第63話 投げやりな模擬戦
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踏み込んで放たれた研悟の技能解放によって陸疾は一瞬で戦闘不能となった。勝ち負けはさほど重要じゃない故にそれほどしっかり斬らずとも問題は無いのだが、《納刀術・乱撃》の発動条件の検証なら一応納得は出来た。ただ単に研悟がそれをしたかっただけなのかもしれないが。
何もあそこまでしっかり踏み込んで斬らなくても良いじゃないか次やられる時は勝手にカウンターでも仕掛けようかしらと毒づきながら陸疾は言われた通りに投槍用の軽めの槍を探し始めた。探しだしてすぐに比較的軽めの木でできた槍を見つけたが1本しか見つからなかったため引き続き槍を探した。ありそうな所を探したが一向に見つからなかったため職員の方へ陸疾は振り返った。
「あの、すいません。これより軽い槍って何本かあります?」
「これより軽いものですか?でしたらあそこに見える弓矢の矢筒に何本かあるはずです。装備に登録されますか?」
「あ、お願いします。」
さすがに職員は備えられている装備品の場所を全て把握しているようだ。こんな事ならさっさと聞けば良かったと思いながら陸疾は模擬戦を始めるための準備を始めた。準備が整ってすぐ開始を告げるアナウンスが聞こえたことから研悟は既に準備を整えて待っていた事が予想された。もっとも研悟は何も装備を変える必要が無いので準備が早いのは当たり前のことなのだが。
再び平原Aへと転送された陸疾は先程同様一番広い場所を目指した。やや小走りだったため陸疾の方が先にたどり着いたようだ。広い場所へたどり着いた後で辺りを見渡すとあくび混じりにゆっくり歩いてくる研悟が見えた。
「…あぁ、悪い悪い。準備に手間取ったんだろ?多分待つんだろうなって思いながらさっさとヘッドギアを着けちまったもんだから大分待っちゃったぜ。それで槍はあったか?」
「職員の人が見つけてくれました。こんな感じですね。…ん?なんだこれ。」
陸疾は設定されていた軽めの槍を何本か取り出して研悟に見せようとしたところ付随して来た何か木で出来た物体を落としてしまった。拾い上げてまじまじとそれを見つめたが陸疾には何かがさっぱり分からなかった。
「あぁ、アトラトルだな。多分職員が気を利かせたんだろ。」
「アトラトル…?なんですかそれ。」
「投槍器って言やぁ良いのかな。普通に槍って投げるの結構難しいんだよ。山なりになっちゃったりするもんなんだけど、それを使うと投げやすくなるんだな。」
「へぇ、それは良いっすね。使ってみよっと。」
陸疾はアトラトルと言われたそれをじっくりと見つめた。全く見たことないそれは投槍という今まで考えた事も無い攻撃方法の可能性を広げるものであり少し頼もしささえ陸疾は感じたのである。
「さて、早速やってみよう。的はまあ俺でも良いんだが、今回はこれを使ってみようか。簡単に作った俺特製の的だ。よくケイトとの模擬戦では使ったもんよ。これに向かって投げてみな。普通にイメージしている投げ方で多分合ってるから思いっきり投げるんだぞ?」
言われた通り陸疾は槍を構えて投げた。今回はアトラトルは使わずに投げたのだが適性が無いのかあらぬ方向へ槍は飛んでいった。少し顔をしかめた陸疾であったが何事も無かったように今度はアトラトルを使って思い切り投げた。上手くいった感触と共に真っ直ぐ的めがけて槍は飛んでいきやがて突き刺さった。
「うん、やっぱアトラトル使った方が良さそうだな。とりあえずそれは使用していこう。それじゃあ今度は『変則』を絡めていこうか。横投げか下投げで槍投げてみようぜ。何か分かるかもしれねぇ。」
「…どうやれば良いのか分からないんで適当にしますよ?」
力の入れ具合もリリースの仕方も良く分からないままに槍を投げた陸疾であったが思いの外真っ直ぐに飛んでいった。少し狙いとはズレたものの威力は大して先程と変わらないように見えた。
「へぇ、…威力はさっきと変わらないんじゃないの?面白いね。」
「研悟さんもそう思います?割と自然に出来た気がするんですよね。これが『変則』が持つ効果なんですかね?」
「いや、少なくとも自然には出来てなかったぞ?力加減もリリースもめちゃくちゃだよ。でもそれでこの威力だからなぁ…。陸疾、一回跳びながら投げてみな。俺の予想だと威力はそこまで変わらないはずだ。」
投槍という新しい攻撃を試す傍らで『変則』の検証ですね。アトラトルというのは中々考えられた武器です。古代の人って凄いですほんとに。




