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第47話 空歩ノ理

読んでくださりありがとうございます。


陸疾が口に出したのはそうした願望であった。陸疾は『跳躍』で跳んでいる時勢いに任せて突っ込んでいくことが多い。つまりは実に直線的で単純な動きなのである。しかしどうせなら自由に動きたいのであった。『跳躍』の技能を持つものとして空中での動きにこだわりがある。そうした意味合いで生まれた願望なのであった。


「なるほどな。…でもお前『跳躍』だろ?『飛行』とかじゃなくて。」


「…ですよねぇ。飛ぶは無理っすよね。でも『跳躍』で跳んだとて空中で何にも出来ないのはちょっと歯がゆいんすよね。何となくですけど。」


「そうだな…。そう言えばお前2段跳びとか出来ねえのか?」


順一郎は何かに気づいたかのようにそう言った。しかし陸疾には順一郎の使った言葉の意味が理解出来なかった。


「…2段跳び?陸上競技の三段跳びみたいなことですか?」


「違えよ、空中でもう一回跳ぶんだよ。それが出来るなら空を飛ぶことは無理でもそれなりに自由に動けるんじゃねぇの?」


言われるがまま陸疾は跳躍してからもう一度別の方向に跳躍しようとした。空中で何も無いところから跳躍しようと言うのだ。跳躍が失敗し落下するだろう、それが普通であるはずだった。しかし陸疾は『跳躍』の技能を持っていた。それは跳躍にある種の才能があったことを意味している証拠に他ならなかった。結果として陸疾の試みた2段跳びは失敗に終わった。そして技能解放に成功したのであった。


順一郎は《感知外障壁》を解いた。それに従って順一郎と陸疾の姿を誰もが感じられるようになったのである。もっとも姿が感じられずとも大体の場所は予想出来ていたらしく目の前に3人とも立ち塞がったのである。


「へぇ、『捕縛』って案外便利だな。確かに大体の場所は当てられてるようだ。」


「でしょう?俺の『捕縛』によって放たれたワイヤーは捕縛のために直線距離で敵目掛けて進むんです。だから隠れている場所も見つかるって訳ですよ。ま、俺もさっきそれに気づいたんですけどね。」


「…まいったな、これじゃ《感知外障壁》の意味がねぇ。まさかそんな方法で探してくるとは思わなかったよ。」


この順一郎の発言は本心によるものである。せめて姿を忍ばせ騙し討ちで毅彦以外の2人を撃破してしまおうという目論見があったからである。


「…それにしちゃお前ら焦ってねぇな。普通は焦るもんよ、撤退のための頼みの綱が通用しないんだからな。…となると戦闘で勝ちに来てるのか?お前は戦闘タイプじゃねぇからよ、鍵となるのは槍のお前だな?…ふふ何を考えているのか知らんがモンド相手をしてやれ。」


言われてガタイの良い男が前に出た。先程少し戦闘したが中々の実力者である。恐らくなにかの格闘技をやっているのだろう間合いの操り方が絶妙であったことを陸疾は思い出していた。


「守るばかりじゃ勝てやしない。時間がかかるのは好きじゃないんだ。悪いがさっさと沈んでもらおう。」


「奇遇だな、こっちもそう長くやる気は微塵も無いよ。―技能解放―《空歩ノ理》」


間合いを一気に詰めるかのように槍を向け突撃してきた陸疾に対してモンドはいち早く反応を見せ素早く右横へのステップでそれを軽く躱した。槍を向けての突撃はリスクが高いのである。なにしろ空中で身動きが取れない故に躱されれば誰もいない場所に突っ込むことになるからである…、本来であれば。


「…何っ⁉︎」


《空歩ノ理》を使用している陸疾は空中のどの場所でも足場にして再び跳躍することが可能なのである。空中を足場に出来るのは3回までではあるが突撃の方向を変えるだけなら足場は1つで充分であった。躱された直後に陸疾は空中を足場にして再び槍を向けて突撃を仕掛けたのである。


躱したはずの突撃に思わぬ追撃をもらった格好になったがモンドは素早い反応を見せ咄嗟に突撃を防ごうとした。しかし咄嗟のガードも虚しくモンドは建物の壁に激しく体を打ちつけられた。すぐに立ち上がって構えたモンドであったがダメージはかなり大きいのだろう少し体にふらつきが見られた。


「モンド、下がれ。技能解放の無いお前にこいつは少し力不足だ。車坂、モンドを下がらせてやれ。お前は『感知』に気を配りながらモンドを支えてろ。さてこいつは俺がやろう。」


後ろからじっと陸疾を観察していた毅彦が陸疾の相手をするために前へと出てきた。モンドと言われた男と先程車坂と呼ばれた男は軽く戦闘したためどう言う戦闘スタイルかある程度は分かっているものの目の前の毅彦は一切その情報が無いのだ。


「さて、お前が技能解放をしてくるとは予想外だったよ。見たことない若すぎる男だったからな。見たところまだ高校生とかじゃねぇか?こうやって外でも活動してる辺り期待はされてるんだろうな。」


「…何が言いたい?」


意味深に毅彦は語り始めた。しかし何が言いたいのか陸疾にはさっぱり分からなかった。そんな陸疾に構わず毅彦は話を続けた。


「まあ分からんだろうな。技能解放出来るから俺に勝てるとか思い上がったその精神に思い知らせてやるよ、技能を使った戦い方って奴をな。―技能解放―《革新的模倣》」


技能解放が陸疾に出来るということは当然敵の毅彦も出来るわけです。《革新的模倣》とは一体どういうものなのでしょうか。

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