第65話 発動条件はやや特殊
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「あ、それなんすけど。…技能解放出来たっぽいっす。」
「…まじ?…って事はカウンター系ってこと?」
先程とはうってかわって研悟の声のトーンが上がった。表情も少し和らいだように陸疾には思われた。
「多分そうかと。《逆襲ノ舞》ってアナウンスでは言ってました。」
「そうかカウンター系だったか。…それじゃあ俺が斬ってたらずっと技能解放出来ねぇな。良かったじゃねぇか。…ん?でも発動条件が曖昧っちゃ曖昧だな。相手の攻撃へのカウンターで全部技能解放出来るのか?」
研悟はふと気づいたかのようにそう言った。これに関しては陸疾もあまり分かっていない。
「それが良く分からないんすよ。あの時はカウンターをやる事しか頭に無かったんでとにかく研悟さんの剣筋を避ける事で精一杯で、自分がどう行動したかあんまり覚えてないんすよ。」
「そりゃそうだ。そもそも《居合ノ匠》を跳んで避けられたのは初めてだからな。精一杯だったのは頷ける。とりあえず普通の攻撃で発動するか検証するか。」
そう言うと研悟は陸疾を日本刀で斬りつけ始めた。速度を普段よりやや落としているのは先程の事を気にしているのだろうかと陸疾は思ったが逆に回避しづらいとはとても言えなかった。
「うーん、ダメですね。発動条件から外れてるっぽいっす。」
「それじゃあ空中に避けてみろ。今から足元を薙ぎ払うからよ。」
「!いきますよ!―技能解放―《逆襲ノ舞》」
どうやら空中への回避が成功する事が発動条件らしい。条件を満たしたため陸疾は空中にいながらにして研悟へ《逆襲ノ舞》を放った。至近距離での発動のためさすがの研悟も宣言されているとは言えカウンターを回避は出来なかった。
「…?なんかそこまで威力は無かったな。少なくとも戦闘不能にはならねぇ。」
先程と同じ威力が飛んでくる事を予想していた研悟はそこまで威力が高くないことに虚をつかれた顔である。しかし放った本人である陸疾もそこまで威力が出ていない事に首を傾げていた。
「さっきは1発で戦闘不能レベルのダメージでしたからね。一応同じように放ったんすけど。…何が違うんすかね。」
「1つ考えられるのは、相手のどの攻撃を避けたかが違うな。さっきの薙ぎ払いにそこまで俺は力を入れてねぇ。多分だが回避した相手の攻撃分のダメージを追加する系じゃないか?カウンターなんだし。」
「なるほど、それなら納得出来そうですね。そして発動条件は空中に回避すること…ですかね。」
「多分そうだな。もしかすると他の条件があるかもしれねぇがひとまずはそれで十分だろう。…しかしカウンター系だから陸疾の《空歩ノ理》と関連が無さそうなのがちょっと違和感があったがまさかの空中ってのが関わってくるとはな。」
研悟の言う事は正しい。《逆襲ノ舞》は一見《空歩ノ理》に何の関連も持たないカウンター技のように思われるが発動条件を満たすために空中に回避するためそこからコンボが可能なのである。《空歩ノ理》の効果で《逆襲ノ舞》の発動条件を満たしても良いし、《逆襲ノ舞》を発動させた後に追撃として《空歩ノ理》を発動させても良いのだ。すなわちこれにより陸疾の戦闘の幅がかなり広がったと言えよう。
「さて、大体技能解放についての検証は終わったで良いかな。」
「そうっすね。後は戦闘しながら細かいところをすり合わせるだけで良いと思います。」
「よし、それなら今から本気の模擬戦を始めようか。…今3戦目で両者1勝ずつだから楽しい勝負になるんじゃねぇの?どうだ?やるか?」
研悟の表情はテンションが高まっていることを如実に表していた。少なくとも3戦目が始まってから1番テンションが高いことを陸疾は自信をもって断言出来る。そして陸疾もまたテンションが高まっていたのである。
「そうっすね、やりましょう。もう一度完璧にカウンターを決めてやりますよ。」
「ほぅ、そりゃ面白そうだ。それじゃあ本気の模擬戦を始めようか!」
そこから陸疾と研悟の凄まじい激戦が始まった。当然研悟の方が技能に対して理解度が高いため優位に戦局を展開出来るのだが対する陸疾も強力なカウンター技を習得しているためやや決め手に欠いているようだ。とは言え勝敗がいつまでもつかないことはあり得ないのだ。やがて本気の模擬戦を終え2人は第5ブースから出てきた。全力で戦ったからだろうか出てきた2人の顔は晴れやかなものであった。
《逆襲ノ舞》の発動条件が明らかになりました。空中に回避することはリスクではありますが《空歩ノ理》がそれを補っている感じですね。カウンター技はもちろん相手にその存在を知られないことで強みとなりますが知られてから相手への抑止力にもなるのが強みです。これは陸疾にとって大きな強化となるに違いありません。さて2人は検証が終わったということで真剣勝負を始めるようです。…なんか凄い楽しそうですね。




