第60話 真剣な意味の無いこと
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「へぇ、透さんが。そもそも2つ目の技能を解放させた事も知らなかったよ。」
「それで、透さんが言うには2つ目の技能解放は1つ目と何かしらの関連性が見られるんじゃ無いかと言う話でした。実際体験して来ましたが確かに得られる効果は似てるなと感じましたね。」
「透さんって言うと、あれだな。《大地震撼》か。あれと似てる技能解放ってことだな。…実際似てるって言ったけど具体的にはどんな感じ?」
「感じとしてはほぼ同じって思ったっすね。拘束出来る時間が延びたのと地面に足が着いて無くても効果範囲内って透さんは言ってました。」
「なるほどね、確かにそれなら関連性はあると言って良さそうだし効果も何なら上位互換って言って良いな。良し、陸疾。ちょっと模擬戦やろうか。それ聞いて色々試したくなったわ。んで凛夏はちょっと待ってくれ。ケイトは俺が休憩がてら煙草吸うって言ったらどこか行っちまったからな。…良し、これでケイトが端末を見れば模擬戦会場まで戻って来るはずだ。凛夏はさっき俺に言ってた事をケイトにも伝えて2人で模擬戦をして色々試してくれ。上手くいけば4人とも技能解放が出来るようになるかもしれん。」
「分かりました、この辺で待ってれば良いんですね?」
「あぁ、よろしく頼む。…さて、陸疾。色々試してみるか!」
先程までの表情とはうってかわって活力のある表情を研悟は浮かべていた。恐らく先程まで色々試していたがこれと言って手ごたえが無かったのだろう。それに2つ目の技能解放がそもそも出来ないかもしれないという虚無感とも戦っていたはずである。研悟さんも人間なんだなと思いながら研悟の後を追いかけて第5ブースへと向かったのであった。
今回の模擬戦は技能解放を成功させるためのものであるため特に準備は必要無い。事前に研に指示された通りマップの設定を平原Aに設定して陸疾は転送の準備を整えた。ちなみに試合数は5試合に設定されている。これは勿論検証中に誤って相手を倒してしまったりして模擬戦が終わってしまうのを極力避ける為である。
『―、両者の装着が確認されました。これより模擬戦1戦目を行います。』
転送された陸疾はまず平原Aで1番広い場所へと走って向かった。。とりあえず1番広い場所でと言うのが事前の取り決めである。陸疾がたどり着いた時には既に研悟もたどり着いていた。
「さて、それじゃあやっていきますか。透さんの話だと技能解放には何らかの関連性があるってことだよな?」
「そうっすね。どっちの技能解放から検証します?俺は別にどっちでも良いっすよ?」
「陸疾から検証を始めよう。多分陸疾の2つ目の技能の方が技能解放との関連性が高そうだ。」
研悟がそう考えるのは理由がある。陸疾の2つ目の技能は『変則』であり、研悟は『乱撃』である。『変則』がどのような技能解放になるのかは予想がしづらいが、研悟の技能解放である《居合ノ匠》が一発の攻撃に集中させて発動させるものである以上多段攻撃を思わせる『乱撃』との関連性が低そうであるからである。
「お前の《空歩ノ理》は発動条件とかあるのか?」
「…うーん、武器を構えるだけっすかね。」
「そりゃお手軽だな。空中を足場に出来るって言ってたけど両足なの?片足なの?」
「片足っすね。足場に出来るって言うか踏み切りたい時に一瞬だけ踏める何かが足元に出来る感じのイメージです。」
「なるほどね。それじゃ一回そこでやってみせてよ。一回じっくり観察してみるわ。」
そう言われて陸疾は《空歩ノ理》を発動させて辺りを何回か跳んでみたのである。攻撃するわけでもなく跳ぶのは少し恥ずかしくもあったが研悟の表情が真剣そのものだったので手は抜く事はしなかった。
「オッケーありがとう、大体分かった。便利な技能解放ではありそうだが特に攻撃力が上がるとかでは無いんだな。…いやもしかすると上がるのかな。…良し!陸疾一回俺に突撃を普通に撃ってくれ。」
「え?なんでっすか?」
「空中で食らう時との威力の差を調べたい。その辺の壁に突っ込んでも良いんだが模擬戦なんだし俺自身で食らった方が分かりやすい。」
「…わかりました。とりあえず撃てば良いんすね?」
戦闘でも無く丸腰の相手に攻撃するのは少し抵抗があったがやはり研悟の表情は真剣そのものであったため手を抜こうと言う事はしなかった。
《空歩ノ理》に発動条件は特に無いです。陸疾の言うように武器を構えて攻撃しようとする時に発動可能になります。まあ実は細かい条件があるんですがそれはまた後程ということで。ちなみに陸疾の言う突撃は《空歩ノ理》関係なく跳躍しながらの攻撃です。つまり今からやろうとしていることは全くの無駄な行動である確率が非常に高いです。




