第73話 どこまでも本当の話
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「そう、かなりやばい。だから私はこれを機にガーディアンズとディメンションズの合併を図りたいと考えているんだよ。これについて相谷くんはどう思う?」
再びとんでもないことを言い始めたのだ。どうやら景計はガーディアンズとディメンションズを一枚岩の組織にしようとしているようだ。口で言うのは簡単だが敵対すべきではないとは言え敵対していた勢力同士の合併である。下手すると合併が成功するどころかガーディアンズが空中分解してしまう可能性もある話である。当然ながら陸疾には景計のその問いかけに答えられる事は出来なかった。
「…合併するんすか?…どう思うって言われても今俺の頭は混乱中でしてね…。えっと、そもそも何ですけど、合併って可能なんですか?」
「組織としてどうなるかはわたしにはさっぱり予想もつかないが型式上合併する事は可能だよ。だって実の兄弟だからね。」
「俺は、…ディメンションズをなんとも思って無いんで良いっすけど。他の人がどうかは正直分かりません。」
「それじゃあ相谷くん自体はオッケーって訳ね。ありがとう参考にするよ。」
「…本当なんすか?その話。」
「…あぁ、どこまでも本当の話だよ。」
景計は真剣な表情でそう呟いた。実現するかは分からないが少なくとも景計は本気でそう言っている。そう陸疾は感じ取っていた。
適当に昼食を済ませ再び陸疾はバトルホールを訪れていた。もちろん技能の検証をするためであり先程は断られたが真っ先に研悟の姿を探していた。そんな陸疾に背後から声をかけてくる人物がいた。
「陸疾!模擬戦しようぜ。」
「凛夏か、模擬戦なら全然やるんだが…。その前に色々試したいことがあってな。勝負の模擬戦なら悪いがちょっと待ってくれねぇか?」
「何言ってんのさ。あんたが模擬戦相手に困ってるって研悟さんが言うからわざわざ来てやったんじゃないの。ほら技能の検証するんでしょう?」
どうやら研悟が先んじて頼んでくれていたようである。模擬戦相手を断ったとは言え代わりの相手を探してくれるのはかなりありがたい事である。当然陸疾は凛夏の申し出を断る事は無かった。第4ブースへ入った陸疾は手早く準備するとすぐに設定マップに転送された。
平原Bへと転送された陸疾はまず凛夏の姿を探した。そう言えばこのマップは初めてだしどこで検証するのか言ってなかったと思いながら周りを見渡せそうな広い場所を探して陸疾は歩いていた。その時空を向けて放たれたらしき銃声が聞こえてきた。なるほど、その方法なら場所がすぐ分かるな。そう考えながら銃声が聞こえた場所へと駆けて行った。
「案外来るのが遅いんじゃない?どこ歩いてたのさ。」
「どこで合流するか行ってないなぁ、って思いながらその辺を呑気に歩いてたよ。」
「ふぅん、まあ良いけどね別に。…あ、そう言えば研悟さんから聞いたんだけど陸疾2つ目も技能解放出来たって本当?」
「あぁ、それは本当だな。」
陸疾のその返しにやや凛夏はテンションが上がっているようだ。声のトーンが一段階上がったようだ。
「なんかさ!研悟さん曰くカッコいいらしいじゃんか。聞いたら間近で見たいなって思ってたのよ!見せて見せて!」
一体何を研悟は凛夏に吹き込んだのか凛夏の中では陸疾の技能解放がかなりカッコいいものになっているらしい。が、研悟が言っていることがただのでまかせである事は陸疾には分かっていた。《逆襲ノ舞》はカウンター技であるが故に食らった人には何がなんだが分からないはずである。辛うじてカウンターされた事が分かるくらいだ。研悟以外に食らわせた事は無いし、発動させた状態を客観的に見た覚えは無いはずである。
食らっただけでなく、客観的にも見たことのある研悟の《居合ノ匠》の方が何倍もカッコよく見えるんじゃねぇの?と内心思いながら目の前でテンションが上がっている凛夏にどう設定しようか考えを巡らせていた。
「…凛夏。研悟さんに何て言われたん?」
「えっとね、俺の技能解放なんか目じゃ無いくらい派手な攻撃を陸疾は習得したらしい。俺は間近で食らった事があるがあれは体験しておくべきだとおもったね。…って言ってた。」
完全に研悟が面白がって言っているという事がこれで明白になった。間近で食らった事がある以外は全部デタラメと言って良いだろう。体験しておくべきとは良く言ったものだ、その後の模擬戦開始時の研悟は不機嫌だったと陸疾は思い起こしていた。
「凛夏、それは研悟さんの真っ赤な嘘だ。」
「へ?嘘なの?」
ガーディアンズとディメンションズの合併ですか…。果たしてそれは実現するんでしょうかね。凛夏は研悟に真っ赤な嘘を吹き込まれたようですね。あいにくそこまで派手な技じゃないんですよ。




