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第28話 敵は他にいる

読んでくださりありがとうございます。

そこまで言って景計の言葉が途切れた。ガーディアンズが出来た当時の話をそしてミラという人物がなぜ死んでしまったのか陸疾は気になって仕方がなかった。


「…済まない、少し昔を思い出してね。…そして技能のカギについて全員で研究を進めた結果ある組織が浮かび上がったのさ。」


「…ある組織って言うとディメンションズですか?」


「いや、違う。その組織の名はパラドクス。彼らは独自の技術を駆使してこの世界を我が物にしようとする秘密団体だ。驚くことなかれ彼らは千年後の未来から時空の歪みを利用してこの世界へ侵略しに来るのだよ。」


驚くことなかれと言われたが特に陸疾や凛夏は驚かなかった。驚けなかったという方が正しいかもしれない。なにしろ景計の話には現実味がまるで無かったからである。2人の顔を見て丈が口を開いた。


「やっぱり信じてない顔をしてるね、僕もこの話を最初に聞いた時同じことを思ったよ。でもそんな連中の存在を裏付ける程僕たちには到底理解出来ないものが目の前にあったからね、信じざるを得なかった。」


「…つまり、これ…ですか?」


陸疾は話を聞きながら自分の手の中にある金と銀のカギに視界を落とした。技能のカギ…最早物質と呼べるのかも怪しいほどに不思議な概念のような物体である。これがもし景計の言う千年後の未来のものなら景計の話も少し信憑性が生まれるというものだ。もっともなぜそれがこの現在で手に入るのかの理由はさっぱり分からないが。


「まさしくそれだ。パラドクスの連中は軒並み技能の解放者だったからね。技能のカギは1つしか才能を解放する訳では無い事を私が確信していたのは、彼らがいくつもの技能を使っていたからなんだよ。」


「…あの、彼らという事は複数いるって事っすよね?パラドクスの連中と戦ったように聞こえるんすけど、どうなんですか?」


景計の話の中で疑問に思ったことを陸疾は質問してみたのである。しかしその質問はまさに景計が先程言い淀んだ事に繋がっていたのだ。


「…あぁ、そうだよ。技能のカギを研究するために訪れたとある洞穴の奥底でパラドクスの構成員2名と交戦したのさ。…技能の事を少ししか知らない私たちに太刀打ち出来るはずが無かった。4人対2人だったが防戦一方でね。最早勝つ事は不可能だった。」


勝つ事は不可能と景計が言ったが現に景計は目の前にいるのである。従ってなんとか勝利を収めたのだろうという結末は陸疾にも予想が出来た。がしかしどうやってなんとかしたのかはさっぱり予想も出来なかった。


「不幸中の幸い、戦っていた洞穴は古く今にも崩れそうでね。だから透の技能である《剛力》で洞穴を崩落させそれに奴らを巻き込ませることを考えた。それはその時の段階で1番効果が期待出来そうな行動だった。ただそれには相手にギリギリまで狙いに気づかれない必要がある。そこで《敏捷》の技能を持つミラが最後尾となった。彼女は私たちが無事に撤退出来るように、そして奴らを崩落に巻き込ませるように懸命だった。そして彼女はその役目を全うした。…自身を犠牲にして…ね。」


あまりの壮絶な話に陸疾も凛夏も何も言えないでいた。陸疾はミラという人物が誰か気になり聞いてしまった自分を責めたい気持ちになったのである。軽々しく聞かなければ良かった。その思いがさらに辺りの空気を悪くしていた。


「…あぁ、済まない。すっかり空気を重くしてしまったね。…ミラのためにも私はいずれ本格的に侵略してくるだろうパラドクスに対抗するためにこのガーディアンズを作ったのさ。」


「…そのパラドクスの連中はいつ侵略してくるのか分かるんすか?」


「ミラが死んで以来パラドクスが表立って活動した形跡は無い。なにしろ千年も先の未来からの刺客だ。最早数年が誤差の範囲なんだろうな。…それに交戦した1人がまだ準備をしているとかなんとか言っていた。」


「…つまり、数年先かもしれない…と?」


「そうかもしれないし、30秒後かもしれない。要するにいつかは不明だが侵略は絶対だ。来ない事は無い。全くの無策で侵略を迎えればこの世界は瞬く間にパラドクスによって牛耳られるだろうな。…そんなことはさせない。ミラに顔向け出来ないからね。」


そう言うと景計はにこりと笑ったのであった。その笑顔は哀しみと決意が両方感じ取れる不思議な表情であった。


さてようやく陸疾たちが立ち向かうべき強大な敵の組織の名前が分かりました。ディメンションズは本来敵ではないのです。対立組織ではありますけどね。少なくともこの時代の人で構成されたディメンションズを圧倒出来なければパラドクスには到底勝てません。

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