第38話 飯でも食おうか
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「まあ、すぐに出来るものでもないしな。それに君らは技能が2つあるから解放させるのは時間がかかるかもしれない。…気長に向き合えば良いさ。」
「そう言えば、…研悟さんやケイトさんは2つ目の技能は手に入れないんすか?」
「私もそうなんだけど、技能の追加はメリットもあるけどデメリットもあるのよ。特に技能に頼った戦闘スタイルの人は技能が2個あっても使わないんじゃないかと中々追加しづらいんだよね。」
あっても使わないなら無くて良いという発想である。陸疾の技能である『跳躍』が分かりやすく単純に跳躍力が上がるため以前と比べて戦闘が良くも悪くも変わってしまうのだ。それに慣れるまで時間がかかるならいっそ2つ目の技能を追加しないという結論も無しでは無いだろう。
「さて、もうすぐ昼飯の時間だな。お前ら昼飯っていつもどうしてるんだ?」
「どうって…適当にその辺で買ってますね。」
「同じくその辺で」
「あれ?凛夏って実家だろ?弁当とか作ってもらえるんじゃないの?」
「うちの母は料理が得意じゃないですし、夏休みだから好きなの食いなってお金を渡されるだけですね。その分色んなご飯が食べれるんで私としては助かってます。」
「へぇ、それじゃあ4人でご飯でも食べましょ。研悟、あの店今日開いてるよね?」
「ん?あそこか、…確か開いてるはずだ。良いね、みんなで行こうか。奢ってやるから遠慮なく食え食え。」
どうやら研悟やケイトがよく行くお店があるらしい。そこに連れて行ってくれるようだ。一体どんな場所なのだろうかと2人は想像を膨らませていた。模擬戦会場から少し外れた道から電子ロックの扉を経てエレベーターで昇って行くと近くのビルの中に辿り着いた。ここもまた基地へと続く入り口のようだ。寮へのエレベーターと違い乗った階層にもボタンで行けるらしい。
「へぇ、ここも基地に繋がっているんすね。俺満島古書店しか知らないんで。」
「あぁ、ここ以外にも何個かある。…満島古書店は最初に教えられるところだけどあんまり使われないんだよな。」
「…?どうしてなんです?私結構あの店のギミック好きですよ?」
「そりゃギミックが楽しいのは分かるけどな。あんな古書店に何人も何人も入ってそれで出てこないんだぜ?試しに入ったら中には店主しかいない。ギミックがバレるより先に店に悪い噂が出回るな。だからみんな気を遣って偶にしか利用しないのさ。」
「そう!そしてこの入り口は模擬戦会場に一番近いからネ。私は大抵ここの入り口を使うわ。電子ロックも寮の鍵で開けられるし、とっても便利だわ。」
なるほど、電子ロックの鍵は寮の鍵と同じようだ。エレベーターを介して基地から寮に帰る時に特に電子ロックの扉が無いのが少し不思議だったが基地のセキュリティで賄っているという事だ。
「…寮の鍵か、それじゃあ私は使えないですね。寮に住んでるわけじゃ無いんで。」
「職員に申請したらくれると思うぞ?住まない人に寮の鍵はくれないだろうけど基地への電子ロックの鍵はくれるはずだ。申請は端末でいつでも出来る。」
「へぇ、それじゃあ早速申請してみますね。」
「さ、そんな話をしてる間に着いたわよ。研悟が出すんだから遠慮なく食べなさい。」
先頭を歩くケイトが立ち止まったのは基地を出て歩いて数分のところにあるカレー専門店であった。店の近くで既に香辛料の良い香りが漂っている。大きくナンが描かれた看板からナンカレーの専門店なのだろう。
「ナンのカレーですか、珍しいっすね。俺食べたこと無いっす。」
「ま、陸疾とかの年齢であんまり食べたことがある奴は少数派かもな。結構美味いんだぞ?さ、入ろう。」
基地へと続く入り口はかなり種類があります。研悟も言っていましたが如何にギミックに工夫を凝らしたとしてもその場所に人数がやたら集まると疑念が湧くものです。一度湧いてしまえばギミックが見抜かれるのも時間の問題です。そのために秘密の入り口を何個か用意してあると言う訳です。




