第52話 技能解放合戦
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凛夏はAR -ジャッジメントを構えて弾を1つ放った。狙い澄ましたその弾丸の射線は陸疾の防具の隙間を正確に通していた。直感的に陸疾はその場所が狙われたことを感じ取れた。陸疾はそれを防ぐために射線を妨害出来得る場所で盾を構えれば良かった。今までもそうしてある程度防いで来たのであった。しかし陸疾は盾をピクリとも動かすことが出来なかったのである。
「…ぐっ、…これは、…一体?」
「どう?面白いでしょう?さっき放った弾丸は防御することが出来ないのよ。《不失正鵠》…狙った場所に銃撃出来た時に限りその弾丸が着弾するまで狙われた対象はその動きを制限される。まあ威力はそこまで出ないし、連発出来ないのが欠点だけどね。」
…いやぁ、まずいことになったな。防具の隙間に食らったから中々の衝撃。何発も食らってられないや。…連発出来ないって言ってたな。インターバルがどれくらいか分からないけど短期勝負であることは間違い無い!
陸疾は盾を前に構えて凛夏に突撃を仕掛けた。勿論『跳躍』を使ってである。凛夏まで少し距離があったため突撃は速度が上がり跳ぶ距離も長くなっていた。
「あんたのそれ非常に厄介なんだけど…。《不失正鵠》のインターバルはもう終わっているのよ。残念ながらね。」
陸疾が速度に乗って跳んだ瞬間陸疾目掛けて再び凛夏は《不失正鵠》を発動させた。弾丸自体は盾によって防がれたが動きが制限された事により突撃の速度が完全に失せてしまったのだ。空中で動きを止められれば突撃が届くまでにまたインターバルが終わりカウンターが仕掛けられる。そう言う目論見であった。陸疾は失せた速度を取り戻すため空中を足場にしたのである。
「はぁ?なんで勢い止まって無いのよ!空中に足場なんて無いでしょうが!」
「ところがあるんだな。―技能解放―《空歩ノ理》」
技能解放をした陸疾は空中にいるまま猛突撃を仕掛けた。2回空中を足場にして凛夏に突撃が届いた。流石の凛夏も空中からの突撃は想定しておらずカウンターを合わせる事なく突撃を食らってしまったのである。
『―、戦闘終了。八雲凛夏の戦闘不能により、相谷陸疾に1勝が追加されました。』
『規定戦闘数に達しましたのでこれにて模擬戦を終了します。ご利用ありがとうございした。』
模擬戦を終え第5ブースから出てきた陸疾を拍手で出迎える人がいた。ケイトである。どうやら凛夏の技能解放にどこまで対処するか楽しみに見ていたようだ。
「お見事ね、陸疾。あなたも技能解放が出来るようになっていたとは驚いたわ。」
「ちょっと戦闘がありまして、順一郎さんに鍛えてもらったんすよ。むしろ俺は凛夏が技能解放出来るようになったことに驚いてますよ。ケイトさんが教えたんですか?」
「もちろん!銃使いとして強くなって欲しいからね。」
ケイトが得意気にそう言った時に第5ブースから凛夏が戻って来た。恐らく技能解放を使って勝てると踏んでいたのだろう複雑そうな表情である。
「…はぁ、あんたも出来るとは聞いて無いわよ。」
「そりゃ俺のセリフだよ。凛夏の技能解放の効果凄くないか?インターバルって何秒なんだ?結構インターバルも短かったよな?」
「正確に測ってはいないけど…、15秒程度だよ。ただし6発撃ったら1時間発動出来ないし、15秒のインターバル中は弾が入れ替えられないから実質攻撃出来ないようなもんだよ。あんたの効果は?」
「俺の《空歩ノ理》は空中で3回まで足場に出来るだけだよ。それだけのシンプルな効果だし特にデメリットも無いかな。」
「…だけって充分強いじゃない。…はぁ、せっかく勝てるって思ったのに。」
文字通り肩を落とした凛夏であったがそれを慰めたのはケイトであった。ケイトは肩を叩くと凛夏にこう言ったのである。
「でも技能解放を使いこなせていたのは凛夏の方よ?防御が出来なくなる副次効果もうまく使っていたし。逆に陸疾は効果に頼った強引過ぎる戦い方だわ。相手が上手い相手なら苦労するんじゃない?攻撃は直線的だし、味方のサポート頼みな気がするけど。」
「ケイトさんの言う通りっすね。戦闘では順一郎さんにかなりサポートしてもらったんで。」
「順一郎さん…って言うと、あぁ《感知外障壁》ね。確かに順一郎さんならサポート出来るわ。」
ケイトの指摘はごもっともである。盾で守りながらとは言え陸疾のメインの攻撃手段は槍での突撃である。直線的な動きであるからしてカウンターは合わせやすい。《空歩ノ理》である程度の撹乱は図れるものの回数制限がある以上は過信は禁物である。実際全方位に対応出来る研悟が相手なら陸疾はなす術が無い。
技能解放の応酬でしたが陸疾が勝利を収めました。まあ戦闘には相性があるので凛夏が負けたのは仕方ないとも言えますね。




