第26話 成果は…?
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ええと、橋田丈って言うのか。なんか聞いたことがあるような。…さっきの隊長の話にもちょっと出てきた人だけど…、まだなんかあったな。……あ、研悟さんの先輩の人か?つまりはあれだ、梔子の持ち主だ。
研悟の話を思い出した陸疾は手袋を操作し設定してある装備を装着した。その様子から凛夏が身構えた。なにしろ陸疾が橋田丈なる人物の言葉を受け武器を構えたように思われたからだ。
「こいつ敵か⁉︎なんで基地の中に!」
「…ん?あぁ、違う違う。紛らわしかったな、ごめん。ええと、橋田丈さんでしたっけ。これに見覚えはありますか?」
「…お!梔子じゃないか。なんでこれを君が?研悟はどうしたの?」
「やっぱり合ってた。あなたは研悟さんが言ってた丈さんですね。これは俺が槍に適性があるってことで研悟さんからもらったんですよ。」
「ふぅん、なるほどね。まあ研悟は日本刀の方が合ってそうだったからな。リーチがあれば結構戦えるだろうってそれも勧めて渡したんだけどね。君に槍の適性があるなら君が使うと良いよ。」
「…今私は混乱してるぞ。私にも説明してくれ。この人はどこの誰だ。少なくとも敵じゃ無いんだな?」
置いてけぼりにされた凛夏が不満顔である。不必要に警戒させてしまったようである。もちろん悪いのは言葉足らずの陸疾であるが。
「ごめんごめん。この人は研悟さんの先輩の丈さんだよ。俺も名前しか聞いてないから最初分からなかったのよ。俺の今の武器が丈さんから研悟さんを経て俺の手に渡ったからそれを見せようと思ってね。でも槍だけ出す方法なんて知らないから完全武装しちゃったよごめんね。」
陸疾が凛夏に謝っていると片付け終わったらしい景計がその場に現れた。やはりその額には汗が滲んでいた。
「やあ、君たち成果はどうだったかな?…ん?丈じゃないか。帰ってきてたんだな。」
「おや、カゲさんご無沙汰です。丁度10分程前に基地へ帰ってこれたんでここで休んでいたんですよ。…ところで成果とは?何やら面白そうな響きですねぇ。」
「あぁ、きっと面白いものが見れるはずだ。見物人は多い方が盛り上がるからね。2人は早速準備に取り掛かってくれ。」
「そんなに期待されても…、何も無かったらどうするんすか。」
なんてことをこぼしながら陸疾は景計からもらった技能のカギを胸に突きつけた。何も起きないならなんて口には出したが実際は技能が解放出来るだろう。陸疾はそう考えていたが予想に反して何も起きなかったのである。隣で同じように凛夏も技能のカギを胸に突きつけていたがこちらも空振りのようだ。
「…これがカゲさんの言う面白いことかい?今更技能の解放なんてちっとも興味も湧かないな。僕はてっきり僕の知らない武器でも出てくるのかと思ってたけど。…それに君は技能を持ってないのに武器を持ったのかい?それの方が問題だよ。」
景計が面白いものが見れると言ったので期待していたのだろう丈は少し不満気な顔をしていた。だがそれを言っている内に異変に気づいたようだすぐに顔が神妙なものへと変わった。
「いや待て、なんで何も起きない?そっちの君もだ。人間誰しも何かの才を持って生まれてくるはずだ。技能のカギはそうした潜在能力をも引き出す優れた存在だからね。1人だけなら確率的にあり得なくもないかもしれないけど2人連続は有り得ない。…カゲさん説明してくれ。」
「いや悪いが丈への説明は後だ。…なぜ何も起きない…?ふむ、君たち技能のカギはまだ持っているな?2個とも胸に突きつけてみてはくれないか?」
景計の眼差しは真剣そのものであった。景計の言う通りに陸疾と凛夏は自分の技能のカギも含めて自分の胸に突きつけた。
《技能のカギの使用を承認しました。これより技能を解放します。…解放が完了しました。相谷陸疾の技能は『変則』です。―複数の技能のカギを確認しました。これより統合を開始します。…統合が完了しました。》
2つ目の技能を解放することが出来ました。陸疾の2つ目の技能は『変則』です。それから技能のカギが統合されたようです。まあこの先何個まで増えるか不明ですが、そう何個もジャラジャラさせるわけにもいかないので良かったですね。




