第54話 その話、ちょっと詳しく聞いてもいいですか?
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「…あんまり人に喋るもんでも無い気がするけどネ。まあこの2人になら良いか。私の技能解放は《望遠ノ眼》。視覚がものすごく強化されて大体1キロぐらいの距離までなら自在に鮮明に見えるようになるわ。ただし10分の時間制限があるけどね。」
「…普通にすごいっすね。でも戦闘って言うより敵を探すのに使えそうですね。」
「そうね、大体の人は技能解放を一発逆転の必殺技のようにして持ってるけど私のはそう言うものじゃないわ。新しく手に入った『隠密』も仮に技能解放に成功したとして、そう言う系統じゃ無さそうだから大人しく素の戦闘能力を上げて行った方が私には良いかもしれないわね。」
「まあ、それは技能解放させてからのお楽しみだな。ってことでサクッと技能解放させてくるわ。なんか成果があったらお前らにも教えてやるよ。」
そう言うと2人は模擬戦のブースに向かってていった。残された2人には正直やる事は特に無かった。とりあえずやることもないし腹は減ったし、と2人は少し早めの昼食をとることにしたのである。実は基地の中には軽食程度ではあるが飲食が出来るスペースがあるのだが2人はそれを知らなかったため模擬戦会場近くの出口から出て近くの中華料理店に向かったのであった。
「そう言えば、隊長から言われた依頼ってどんなのだったの?」
天津飯を食べていた凛夏は思い出したかのように陸疾にそう尋ねた。いきなり尋ねられたものだから陸疾は危うく食べていた餃子を喉に詰まらせるところだったが、それを水と共に流し込んだ。
「いきなりそんなこと聞くなよ、びっくりしたじゃんか。」
「ごめんて。…ふと気になってさ。」
「依頼って言ってもそんな大層なことじゃなかったよ。フリーマーケットで面白そうなものがあったら買ってこいって要件だったよ。」
「へぇ、フリーマーケットって面白そうね。面白そうなものって何があったの?」
誰が聞いているか分からないので重要な事はぼかして言わないとな、と陸疾は警戒していた。そんな内容こんな場所で言えるかよと内心毒づきながらも話せる範囲で凛夏に話すことにした。
「…そうだなぁ。よくフリーマーケットに参加してるんだろうなぁって感じのおばあさんがいてさ。一緒にいた順一郎さんが時計買ってたよ。あんまり分からなかったんだけど多分面白そうではあったかな。今度順一郎さんに聞いてみたら?」
「へぇ、それじゃ今度聞いてみよっと。」
「その話、ちょっと詳しく聞いてもいいですか?」
いきなり陸疾の背後から声が響いて来た。流石に予想してない他の人物の会話の横入りに凛夏はかなり驚いた顔をしている。話しても良い内容で良かったと思いながらも陸疾は恐る恐る後ろを振り返った。そこには30代くらいのスーツ姿の男性がこちらを向いて立っていたのだ。多分すぐ後ろのテーブル席にいた人なのだろう。現にそのテーブル席には誰がさっきまで座っていた形跡がある。
「…ええと、あなたは誰ですか?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと気になってしまってお話を聞いてしまいました。私こう言うものなのですが…。」
そう言って男性が差し出したのは名刺のようであった。そこには近くの病院の名前と目の前の男性の名前だろうか椎橋定平と書かれていた。どうやら病院で勤務している人物らしい。それさえ分かればこの渡された名刺に何の意味も無いのだが目の前で名刺を捨てるわけにもいかず、陸疾はひとまず財布の中に名刺を押し込んだ。名刺と先程の話との繋がりが陸疾には一切分からなかったがそれに構わず男性はとあるものを取り出した。誰かが写っている写真のようであった。
「私そこにある病院に勤務しておりまして、先日病院から患者が1人失踪したのです。その人物はフリーマーケットが大好きなようでいつもそのことを話していたのです。写真にある人物なんですが…見覚えありませんかね?」
言われて陸疾は渡された写真をまじまじと見た。陸疾は実際に商品を買ったわけでは無く特に店主の顔をじっくり見てはいなかった。しかしなんとなくではあるが違う顔のように思われた。
さて凛夏は周りの人の事はあんまり気にしてないんですかね。陸疾は気にするタイプのようなので問題なさそうですが以降は気を付けてもらいたいものです。




