第40話 依頼って何ですか?
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「お、良く分かってるね。ちょっとストックが切れそうでね。」
そう言うと研悟はすぐそばの道にある喫煙所に吸い込まれて行った。探す所作を見せずに歩いて行ったところを見るとかなりの常連らしい。
「…研悟さんって、結構吸うんすかね。」
「そうね、研悟以外でも吸う人は多いわ。ちなみに隊長さんも結構吸う人なのよ。陸疾への依頼も案外煙草の調達かもしれないわよ。」
煙草くらい自分で買って欲しいものだと思う上にそもそも未成年の自分に煙草の調達を頼むだろうかと陸疾は疑問に思っていた。
基地に戻った陸疾はそのままの足で景計のもとへ向かった。残る2人はどうやら模擬戦をするようだ。勝ち越したとは言えギリギリだったので次凛夏と模擬戦をやる時は負け越すかもなと思いながら景計のところへ歩いて行くのだった。
「やぁ、相谷くん待ってたよ。…と言ってもまだ後1人来るからね。適当にその辺で待ってて。多分もうすぐ来るだろうから。」
景計の部屋には陸疾と景計しか居なかった。どうやら依頼する人はもう1人いるらしく陸疾は大人しくその人の到着を待つことにした。しかしメッセージの通知を確認した時陸疾は基地に近かったとは言え外にいたのであり、他の人の到着の方が早いと思っていたのだがさらに遅くなる人がいるようだ。一体誰だろうと考えていると見覚えのある人物が景計の部屋に入ってきた。
「申し訳ない、端末を見るのが遅れた。隊長さんはいるか?」
額に汗をかきながら現れたのは順一郎である。その様子を見て景計は軽く手を挙げた。どうやらもう1人来ると言うのは順一郎の事らしい。
「あ、順一郎さんじゃないすか。」
「ん?あぁ相谷か。お前も呼ばれたのか。」
「よし、揃ったね。それじゃあ依頼内容を説明するよ。今回君たちに行ってきてもらいたいのは西に3キロ行った先にあるフリーマーケットだよ。」
「…フリーマーケット?」
「フリーマーケット、通称蚤の市なんて言うんだけど…」
「あ、言葉を知らないんじゃ無いっす。なんでフリーマーケットなんすか?」
陸疾の要領を得ない呟きを言葉が分からないと判断した景計はフリーマーケットの説明を始めた。別に用語の説明はいらない陸疾は慌ててそれを止めたのである。陸疾はなぜそこに行く必要があるのか分からなかっただけである。
「そんでそのフリーマーケットで何を買ってくれば良いんだ?」
「うん、そこのフリーマーケットで販売されている時計に噂が出回ってるらしくてね。まあ単なる噂なら良いんだけどどうも何か秘密がありそうでね。」
「…?どんな噂なんですか?フリーマーケットで売ってる時計にそんな秘密があるとも思えないんすけど。」
「私が聞いた噂では目覚まし時計のようなもので操作すれば時間の流れが緩やかになる代物らしい。本当かどうかも分からないけどもし本当ならとても面倒だからうちで管理しておきたい。ジュンならいざとなったら退散が出来るだろうから頼むよ。」
「…分かった。頑張ってみよう。」
順一郎は既に依頼を了承しているようだ。順一郎の技能がどのようなものかは良くわからないが研悟の話にも出てきたように退散するには適格な技能なのだろう。しかし陸疾はなぜ自分がそのメンバーにいるのかが分からなかった。
「えっと、…なんで俺なんすか?」
「ん?そりゃ君なら上手くいきそうな気がしてね。ま、単なる予感に過ぎないけど、この間のプロジェクトも進められたんだから今回もどうかなって思ったんだけど。」
どうやら先日のプロジェクトの成果により陸疾の評価が上がっているようだ。それなら凛夏もそうだろうと思わないでも無かったが期待されているんだからその辺りは気にしない事にした。
「…分かりました、頑張ってみます。」
「よし、それじゃあ頼むよ。…あ、そうだ。何か他にも面白そうなものがあったら買ってきても良いよ。フリーマーケットは宝の宝庫だからね。予算は一応この範囲で動いてくれ。予算オーバーしそうなら一旦建て替えてくれれば後で補填しよう。それじゃあ頼んだよ。」
ということで陸疾と順一郎はフリーマーケットに行くようですね。調達しようとしているのは不思議な時計のようです。時の流れが緩やかになるのはかなりすごいですが果たして噂の真相やいかに。




