第61話 無駄な検証の成果は…?
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陸疾はまず研悟に普通に突撃を仕掛けようとした。仕掛けながら2人ともある事に気がついたのである。慌てて研悟は陸疾の突撃を回避し陸疾は大きく進んだところで止まったのであった。
「…悪い、そもそもお前の突撃は空中でやるんだな。それじゃ《空歩ノ理》を使った方が威力が上がるのは明白だったわ。跳んだ勢いのまま突撃をかますんだもんな。」
「そうっすね。俺も仕掛け始めた時に気づきました。両方とも空中からの攻撃でしたね。」
「ちょっと頭が回ってなかったなぁ。…そういや陸疾って上にはどれくらい跳べるんだ?」
「…上にっすか?」
ややびっくりした声で陸疾は言った。攻撃するためのものなのだから上にどれだけ行けるかは全く陸疾は試した事が無かった。研悟は自分で頭が回っていなかったと言うがその発言も大概じゃないかと陸疾は素直に思ってしまった。
「別にやっても良いですけど最大限上に跳んだとして着地出来なく無いですか?」
「大丈夫大丈夫。着地に失敗しても模擬戦だから死にやしねぇよ。」
言い出した研悟は気楽なものであった。確かにどれだけ高く跳べるかは興味があるがそれは身の安全が保証されている時に限る。模擬戦故に死ぬ事は確かに無いがだからと言って素直に跳びたくは無いのが正直なところである。だがしかしやはり研悟の表情は真剣そのものであったため陸疾は従わざるを得なかった。
「それじゃやってみますよ。…あれ?」
「ん?どうした?《空歩ノ理》が発動出来て無いぞ?」
「そうなんすよね。…なんでだろ。…もしかして、…あ、なるほど。」
「もしかして発動条件が他に何かあったのか?」
「そうみたいっすね。地面と平行に足場は作れないみたいっす。角度がつくと発動出来るっぽいすね。なんで垂直跳びは適用範囲外みたいっすね。」
「ほぉ、それじゃあ上に跳ぶのは無しだな。うーむ、良い案だと思ったんだけどな。」
「研悟さんも何か試してみましょうよ。『乱撃』でしたよね?」
「あぁ、『乱撃』だ。技能解放はおろか技能の効果すら何か良く分かってないけどな。」
それは陸疾も同じであった。両者とも1つ目の技能が比較的効果がわかりやすいものであったのでそもそも2つ目の技能が何をもたらしているのかあまり分かっていないのだ。
「とりあえずいっぱい切ってみます?その辺の枝とか。」
「そうだな、その辺でいっぱい拾ってきて俺に投げてきてくれ。一回その場で斬るパターンを試してみたい。」
そう言われて陸疾は辺りを見渡して拾えそうなものを色々と拾ってきた。木の枝を折ったり草をむしったりすることは出来なかったが落ちているものを拾うこと自体は出来るらしく陸疾は両手いっぱいに物を拾って研悟のところへ帰ってきた。
「よし、それじゃ始めるか。とりあえず5個くらい一気に投げてきてくれ。」
陸疾は一気に投げろと言われたので小石を5個握りしめて研悟目がけて投げつけた。上手い具合にばらけて研悟へ向かって飛んだ小石は《居合ノ匠》によって2つ斬りつけられ落下したが後の3つは研悟に当たった。
「…無理だな。居合で二太刀目に移行出来ねぇ。」
「無理なんすか。出来そうなのに不思議っすね。」
「正確には出来ないことは無いが振りかぶっちまうから間に合わない。《居合ノ匠》は振り抜くまでが動きのセットになっている。だから二の太刀を浴びせようとすると振りかぶる必要が出てくるんだよ。…《居合ノ匠》のすぐ後で『乱撃』は出来ないのかもな。」
研悟が言うには《居合ノ匠》が最後まで振り抜くまでで成立するものなのでそこに改良は加えられず、素早く二の太刀を浴びせようとするなら《居合ノ匠》を発動させない方が良いという訳である。しかし抜刀攻撃を最大限に活かせるのは《居合ノ匠》であり、『乱撃』のためにそれを捨てる訳にはいかないのだ。
「それじゃ抜刀したままやってみます?」
「分かった、やってみよう。」
再び陸疾は小石を5個握りしめて研悟めがけて投げつけた。タイミングを合わせてやや雑に振り回された剣筋は全ての小石を斬り落としたのであった。全て斬り落とした研悟は流れるように日本刀を鞘に納刀したのである。その瞬間研悟の表情が変わった。
「おい!何でも良い何か投げて来い‼︎」
「えぇ⁈とりあえず投げますよ?」
いきなり言われて焦った陸疾は手近にあったものを掴んで投げた。投げたそれは小石を拾った時に近くに落ちていた木の枝である。適当に投げられたそれは空気の抵抗を受けあまり距離が投げられなかったが研悟は大きく踏み込むと勢いよく抜刀しその枝を思い切り斬りつけた。斬りつけられたその枝は一度2つに分かれた後に木っ端微塵に斬り落とされたのであった。
「…出来たな。これが『乱撃』の技能解放か。」
「出来たんすね。どんな名前なんすか?」
「―技能解放―《納刀術・乱撃》それがこの技能解放の名前らしい。」
技能解放が習得出来たようですね。技能解放はそれに設定された動きをトレースすることで習得が可能になります。つまりトレース出来なければずっと出来ないままになります。そして技能解放が出来るようになるとアナウンスが聞こえその技能解放の名前を教えてくれるようになります。




