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第69話 景計は忙しい

読んでくださりありがとうございます。

「なるほどねぇ…。まあ厄介極まりないわな。対するこっちは2つ目でさえ技能解放させるのがやっとだ。実戦レベルには程遠い。それにカギを見せられて2つ目の存在に気づいたって事はつまりあいつは戦闘で1つの技能だけで陸疾を圧倒したって事だ。」


言われてみればその通りである。陸疾は確かにディメンションズに情報が流れるのを嫌って『跳躍』だけでの戦闘を行ったとは言え相手もまた『狡猾』だけで陸疾を圧倒したのである。定平は陸疾にとって技能についての理解も熟練も遥かに格上だと言わざるを得ない。


「陸疾がそこまで圧倒されるとなると…、俺でも勝てるかどうかって話だな。とにかく技能についてもっと知らなきゃディメンションズに打ち勝つことは到底出来ないって事だ。俺らはその知識が実を結ぶまで努力を惜しんじゃならないってことだな。とりあえず俺は今から3つ目の技能について隊長に報告して来る。陸疾は3つ目の技能を解放させる方法を検証し始めてくれ。…そうだな、1番最初に技能を解放させたあの広い場所覚えてるか?」


「…それは覚えてますけど、ここがどこか分かって無いです。」


「んあ?…あ、言ってなかったか。ここは喫煙所のすぐ横だよ。もっと分かりやすく言えば出てすぐがバトルホールだ。そこの出入り口から出ると良い。俺は向こうから行った方が隊長の部屋に近いからそっちから行くわ。それじゃあよろしく頼むぞ。」


「わかりました。」


言われた通りに陸疾は出入り口を出た。なるほどこの場所が医務室となっていたのかと陸疾は目の前に広がっている見慣れたバトルホールの一角を見ながら感心したように呟いた。そこまで場所が分かれば目的地に行くのは最早簡単である。すぐに到着し検証を始めることにしたのだ。


とは言え技能のカギ1つでは出来ることは限られている。2つ目の技能の解放に2つ技能のカギが必要だった事を踏まえると3つ以上の技能のカギがもしくは2つ解放してある技能のカギが必要だと考えられよう。既に頭に浮かぶアイデアが枯渇した陸疾はただぼうっとその場に座るしか無かった。


「おい陸疾!ぼうっと座ってるんならその場所代わってくんねぇか?」


「…あ、すいません。筋トレっすか?透さん。」


「あぁ、なんかカズが忙しいみてぇでな。それが片付くまでは筋トレでもしてようかと思ってよ。」


「へぇ、隊長今忙しいんすか。さっき研悟さんが隊長のところに行くって言うんで俺はここで研悟さんが来るのを待ってたんすよ。」


「あぁ、確かに研悟もいたな。カズが大分慌てた顔をしてたからな。研悟が持ってきた情報が相当やべえ奴だったのかな?陸疾お前何か知ってるか?」


透の言う相当やべえ奴が本当に研悟からもたらされた情報であるなら陸疾は知っているがそれを果たして何の気なしに透に言っていいのか少し陸疾は不安に思った。とは言え隠すようなことでも無いと判断しかいつまんで透にも説明する事にした。透は陸疾の話を聞いて渋い表情である。


「椎橋定平っつうとあいつか。何考えてるのかさっぱり掴めねぇ奴だが今回も全く分からんな。それに技能を2つにするだけでも抵抗がある奴もいるのに3つとなるとうちではかなり人が少なくなるだろうな。ところで3つ目の技能スペースの解放方法は分かってるんだよな。俺はもちろん解放させる気満々だからよ、俺にもそれやってくれよ。」


透は見るからに上機嫌である。多分思い切り殴ったとしても最終的に怒りはしないだろうがこの上機嫌の透を殴るのは陸疾には中々、いやかなりハードルが高い。


「…あのぉ、言いにくいんすけど…。」


「ん?何か問題でもあるのか?方法知ってるんだろ?」


「その方法ってのが、…あんまり分かってなくって他に方法があるかもしれないんすけど…。…技能のカギを握りしめて解放させたい人を、…その…殴ると出来るんすよね。」


「なんだそんくらいか。むしろどんと来い。殴った威力で解放される技能が変わるかもしれないからな。どうせなら思い切り来い!お前の本気の拳俺が受けてやろう。」


透は怒るどころかテンションがさらに上がっているようだ。怒られなくて良かったと一旦胸を撫で下ろした陸疾であったが、同時に変なスイッチを押してしまったとやや後悔したのであった。


透は頭を使っていない場面もありますが基本的に頭が回る方です。そして判断力はピカイチですのでこうした時の相談には向いています。ちなみに変なスイッチは押されてません。彼はどうせやるなら本気でのスタイルを貫いているだけです。

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