第29話 武器をあげるよ
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「つまり君たちにも強くなってもらわなきゃこっちは困るって事さ!さ、君らは技能が2つなんだろ?勿体ぶらないで両方教えてくれよ。」
悪くなった空気を変えたいかのように殊更に丈の声のトーンは高かった。言っている意味はあまりわからなかったが。
「…ええと、俺や凛夏の技能を教えることが強くなることにどう繋がるんです?イマイチ分からないんすけど。」
「…ん?言わなかったかい?僕はしがない武器蒐集家。戦闘のイロハは他の人に任せるけど僕なりに君たちにできることをしてあげようと思ってね。今まで僕が集めた武器なんかを技能に応じてプレゼントしようって訳さ!」
「へぇ!そりゃ良いっすね。俺の1つ目の技能は『跳躍』です。…あ、でも俺は研悟さん伝いで既に梔子を貰っちゃってますね。」
丈からのプレゼントの申し出はありがたいと最初は思ったが、陸疾は既に梔子を貰っている身であった。梔子以外に武器を持つのも手狭になると思っていたが丈はその辺りを気にする素振りも見せなかった。
「いや、別にその辺は気にすることないよ。…ん?『跳躍』?そんで武器は梔子だから槍だよね。…他どうなってるの?さっきちらっと見たけどちょっと全身くまなく見せてよ。…なるほどね、鎧と大盾に槍のスタイルか。槍は梔子で良いし、鎧は好みの範囲になるから良いとして…、盾だな問題は。」
丈曰く盾が問題であるようだ。陸疾には何が問題で何が問題ではない理由が分からないのだが丈の見立てでは何か明確な基準があるらしい。そしてその見立てが正しい事は隣の景計がしきりに頷いていることから見て取れた。
「好みの範囲…ってなんすか?」
「鎧は防御性能と重さが負に比例するのさ。だからガチガチに固めたければもっと重いのに変えれば良いし、俊敏に動きたければ今のより軽くすれば良い。だからその辺は好みの範囲なのさ。今君が装備してる鎧は…模擬戦で設定できる奴かな?スタンダードなものでね。特に変えるべきとも変えないべきとも言いがたい普通って感じ。…ただ盾はそうは行かない。特に君の技能は『跳躍』と『変則』なんだろ?」
「そうっすけど。…なんか関係があるんすか?」
「『変則』はちょっとどんな技能かが分からないからひとまず置いておくとして、『跳躍』は文字通り跳躍力を上げるものだろう?なら重さが大きく負荷になる。そして今君が装備している大盾は正直重さに対して防御性能が合ってない。分かりやすく言うとコストパフォーマンスが悪いのさ。」
つまりはこう言うことである。鎧や盾の重さを重くすればするほど防御性能が上がることは上がるが陸疾自身の技能である『跳躍』を駆使して戦闘するにはその重さが足枷となる。そして今陸疾が使っている盾は重い割に防御性能はそれほど高くないようなのである。
「…これやっぱり重いんすね。設定できる奴の中で1番凄そうだったんでこれにしたんすけど。」
「それはただ重いだけの板でしかないね。扱いが難しいし単発攻撃ならまだしも複数攻撃とかされたら吹っ飛ぶんじゃない?」
そう言われて陸疾は以前佐久間拳司との戦闘で相手の攻撃であえなく吹っ飛ばされたのを思い出した。それにその後の反撃も予想より跳ぶ距離が短く相手に避けられてしまったのである。
「…思い当たる節がありそうだね。そんなリクトにとある大盾をプレゼントしようじゃ無いか。…ちょっと待ってて、今探すから。」
そう言うと丈は壁に立てかけてあった大きな荷物を中身をあれこれ出しながら盾を探し始めた。大きさこそ大きいが丈が背負ってきた事を考えるとそれほど入っても無いんだろうと陸疾は勝手に考えていたが、その見立てに反して次々と武器や防具が山ほど出てきたのである。その種類は小型拳銃や散弾銃に、火炎放射器やナックルダスター、長弓や日本刀それに槍も出てきたのである。そこまで確認すると今度は防具が出てきた。身長程に大きな盾から片手サイズまで色んな種類の盾がいくつも出てきたのである。そして5種類目の盾が出てきたところで丈が反応を示した。
丈は仲間の事をカタカナ表記で呼びます。まあ特に意味は無いですが。さて丈は陸疾に一体どんな盾をくれるんでしょうか。




