第59話 技能解放の関連性
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自身の身に起こった異変に2人ともすぐに気がついた。なぜなら先程同様体を動かす事が全く出来なくなったからである。しかし《大地震撼》で起こるそれは凄まじいパワーで叩き落とされたハンマーによる振動で動けないのだが今回はそんな分かりやすい行動を透は起こしていない。ただ手を地面に着けた、それだけである。
「…これは、一体?」
「戸惑ってんなぁ。まあそりゃそうだわな。まず俺の技能について説明しよう。俺はお前らが見つけて来た方法をカズと一緒に行い、2つ目の技能を手に入れた。それが『重力』だ。」
「…『重力』?」
「そうだ、そして俺はすぐこう考えたわけだ。『重力』をもし任意に強化出来るなら俺の《大地震撼》を擬似的に再現出来ないか…とね。そしてその試みは上手く行った、予想以上に…だ。なにしろそれが技能解放だったからな。」
透の口から聞こえてくる言葉に驚き続けていた陸疾はふと自分が自由に動けるようになったことに気がついた。その姿を見て凛夏も気づいたらしく恐る恐る足が動くか確認していた。
「1回の《大地緊縛》で相手を拘束出来るのは10秒程度だ。但しこいつは重力強化による強制落下だからな、《大地震撼》とは違って相手が飛んでいようと対象に出来る。そして俺自身は対象外で自由に動ける、それ故に続けて《大地震撼》を発動させる事も可能だ。」
「…つまりコンボが出来るって事ですね。」
「そうだ、元来《大地震撼》では相手に出来なかった相手を強制的にこっちの土俵に引きずり込めるのがこいつの大きな特徴だ。…なぜこれをお前らに見せたか分かるか?」
「…、分かりません。」
「俺の技能解放はどちらも似たような性能だった。…まあ細かく言えば別物ではあるんだが。要するにだ…、解放出来る技能には何らかの関連性があると考えられるんだよ。だから一度自分の出来ている技能解放をもう一度見直してみることがもう1つの技能解放に至れる道なんじゃないか…。俺はそう思うんだよ。」
透の言う事は一考の余地があるだろう。透自身がもう1つの技能解放に至っている事が何よりの根拠となっている。それに透の言う事が全くの勘違いであると一蹴出来ない程に《大地震撼》と《大地緊縛》には関連性が色濃い事が透の言葉の信憑性を大きく底上げているだろう。
「…つまり俺なら《空歩ノ理》が、凛夏なら《正鵠射撃》が2つ目の技能解放に繋がる可能性があるってことですね?」
「あぁ、あくまで可能性だがな。…もし違っても気を落とすなよ?カズはその要領で技能解放しようとしたが出来なかったからな。まったく技能ってのは分からんことの方が多い。」
「なるほど、…まあでもまだ試す余地があるなら試したいっすね。今からバトルホールに行きますね。」
「おう、頑張って来い。」
透はにこやかにバトルホールへと向かう陸疾たちを見送るとまた先程と同じようにハンマーを使っての鍛錬を開始したのであった。
模擬戦会場へと戻って来た2人はすぐにどこかのブースに入るために辺りを見渡した。すると壁沿いのとある一室にもたれかかっている人物が目に入ったのだ。目に入ったのは研悟だと思った陸疾はその一室に歩いて行き軽くノックをした。
煙草をふかしながら下を向いていたその人物が陸疾のノックを聞いて顔を上げた。予想通りその人物は研悟であった。手元の火がついた煙草はまだ吸い切っていないようであったが研悟は火を消すとその一室から出てきた。開いた扉の中から色々な種類のタバコの匂いが流れ込んで来た。恐らくこの場所が基地内での喫煙所にあたる場所なのだろう。
「お、お前らか。模擬戦しに来たのか?」
「そうっす。研悟さんはタバコ休憩っすか?」
「あぁ、休憩がてら煙草でも吸おうと思って吸ってた所だよ。…お前ら何か成果はあったか?」
「さっきそこで透さんに会ったんですよ。透さんは2つ目の技能解放に到達していて私たちにそれを見せてくれました。」
凛夏のその言葉を聞いて研悟は目を見開いた。どうやらその事は初耳だったらしくやや大きなリアクションである。そしてそれほど大きなリアクションを見せたことから研悟は未だ2つ目の技能解放が出来ていないことが想像された。
透の言う技能解放のコンボは中々効果的のように聞こえますね。その分疲労が凄そうですが…。よほど打たれ強い人が相手でもない限りは圧倒的な攻撃性能のように思われます。




