第68話 定平は何を狙う…?
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「………!っ痛ぇ…。ここは…どこだ?」
ベッドが何個か並ぶ部屋で陸疾は目を覚ました。周囲の雰囲気は基地に似ているがこのような部屋は見覚えが無い。
「お、起きたか。職員が道のど真ん中でぶっ倒れてるお前を見つけてな。…気分は大丈夫か?」
声のした方へ振り向くとベッドに腰掛けて座る研悟の姿があった。研悟がいる事で安心した陸疾であったが、ディメンションズには『模倣』を駆使する樫原毅彦の存在からまだ全く油断は出来なかった。
「…研悟さん。…気分は大丈夫っすけど。ここはどこなんすか?」
「ここは医務室だよ基地の中のね。ただ模擬戦でここに運ばれる奴はいねぇから実質ここに来たことがある奴は実戦で負けた奴ってことだ。お前が知らんのは無理もない。」
「…」
陸疾は研悟の言葉に少し考え込んだ。それを研悟は実戦で負けた事に対するショックが大きいと判断し普段では考えられない程の優しい声で語りかけてきたのだ。
「ショックはでかいだろうが教えてくれるか?…お前は誰と戦ったんだ?」
「…椎橋、定平です。…研悟さんの先輩の。」
「…改めて俺の先輩って言われると嫌だな。…そうかあいつと戦ったのか。俺はあいつと戦った事は無いんだが、恐らくはかなり厄介な部類に入るとは思っていた。」
「…ディメンションズは2つ目の技能を既に研究しているようです。椎橋定平の技能のカギは二色に輝いていました。そしてそれを見て思わず反応してしまって向こうにこちらも2つ目の段階に行き着いている事を気付かれてしまいました。」
「…なるほど、まあそりゃそうだわな。俺らが研究や検証して行き着いた事に行き着けないとは判断出来ない。むしろ奴らの方が技能について詳しいかもしれないからな。そしてそれがバレるのは時間の問題だ。遅かれ早かれいつかはバレる。別にそれは陸疾の責任じゃねぇから気にすんな。」
研悟の言葉は陸疾に優しく響いていた。陸疾は定平との戦闘で得たものを全て伝えてしまおうと考えた。ひとりで抱えるべきもので無い事は理解しているがそれを誰に伝えるのかが分からなかったのだ。研悟ならそれを言ってしまっても問題無さそうだと陸疾は考えていた。
「…実際そうなのかもしれないっす。確認する方法が分からないんであれですけど…。」
「ん?何を確認するんだ?」
「…ディメンションズは既に3つ目の技能についての研究を始めているようです。なぜだかさっぱり分かりませんけど俺の技能スペースを解放して椎橋定平は去っていきました。」
「…ん?ちょっと待て。…技能スペースがまた解放されたのか?…しかもあいつによって?」
さすがの研悟も動揺しているようだ。先程の優しげな口調がどこかへ飛んでいってしまっている。瞬きの数も格段に増え動揺の様子が目で簡単に読み取れる程であった。その様子が酷く陸疾には可笑しなものに映った。
「…ふふ、そうです。あいつはなぜか解放してから去っていったようです。現に俺はなんともない無事そのものですし。」
「あいつに何をされたか何か覚えてないか!2つ目の技能スペースの解放だけでもびっくりするのに3つ目だと?思い出せるものなら何でもいい。何か、…何か思い出せないか?」
研悟は必死の形相である。その様子がさらに可笑しなものに映り陸疾は吹き出してしまうのを堪えるので必死であった。
「…これがそうかは知りませんけど、…やってみますよ?」
「お!何か覚えているんだな!どんと来い‼︎」
陸疾はどんと来いと言われたのでそれほど力を入れようとは思っていなかったが少し力をこめる事にした。技能スペースこそ解放されたもののまだ技能自体は解放されていない故に二色に輝いている技能のカギを右拳に握りしめて研悟を殴りつけた。殴った後の研悟の顔は困惑と戸惑いに満ちた表情からやがて納得の表情へと変わっていった。
「…なるほど、技能のカギを握った拳で相手を殴れば解放されるってことか。…でもよぉ、そこまで威力を強くしなくて良かったんじゃねぇのか?中々痛かったぞ?」
「どんと来いって言われたので遠慮なくいかせて貰ったっす。それにある程度力をこめないと意味が無い可能性もあると思って…。」
「…まあそりゃ一理ある。そしてこの行動は知ってなきゃ出来ん。わざわざ技能のカギを握りしめた拳で人を殴ろうなんて誰がやる?って事はディメンションズ側はこれも知っているってことだ。…なんでそれを陸疾にしたかは一切分からないけどな。」
「問題はまさにそこっす。技能のカギを見た俺の反応からガーディアンズが2つ目の技能の事まで知っている事に気づいた定平がわざとこれをしてきました。目的はさっぱりですが確実に言えるのはディメンションズは既に2つ目の技能の研究を粗方終え3つ目の技能の研究を実戦レベルまで既に達しさせているって事です。」
前回の最後に陸疾の技能スペースが定平によって解放されましたが狙いが不透明ですね。ですが確実に言えるのはディメンションズの方が技能の研究が進んでいるという事です。すぐにでも追い付かなければいけませんね。




