見て陸疾もまた安堵したのである。
「そうか受諾か!相谷くんも案内ありがとう。」
「良かったですよ。実は合併は全くの嘘で今からガーディアンズが乗っ取られるのかとちょっと心配してました。」
「そんなことは絶対無いから安心してくれ。…ところで相谷くんもええと、椎橋くん?も服装がボロボロなんだが決闘でもしたのかい?」
景計はやや心配そうにそう尋ねた。確かに2人ともやや服装が乱れている。ある程度は綺麗にしてあるが何かしらがあったことは誤魔化しきれない。そもそも誤魔化す必要も無いのだが。
「決闘はしてませんがそれが次の用件になります。」
「ほう…?詳しく聞こうか。」
「英永より伝達の命を受けそちらの基地へ向かう途中でパラドクスの構成員と接触がありました。消耗こそしましたが拘束に成功しております。現在マイケル・ダットソンと名乗るその男を無力化した上でディメンションズが拘束しております。」
定平の言葉に景計は目を丸くした。当然の反応である。英永からの『予知』を聞いていたとは言えこんなにも早くにパラドクスが来るとは思ってないだろう。
「…そのマイケル・ダットソンとやらは単独だったか?」
その問いかけには陸疾が口を開いた。なにしろ陸疾はパラドクスがこの世界へやって来た時最も間近にいたからである。そのことを思い出しながら陸疾は説明をはじめた。
「単独で試験的に来たみたいでした。手元の何か機械を操作して2日のズレと大きな声で言っていたんで多分2日後に…。」
「本格的な侵略が始まると言う訳だな。…分かったこれより対策を講じるとしよう。…もう用件は全て終わったかな?」
「いえ、まだです。パラドクス侵略が遠くない現実であるとの判断からガーディアンズ、ディメンションズそれぞれの技能についての研究成果を共有して対抗するための対策を講じるべきだとうちのリーダーは考えています。賛同さえ得られればすぐにでも共有を始めたいかと思います。」
定平がなぜ英永から伝達の命を受けたかは定平が一番技能に詳しいからという側面があります。しかし組織の合併が可能ならどうして敵対関係なんかになったんでしょうね。最初から同じ組織なら研究も楽だと思うのですが…。




