第45話 加勢現る
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「…やはりお前らはディメンションズか。それじゃあ尚更この時計はお前らにはやれんなぁ。」
「おや、確信はなかったのか。それじゃあ技能なんて言わない方が良かったな。まあ別にバレたところで問題は無いんだがな。俺の技能『捕縛』の力を見せ…、誰だお前。」
若い男が構えたがその構えをすぐに解いた。それを不思議に思った次の瞬間見覚えのある人物が上から2人の近くに着地したのだ。その人物は軽装に日本刀をぶら下げていた。
「研悟さん!」
「…よっと。加勢しに来たぜ。丁度近くにいたからな。さて、状況はどんな感じ?」
「ディメンションズに時計を狙われてます。さっきの発言からしてあの男の技能は『捕縛』。注意しないといけないっすね。」
「なるほどね、『捕縛』ってのはちょっとややこしそうだ。こりゃ順一郎さんや陸疾じゃあ苦戦しちまうぜ。」
「あぁ、助かったよ。お前のおかげで一つ懸案が無くなった。」
言いながらゆっくりと順一郎は研悟に近づいた。そしていきなり思い切り敵目掛けて殴り飛ばしたのであった。予想外すぎることで順一郎以外のその場にいる全員一瞬固まってしまったのである。
「…え?順一郎さん何してるんすか?なんで研悟さんを殴って…え?あれ…誰?」
「…あれ?気づくの早くない?ボロを出したつもりは無いんだけどなぁ。」
殴り飛ばされた研悟はゆっくりと立ち上がった。陸疾はそれを見て目を疑った。そこに立っている人物は研悟とは似ても似つかぬ人物だったのである。
「…俺もガーディアンズには長いこと居る。が、そこの『捕縛』の野郎の事は知らない。あまり表に出て来なかったか、新入りかのどちらかだ。…だがお前はやけに順応するのが早かった。そこに違和感がまず1つ。」
ボロを出したつもりでは無かった男は顔をしかめた。そんな細かい違和感で思い切り殴り飛ばされるとは思わなかったからである。そのリアクションに構わずさらに順一郎は続けた。
「そして『捕縛』の野郎は一旦構えたにも関わらずお前の登場で構えを解いた。俺だったら伊狩クラスの奴が相手に加わったら構えを解きはしない。その一瞬が負けに繋がるからな。それがもう1つ。」
そう言われた若い男はしまったと言う顔である。最初から男が乱入することは織り込み済みだったのだろう。小さいが連携ミスと言えるだろう。
「そしてお前が俺を順一郎さんと呼ぶ時に確信した。伊狩は俺のことをジュンさんって呼ぶんだよ。流石に全員の呼び名まではリサーチ出来なかったようだな樫原よ。」
もはやしかめた顔が原型だったと思えるほどしかめ切った顔で男はこちらを睨んできた。順一郎の口ぶりからしてどうやら顔見知りのようだ。
「いかにも俺は樫原毅彦、そして技能は『模倣』だ。…相変わらず俺の『模倣』を見抜いては来るんだよなお前はよ。ただ、見抜くだけなんだよな。お前のその『感知』で何が出来る?」
「あぁ、俺の技能じゃお前には勝てない。…だから撤退させてもらうよ。」
そう言うと順一郎は懐から何かを地面に叩きつけた。叩きつけたその瞬間順一郎の周囲は白煙に包まれたのである。白煙が晴れた頃には順一郎も陸疾も姿を消していたのだ。
「逃すか!」
「おいモンド!少し落ち着け!」
白煙に紛れて撤退しようとした2人を追いかけようとモンドは走り出そうとした。それを左手で毅彦は制したのである。もちろんそれには理由があるのだ。
「良いかよく聞け、先程の男は窪塚順一郎って言うんだがあいつは撤退能力に長けてる。俺も一度逃げられたことがある。」
「だったら尚更追いかけないといけません!」
「だから落ち着けって言ったんだ。撤退するのに使うのは煙幕に使った白煙じゃねぇ。むしろ白煙はダミーでその瞬間あいつは技能を解放してこちらが視認出来ないようにしてるんだ。だから俺らが慌てて奴らを追いかけてこの場からいなくなった時を見計らって解放を解きゆっくり撤退しようって訳だ。」
モンドと呼ばれた男は未だ理解出来ていないようだ。しかし『捕縛』の男は理解出来たようだ。先程見せた構えを再び取った。
「つまり視認は出来ないけど存在はしてるってことか。なら『捕縛』で場所は探し出せる。」
「そういうことだ。それほど距離は離れちゃいないだろう。ゆっくりしらみつぶしに探すぞ。」
樫原毅彦
技能:模倣 武器:短剣
ディメンションズ屈指の実力者。頭を使った攻撃が多く作戦がはまれば敵なし。




