第77話 急襲
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「凛夏!こうなったら休憩なんて言ってられないや。もう一度模擬戦で技能解放のための検証を始めよう!」
「…無理、私はパス。正直精神的な疲れが半端ない。悪いけど他当たってよ。」
研悟に負けじと技能解放するために更なる検証をと意気込んだ陸疾であったが先程の模擬戦で凛夏はかなり疲れたらしくすげなく断られてしまった。陸疾の知り合いで模擬戦の相手を気軽に頼めるような人物はもうほかにはおらず結果陸疾はそれ以降1人で検証をする事になった。技能を解放したあの広くて何もない場所に行けばもしかすると透がいるのではと向かってみたが透の姿は見つからなかった。仕方なく1人で検証を進めようとしたがやはり1人では限界があり何の成果も無くただ時間だけが過ぎていった。
特に成果も得られなかった陸疾は時間も時間なので寮へと帰る事にしたのだ。夕食を適当に買ってきたもので済ませた陸疾は技能解放にまで至れなかった事を切り替えるためか久しぶりにゲーム機に手を伸ばした。だが頭は簡単に切り替えることが出来ないようで楽しいはずのゲームをしてる時でも技能のことが頭から離れなかった。
結局気分転換にならなかったゲームをするのを止めた陸疾はアイスでも食べて明日早く起きるために早々に寝る事にした。しかしあいにく冷凍庫の中には何のアイスも入っていなかったのだ。やや不本意だが仕方ないと近くのコンビニを目指して夜道を歩くのであった。
「…そう言えば、最初に技能のカギを手に入れたのも凛夏が技能のカギを手に入れたのもこのコンビニだったな。…ただの偶然なのかねぇ。」
陸疾はコンビニに向かいながらそこで起きた事を思い出していた。単なる偶然でしか無いのだがこのコンビニでは色々な事があったと不思議な縁を感じていた。そんな事を考えていたからか同じコンビニに向かうバイクが近づいて来ているのに反応が遅れた。別に当たる事は無いのだが気付くのが遅れたためやや大袈裟なリアクションをしてしまった。だからだろうか陸疾はそのバイクの運転手とヘルメット越しに目が合った。何故だか陸疾はその人物に見覚えがあった。ヘルメットを脱いだその人物の顔を見てそれは確信に変わった。
「…ん?お前は確かガーディアンズの…。」
「…名前は確か佐久間、拳司でしたっけ?」
「お、名前覚えてるんだ。…ふ、マメだな俺なんて敵対した奴の名前なんて覚えてねぇよ。」
「…どうしてこんな場所に?」
「こんな場所って酒とタバコが切れそうだから買いに来ただけだ。お前に用なんてねぇよ。お前もそうだろうが今の俺には特に指令なんて無い。だから見なかった事にしてやるよ。」
拳司のその申し出に陸疾は拍子抜けした。ディメンションズはいつもガーディアンズと敵対していると思っていたからである。しかし実際はそうでもないらしい。確かに今の陸疾は何か指令があって動いている訳ではない。そう言われれば用も無いのに敵対していがみ合うのは無意味な事のように思えて来た。
「そう言うお前は何しに来たんだよ。お前は酒もタバコも違うだろ?」
「俺は…、アイスを買いに…。」
「ふは、なるほどな。そりゃここに来たっておかしくはねぇな。…どうだ?その買いに来たアイス奢ってやろうか?」
「な⁉︎いらん、自分で買う!」
拳司は陸疾を見て面白がってにやけながらそう言った。突然の意外な申し出に困惑したが陸疾は断固お断りである。そんなに特別な義理など無いだろうに一体目の前のこの人物は何を言い出しているのか。そう思いながら目の前に映る拳司はディメンションズに所属していることを除けばただの知り合いなのであり、目の前の拳司の姿を見ると景計の言う組織の合併も不可能では無いのか?と少し陸疾は思ったのであった。
「そんなに食い気味に断らなくてもいいじゃねぇか。ま、たまたま昼にパチンコで大勝ちしたからこんな事言うんだけどな。今の俺は気分が良いからお前のその物言いを許してやるよ。まったく、…こんな事俺が言うの珍しい…」
軽口を叩いている拳司の右横から突然ブラックホールのようなものが現れた。慌ててそれから2人とも距離を取るとその中から人が現れたのである。人と言っても見慣れぬ衣服に身を包んだ人である。少なくとも近所でこのような出立ちの人を見かけた覚えは全く無い。その人物は何やら手にした機械のようなものを熱心に眺めているようだ。
「さて、ゲートの具合はどうだろねっと。ま、上々かね。」
技能解放には結局至れませんでした。まあ次の日に頑張ればいいそんな考えも無しでは無いでしょう。しかしすでに世界は急速に回り始めているのです。




