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第43話 さて見つけられましたか?

読んでくださりありがとうございます。

「確かに関係は無いが、不思議な代物であることは間違い無い。ありがたく家で使うことにしよう。」


どうやら順一郎は依頼に関係ないのを承知で私物を購入したようだ。しかも自分の金では無いのだから駄目なことをしてるんじゃ無いかと陸疾は首をひねったのであった。


「ま、ここには目ぼしいものが無かったってことで次行くぞ。」


陸疾の事を一切気にせずに順一郎は銀二に教えてもらったもう1つのところへと歩いて行った。


「おや、お客さんですね。」


眼鏡をかけた男が2人に気づいて顔を上げた。出品しているのも買いに来ているのも割と年配の人が多いのだがこの店は珍しく若い男が店主のようだ。先程の店同様雑貨が多く並んでいた。しかし肝心の時計がどこにあるのか見つからなかったのである。


「ここで珍しい時計が売ってると聞いたんですがね。…もしかして売れてしまったんです?」


店主は表情を全く変えずまっすぐ順一郎の顔に視線を集中させていた。その様子から感情が全く読み取れず陸疾は少しこの店主が不気味に思えた。


「…!あぁ、失礼。僕は人間観察が趣味でね。僕のところで珍しいものを売ってると聞いて来た人間がどういう人物か観察していたんだよ。…気を悪くさせてしまったなら申し訳ない。」


「いや、大丈夫。特に気にしてはいませんよ。…それで売れてしまったんです?」


「あぁ、時計ですね。…売れてはいませんよ。うちの店の看板商品ですから。」


「…は?」


そう言った店主の顔は先ほどから全く変わっていない。見たところ嘘を言っているようには見えない。恐らくその珍しい時計は時計らしい形をしていないのだろう。もっと言えば店主の一切変わらぬ表情は自信の現れなのである。欲しいのならどうぞ買うと良い、…その物がどれか分かるのなら。つまりはそう言う事なのである。


「相谷、お前も探せ。恐らく想像だにしない形状をしているんだ。俺1人で探すのは非効率だ。」


順一郎に言われて慌てて陸疾も加勢した。巾着入れや小物ケース、革財布など比較的小さめの雑貨が多く置いてある。時計と言うのなら金属やプラスチックが含まれているだろうと近くでは無いところに目を向けるとやや古めのレコーダーが目に入った。それを詳しく見てみようとしたその時後ろから視線を感じ振り返った。なぜだか若めの男がまっすぐ陸疾の方を見ながら歩いて来ていたのだ。不思議に思いながら陸疾がそのラジカセを手に取ると男はすでにすぐ近くまで歩いてきていた。その男は店主の近くまで来ると短くこう言った。


「ここに珍しい時計があるな?」


「…ええ、この人たちもまたそれを探しているんですよ。買いたい人に優先なんてありませんからどうぞお探しください。」


店主はそう言ったが順一郎は立ち上がった。どうやら見つけるのを諦めたようだ。


「いや、見つからないものを探しても仕方がない。ここはまた後で来ますよ。それまでに見つかってなければ良いんですがね。ほら相谷、それ早く置け!帰るぞ。」


そう言うと順一郎は陸疾の腕を掴んで引き上げた。やや強引に帰ろうとするので何かあったんだろうかと陸疾は薄らと考えていた。しかし陸疾は手にした古いレコーダーがどうも気になって仕方がなかった。それでついそこにある右のつまみをクルリと回転させたのである。


「#%^\*!」


突然店主が訳の分からない言葉を放ったかと思うと人間業ではない速度で陸疾からレコーダーを奪うとつまみをもとに戻した。店主は好奇心に満ちた表情をしていた。


「…驚いた。いきなりそれに気づく人なんて今までいなかったのに。…あぁ、失礼。突然の事でつい興奮してしまった。まさか見抜かれるとは思わなくてね。…あなた方が所望している珍しい時計と言うのはこのレコーダーなのです。右にあるつまみを回す事で時間の進む速度を自由に変えることが出来る不思議な代物です。時計回りに回されたので時間の進む速度が上がったのですよ。」


どうやら陸疾が当たりを引いたようだ。いきなりの事で陸疾は戸惑いを隠せずにいた。順一郎は驚きと苛立ちが混じった複雑な表情をしていたがやがて口を開いた。


依頼された珍しい時計が見つかって良かったですね。しかし順一郎は複雑な表情です。驚きは分かりますがなんで苛立ちも含まれているんでしょう?

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