第34話 模擬戦は進む
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再び山岳地帯Cに陸疾は転送された。陸疾は特段マップによるメリットは無いため基本的にマップは相手任せである。そして凛夏も特にマップを変えることはしないようだ。陸疾は爆弾攻撃を気に留めながら第1戦目で自動小銃が置かれていた場所へと足を進めた。やはり先程の場所と同じような場所に黒い物体が見えた。
凛夏の攻撃手段はこの自動小銃と死角からの爆弾、それを踏まえて少しずつ距離を詰めていった。一定の距離に近づいたその時視線の先から何発もの銃声が聞こえた。慌てて陸疾は大盾を構えた。どんな状況でどういう風に射撃されたのか判断する事も無く構えられたその大盾は銃撃を防ぐ事は無かったのである。
「…痛っ⁉︎…なんで痛い?防げないなんて事あるか?銃は同じ場所か?…移動したか。…!そこだ!」
陸疾は視界の端に凛夏の姿を捉えた。それにより次に撃たれた銃撃を陸疾は防ぐ事が出来たのである。どこから放たれるか分かった銃撃はロブスティラによって防ぐ事はそう難しくは無い。放たれた銃弾を全て盾で弾きながらも先程なぜ防げなかったのかについて陸疾は考えていた。…結論は出なかったが。
…ダメだ何にも浮かびやしない。銃口が見えている状態で直線で飛んでくる銃弾を防げない訳ないんだけどな。もらいたてのこの盾に穴なんて空いてる訳無いし。…しかしあの銃厄介だな。銃弾の交換がものすごく簡単なんだろう、特に間も無く銃弾が飛んで来そうな感じだわ。…ん?なんかさっきより銃が斜めのような。…銃口を上に向けている?…痛ぇ!
凛夏は盾を上に超えて陸疾に着弾するよう角度を調節していたのである。反動で銃口が上を向くことが無い訳ではないため陸疾は大して角度に気をつけていなかったのだ。凛夏の狙いに気づいた時には盾を持つ陸疾の手に何発もの銃弾が打ち込まれたのである。陸疾はたまらず盾から手を離してしまった。
「さあ!盾無しでこのAR -ジャッジメントを防げるかな!」
盾から手を離してしまい鎧を除けば無防備でしかない陸疾をしっかり狙って凛夏は銃弾を数発放った。その銃撃は陸疾を戦闘不能にするには充分であった。
『―、戦闘終了。相谷陸疾の戦闘不能により、八雲凛夏に1勝が追加されました。装備を変更されますか?』
いやぁ、負けた負けた。銃の戦い方にあんなのがあるなんて知らなかったよ。…多分ケイトさんに仕込まれたんだろうな。しかしあんなに正確に銃撃を浴びせられるのか…?…あ、技能が『正確』だったか。となると生半可な装備じゃしんどいな…。隙間という隙間を狙ってくるに違いないからね。…ただ今より重くすると今度は近づくのが大変になるからなぁ。…それじゃあ次はこれで行こうか。
『―、両者の装着が確認されました。これより模擬戦3戦目を行います。』
3戦目もまた山岳地帯Cに転送された。2戦目同様2人ともマップを変える気は無いようだ。ただ凛夏が隠れている場所は同じでは無かった。1、2戦目と同じ場所に向かって動き出そうとしている陸疾を横から銃撃する、これが凛夏が立てた3戦目での作戦であった。しかし残念ながら陸疾に見つかってしまったようで全て弾かれてしまった。
「弾かれても問題無い。さっきのパターンの銃撃を陸疾はどう対策して来るんだ?…なるほどそう来たのか。」
陸疾は盾の後ろで体を小さく丸めているようだ。凛夏からの視界ではロブスティラしか見えない。周囲に障害物は無いので盾の後ろにいるのは間違いないのだが見えない以上鎧の隙間も狙いにくく積極的に銃撃戦を展開するのはためらわれた。さて、どうしようかと凛夏が考えをまとめようとしたその瞬間、凛夏の少し後方から凄まじい爆風とともに衝撃が放たれたのである。予期せぬ爆風に凛夏が狼狽える間に『跳躍』によって一気に距離を詰められてしまったのである。
「悪いな…今度は俺の勝ちだ。」
『跳躍』の勢いそのままに陸疾は梔子で凛夏を貫いた。機動力重視でろくに装備をしていない凛夏を戦闘不能にするには充分な一撃が凛夏に浴びせられたのである。
『―、戦闘終了。八雲凛夏の戦闘不能により、相谷陸疾に1勝が追加されました。装備を変更されますか?』
さて3戦目まで終わりましたね。2勝1敗でやや陸疾に分があるかと。凛夏の戦い方は技能の『正確』を主として狙いすませて来る感じですが陸疾は守りを固めつつ相手を乱していく感じなんですかね。




