第35話 陸疾は何をしたの?
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一体陸疾は何をしたのか。それは至極単純なことであった。盾の後ろで丸くなりながら適当に凛夏の方角目掛けて爆弾を投げた。ただそれだけである。もちろん凛夏のすぐ後ろに着弾したのは偶然でしか無いが、撹乱させるには充分な一撃であった。
陸疾も爆弾を持っていると凛夏に考えさせる前に爆弾という手の内を切っておくことで今後陸疾が使うかに関わらず爆弾の存在を頭に入れて置かなければならず凛夏は少し不利になったと言える。使える手段を遠慮なく使う、勝利のためには効果的である。
…2勝1敗か、次で決めよう。…そのためにはこいつだな。そう言って陸疾はある物を持ち物に設定し模擬戦への準備を整えた。
『―、両者の装着が確認されました。これより模擬戦4戦目を行います。』
アナウンスの後に転送された陸疾は思わず周囲を見渡した。マップは特に変更して来ないだろうと思っていたが転送されたマップは砂漠地帯B。すなわち砂漠のど真ん中なのであった。
「…これは砂漠か。随分と見晴らしは良いな。いや…むしろ良すぎる。」
陸疾は先程の戦闘よりも一層警戒心を強めた。マップの関係上、凛夏が早々に隠れ場所を見つけていたら探し出すのが困難になる上に凛夏からこちらは丸見えなのである。銃声の方角に構えても何発かは確実にくらってしまう。数秒悩んだ末に陸疾は先程手にしたある物を早速使ってみることにしたのである。
「うお、砂に足を取られてあんまり跳べないが…。まあ良いだろ、…なるほどねあそこにいるのか。…上手く走れるかな?…よっと。」
陸疾が手にしたある物とはズバリ、バネが内蔵されている靴である。普通に歩くにはややぎこちない動きになってしまうがそれさえ目を瞑れば『跳躍』を技能に持つ陸疾にとってこれ以上無いアイテムである。陸疾は砂にやや足を取られながらも上に大きくジャンプして凛夏の姿を見つけると、文字通り飛ぶように凛夏目掛けて走りだしたのだ。
「見つけたァ!」
左右に細かく移動しながら猛然と走って来る陸疾にややたじろいだ凛夏であったが陸疾はまだ盾の使い方が不慣れであり体が防げてはおらず、完全に距離を詰め切る前に銃撃を放ったのである。
『―、戦闘終了。相谷陸疾の戦闘不能により、八雲凛夏に1勝が追加されました。装備を変更されますか?』
…思いっきり銃撃された…。テンションが上がりすぎて無策に突っ込んじゃったな。バネが結構跳ねるから狙いづらいのかなと思ってたんだけど普通に食らったわ。…これあんまりバネが無い方が良いかな、そもそも『跳躍』で人よりは跳べるんだし。…これで2勝2敗の五分か、普通に良い勝負じゃん。次の作戦はどうしようかな…、これ両方マップの設定いじったらどっちが反映されるんだろうな。平原Aとかに設定しておこう。そんで作戦なんだけどなぁ、凛夏が視認出来た状況で銃口を別の方向へ向けたいところなんだが…。
少し考えた陸疾は突然ブース内の職員に顔を向けた。
「あの、…設定すれば何でも持って行けるんですよね?」
「…?はい、基本的に何でも構いません。余程の物じゃ無い限り大丈夫かと。」
「それじゃあもう一つ、設定するアイテムに何らかの改造…例えば色を塗るとかはオッケーっすか?」
どうやら陸疾は何か思いついたらしい。ゴソゴソとなにやらボールのようなものに何かに色を付けているようだ。ひとしきり塗り終わるとそれを職員に渡し自分はさっさと転送の準備を整えたのである。
『―、両者の装着が確認されました。これより模擬戦最終5戦目を行います。』
先程の陸疾の疑問には明確な答えが存在する。模擬戦を行う両者がマップの設定を行った場合、1戦目のみランダムでどちらか一方の設定が適応されそれ以降は前戦での敗者の設定が適応される仕組みなのである。従って凛夏はさらにマップを住宅地Bに設定しようとしていたが陸疾の設定が反映され2人は平原Aへと転送されたのであった。
陸疾は第1戦で凛夏が使った爆弾を効果的に使っていますね。もしかすると凛夏が爆弾をもう少し後で使っていたらまた展開が変わっていたかもしれませんね。さて、陸疾はまた何か作戦を思いついたようです。第5戦は一体どうなるでしょうか?




