第62話 技能解放の発動条件は?
読んでくださりありがとうございます。
「…納刀術?ってことは納刀が発動条件って事ですか?」
「いや、多分違う。納刀するだけで発動するなら以前までに技能解放出来ていたはずだ。今回急に出来るようになったという事は大事なのはその前だ。恐らく何回か連続で斬った後に納刀する事で発動出来るんだろう。…しかし両方とも抜刀攻撃とは思わなかったな。」
技能解放に関連性がある事を知って今回の《納刀術・乱撃》に導けた訳だが透のように既存の技能解放とのコンボは出来なさそうである。しかし何らかの関連性があるのでは無いかという読みは今のところ外れてはいない。従って陸疾の2つ目の技能解放もまた《空歩ノ理》に何らかの関連性があるものである可能性が高い。
「しかし、…2つ目の技能解放が出来るようになりましたね。自分なりに試して全くだめだったんでそもそも出来ないんじゃないかって思ってたんすけど、今のを見たら俺もちょっとやる気が出てきました。」
「そうだな、俺が上手くいったんだ。絶対陸疾も上手くいくさ。俺の技能解放からして何らかの関連性がある可能性がより高まった。逆にどういう関連性があるかから逆算して考えてみるのはどうだろう?」
「逆算…ですか?」
陸疾はイマイチピンときていなかった。自分が成功できたからだろう研悟はややテンションが上がっているようで少し声のトーンが上がっていた。
「つまりだ、透さんの技能解放のコンボみたいにどういう関連性があったら嬉しいかを先に考えてしまおうって訳だ。元来技能解放ってのは自分のやりたいことや願いが形になった例が多い。恐らくだが俺は心のどこかで乱撃と居合で分けたかったんだろう。だから関連性こそ見られるが両方の技能解放とも抜刀攻撃になった。さて、陸疾よ。お前は『変則』に何を望む?」
研悟はやや早口に陸疾にそうまくしたてた。しかし陸疾はそもそも『変則』をよく知らないのだ。何を望むか考えるより先に『変則』が何かを知りたかった。
「何を望むって言われても…、そもそも『変則』が何か分かってないです。だから何にも浮かばないんすよ。」
「『変則』…ねぇ。どんな効果かは分からんが普通じゃ無いのは確実だな。野球だったら横投げとか下投げとかが変則ってよく言われるだろ?だから何かしら一般的なイメージから外れたものだと思うんだけどな。て言うかそれこそ陸疾の戦闘スタイルは一般的じゃねぇよ。だって陸疾のメイン武器は槍だろう?確かに跳んで突撃するのは強力かもしれねぇが普通は地面に足がついて突き刺す武器だと思うぜ。」
「まあそれは『跳躍』あり気での攻撃なんで変わった事をしようとしてた訳じゃないんすけど。…槍って突き刺すだけですかね?」
「勿論突き刺すだけじゃねぇな。投げるとかも主流だと思うぜ。…まあその黒槍梔子は絶対投げるものじゃねぇがな。一回やってみろよ。重くて全然投げれねぇと思うぜ?」
「投げるんですか?…これを?」
陸疾は言われた通り手元の梔子を投げてみる事にしたのである。しかし重みのある梔子を投げようとすると肩が外れてしまいそうな気持ちが勝ってしまい全然力を入れられず1メートル程先に梔子が転がっていった。当然であるが技能解放が出来た事を知らせるアナウンスは聞こえては来なかった。
「うーん、ダメっすね。って言うか全然投げられないものなんすね。」
「まあ予想通り重かったわな。投槍で戦うならもっと軽くて使い捨ての槍だな。」
陸疾は転がった梔子を拾い上げてまじまじと眺めた。確かにこの梔子が投げられたらちょっとカッコいいかもしれないという気持ちと梔子を研悟にもらってから大事にしているために乱雑に扱いたくは無いという相反する気持ちが浮かんできた。
「使い捨ての武器っていうとケイトとか隊長とかだな。ストックが切れたらどうするんだろうな?…ちょっと気になってきたな。模擬戦終わらせて聞きに出るか?」
「いやさすがにもうちょっと他のを試してから出ましょうよ。5回とも残ってるのに終わらせちゃ勿体ないっす。」
「そうだな。でも一応投槍をもう少し試したいから一旦装備を変えてこい。多分軽めの槍が沢山ストックされてるはずだ。」
そう言うといつの間にか日本刀を抜刀していた研悟がそれを振り回しながら近づいて来た。驚いた陸疾が2、3歩下がると研悟は流れるように日本刀を納刀しさらに構えた。
「別に斬る必要は無いようだな。それじゃ槍準備して戻って来い。―技能解放―《納刀術・乱撃》」
『―、戦闘終了。相谷陸疾の戦闘不能により、伊狩研悟に1勝が追加されました。装備を変更されますか?』
完全に練習台にされましたね。《納刀術・乱撃》の発動条件は割と緩めです。数回短いスパンで刀を振った後すぐに納刀するだけです。別に当てる必要は無いので戦闘しながら自然と発動条件を満たせます。後は相手が距離を取らないことを祈るだけです。




