第30話 君にもあげるよ
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「…お、これだこれだ。…リクト、君にこの大盾をプレゼントしよう。鋼鉄の大盾ロブスティラ。特筆すべきは盾の軽さに見合わぬ程の防御性能。きっと君の力になってくれるはずさ。」
差し出された盾を陸疾が手に取るとすぐにその軽さに驚いたのである。見た感じ前の盾と硬さは変わらないように思うがその重さは約半分と言って良い程に軽かったのである。
「…⁉︎え、これめっちゃ軽いすね。…うわ、これ凄。」
「そ、びっくりするでしょその軽さに。でも防御性能は君の前の奴と同じか使い方によってはそっちの方が上だよ。」
「…すげぇ、ありがとうございます。…あのところでさっきから思ってたんですけど、そのカバン?凄くないですか?見た目より随分と物が入ってるみたいですけど。」
「…ん?あのカバン?凄いでしょ、あれ。あれが手に入ってから僕の武器蒐集に更なる磨きがかかったのさ。今となっては欠かせない相棒だね。…ちょっと見ててよ。」
そう言いながら丈は先程ロブスティラを探した時に放り出した武器や防具の数々をカバンに仕舞い始めた。やや乱暴な仕舞い方のようにも思われる程放り投げるように丈は片付けていった。全て片付け終わると陸疾に向かって笑顔で振り返ってきた。
「凄いだろ?さっきいっぱい出てきた武器や防具がみんなこの中に入るんだ。技能のカギくらい不思議な代物なんだけどこのカバンには容量が無限に思える程に荷物を入れることができる。そして中に入ってる荷物の重量を90%以上カットしてくれるのさ。だから僕が背負って運べるって訳さ。…まあ最近またちょっと重くなってきた気がするからそろそろ整理をしないといけないね。」
丈の話を聞く限りでは確かに不思議な代物だと陸疾にも思われた。しかしそれより不思議だったのはせっかく色々と出した武器や防具を全部仕舞ってしまっている事である。丈は確かに言ったのだ、君たちにあげよう…と。陸疾の隣では凛夏が困惑の表情を浮かべていた。やがて丈は片付け終わったカバンを背負うために手を伸ばしたその時もう一度振り返ったのである。丈の視界にはしっかりと凛夏が映っていた。
「…あ、いけね。リクトで満足して全部片付けちまった。ゴメンゴメン。リンカだっけ?君の技能も教えてくれるかな?それに今どんな装備してるの?」
完全に陸疾に盾を渡して満足していたらしい。とは言え約束は守るつもりのようだ。しかし凛夏には1つ目の質問は答えられても2つ目は答えられなかった。
「…私の技能は『早撃』です。…装備はまだ何も。」
「へぇ、『早撃』ね、…ん?装備も何も決まってないの?模擬戦とかしてない?」
凛夏は静かに頷いた。そもそも模擬戦はやるつもりだったのだがケイトが会議でいなかった事と研悟の思いつきで会議に参加しその後のプロジェクトにも関わったため凛夏の戦闘スタイルは何も無いのであった。
「…ふぅん、何にも決まってないのか。でも技能が『早撃』でもう1個が『正確』でしょう?多分っていうか確実に適正は銃系統の武器だよね。トオルさんやジュンみたいにゴリゴリ筋肉なら片手銃も選択肢に入るけどリンカにはちょっと厳しいと思う。片手の強みが活かせないからね。武器はとりあえず僕が適当に渡すよ。また会った時にでも別のをあげるよ、だから気に入らなかったら容赦なくポイってしてくれたら良いや。防具はね、大体この手の人にはぴったりのものがあるのさ。…という事でしばらくお待ちくださいませ。」
一気にそこまで言い終わったかと思うと再びカバンの中からあれこれ出し始めた。陸疾はさっき見かけた中でなら散弾銃っぽいものや火炎放射器が良いかなとおぼろげに思っていたのだが最終的に丈が持って来たものは見覚えのない銃であった。
「…これですか?ちょっと重いんですね。」
金属で出来たその銃は金属特有の重みが感じられるつくりをしていた。イメージしていた銃と比べると銃口が狭くそして銃身がかなり長いのであった。
「ま、両手で使う銃だからね。それなりに重量があるけどまだそれは重くない方だよ。それくらいなら多分君でも担いで運べる重さだよ。まあ武装解除すれば良いだけの話だからそいつを担いで運ぶ必要性は無いんだけどね。その銃の名前はAR -ジャッジメント。中、近距離用の自動小銃さ。」
そういえば凛夏はまだ模擬戦もしてませんでしたね。戦闘経験がまるで無いのに戦闘に巻き込まれるのはかなり危険なことなのでこの後すぐに模擬戦をする流れになるかなと思います。でもケイトは今日模擬戦会場にいるんでしょうかね。まあ普通にいそうではありますが。




