第70話 白金のカギ
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「…それじゃあ行きますよ?」
一応殴るタイミングを伺いつつも陸疾は透に技能のカギを握りしめた右拳で殴った。アナウンスがあった故であることは理解出来るのだが殴った後大変満足そうな表情なのは反応に困る陸疾であった。
「…ほう、確かにアナウンスがあったぞ。これで解放すれば3つ目の技能が手に入るって事だな。…ふふ、何の技能が解放されるかな?」
「その様子だと透も技能スペースを解放したみたいだな。」
背後から声がしたため振り向くと何個かの箱を手にした景計と研悟の姿があった。2人が手に持っている箱には見覚えがある。確か技能のカギを入れて保管していた箱である。
「カズじゃないか。忙しそうにしてたからトレーニングをしにここに来たら陸疾が面白そうな事をしていてな。混ぜてもらったんだよ。」
「まあ、透はどっちにしろ解放させるだろうから問題無いんだけど。…相谷くん、その情報はなるべく他の人には広めないでくれるか?」
透なら問題無いだろうとの判断のもと独断で話した陸疾であったがどうやら他の人にあまり言ってはいけないらしい。そもそも2つ目を解放している人が少ないからか?と陸疾が考えているとどうやら全く見当違いだったようだ。
「情報を広めることに問題は無いんだけどね。相谷くんは知ってると思うけど、技能が解放された時使ったカギは統合される。つまりは手元の技能のカギが減るんだ。現在一応全員2つ目までなら解放出来るくらいの個数はあるんだけど、3つ目ともなると話が変わる。技能のカギの個数に限りがある以上は無駄に期待させたくない。だからその情報を広めるのは控えてほしいんだよ。」
「なるほど…。ガーディアンズで保管している技能のカギはそれで全部ですか?」
「いや、もうちょっとあるにはあるんだが。中身がダミーの可能性があるからなんとも言えないね。」
「ダミーなんてまどろっこしいことをするからだ。肝心の個数が不透明でどうする。警戒しちゃいるがここにディメンションズの奴らも他の盗賊とかも来とらんだろう?」
「そう言いますけど透さん。以前椎橋定平が陸疾たちに発信機を仕掛けようとした例があります。気付かぬうちに情報が筒抜けになってる可能性は充分ありますので警戒も意味があるかと。」
「そうだと良いがね。…そんで技能のカギを使って解放すりゃあ良いんだがよ、その方法に目処はついてるのか?」
「それに関しては心配無い。2つ目の時と同じ2個使いで解放出来ることが研悟によって確認済みだ。」
「へぇ、研悟さんもう解放させたんすか。…何だったんです?」
「解放された3つ目の技能は『切断』だ。まだ何も検証してねぇから効果のほどは不明だ。」
そう言いながら研悟は頭を掻いていた。どうもここのところ検証続きで戦闘をあまりやっておらずようやく検証に目処がついたとなった瞬間に再び検証すべきものが増えたことを少しストレスに感じているようだ。その気持ちは陸疾にも理解できるものであった。
「方法が分かってるんならやって良いってことだよな。カズ技能のカギを俺と陸疾に渡してくれ。」
「ちょっと待ってな、今開けてるから。…あ、これは空か。…お、ラッキーここに2個入りだ。プラマイゼロってとこだな。ほら2人とも投げるよ。」
景計から2つの技能のカギがそれぞれに投げられた。景計の手元から2人の手に渡るまで色が二色から一色になりそして二色へと戻った。一色の技能のカギを見るのは久しぶりだなと思いながら陸疾はそれをうまくキャッチすると自分の技能のカギを取り出して二つ目の技能を解放させたのと同じ要領で3つ目を解放させた。
《技能のカギの使用を承認しました。これより技能を解放します。…解放が完了しました。相谷陸疾の技能は『』です。―複数の技能のカギを確認しました。これより統合を開始します。…統合が完了しました。》
「どうやら上手くいったみたいだね。研悟同様技能のカギの輝きが一色になっているからね。」
景計のその呟きを聞いて陸疾は自分の統合された技能のカギに目を落とした。なるほど、確かに持ち手が金にカギの部分が銀に輝いていたその技能のカギの輝きは一色へと変わっていた。その色は金ではなく銀とも言いがたい。1番適切な表現は白金と言ったところか。
「さて、2人に聞こうか、まず透。解放された技能は何だった?」
さて、解放された技能は何だったのでしょうか?次回をお楽しみに。




