第25話 ハイテクなカラクリ箱
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「…それなんの箱なんすか?やけに重そうですけど。」
「そりゃもちろん技能のカギが入ってるのさ。…そうだなここには10個程持ってきたからね、何個か選んでみなよ。」
景計は笑顔でこう言ったのである。言われるがまま陸疾と凛夏は適当に選んでみたのである。凛夏は軽々片手で掴んでいたため見た目ほど重くないのかと片手で持とうとした陸疾は眉間にシワを寄せた。
「…ん?なんだよ陸疾。さっさと持ちなよ。そんな重いもんでもないだろ?」
「いや、…これ片手じゃ無理だ。両手なら持てるが…。」
「はぁ?」
そんなやりとりを声を殺しながら笑って見ている人物がいた。もちろん景計である。
「…あぁ、済まない。それは多分1番重い箱だな。どうせその中には入ってないから別の奴を取るといい。」
「…?これ全部に入ってるわけじゃないんですか?」
「そう、なんなら1つの箱に2個入ってる事もある。八雲くんの箱には多分1個は入ってるんじゃないかな?」
凛夏は言われて手にしていた箱を開けようとした。しかしどこにも開ける場所が見つからなかった。横にボタンらしきものが見えたがそれを押しても何の反応も無い。
「…これどうやって開けるんですか?どう言う風に開くかさっぱり見当もつかないんですけど…。」
「…確かそいつにはボタンがあるはずだよ。それを長押しするんだ。」
言われるがまま10秒ほどボタンを長押しすると突然派手な音と共に凛夏が持つ箱が縦に割れ中が露わになったのである。確かにその中には技能のカギが入っていた。
「…中々面倒な仕掛けですね。これ全部にそんな仕掛けが施されているんですか?」
「もちろん。色んな場所にこの箱は点在してあるがどれも開ける時にはさっきみたいな派手な音が鳴る仕組みになっている。…例えば、こんな風にね。」
言いながら景計は手近な箱を何やら操作し始めた。今度は底のダイアルらしきものを回しているようだ。その箱を開けると派手な音と共に技能のカギが現れた。
「ちなみに相谷くんの選んだ箱は5分間持ち続けると自動で開くよ。閉めるの結構面倒だからその辺に置いておいてね。」
「わかりました。…でもなんでこんな感じで管理してるんですか?厳重のようなそうでも無いような変な感じですけど…。」
陸疾は気になったことを景計に聞いてみたのである。確かにユニークな隠し方ではある気がするがそれが効果的かと言われると首を縦には振りづらい。
「これはあくまで時間稼ぎに過ぎない。この基地に輩が忍び込んできたことは今まで一度もないけれど、初動を面倒にすればするほど相手が動きづらいと思ってね。丈と一緒になって作り上げた独自の警備システムってところかな。…さ技能のカギが2つ用意出来たし君らは解放を試してみてくれ。私もこれをまた片付けて来たらすぐに向かうから。」
こうして陸疾と凛夏の2人は技能を解放するためまた何もないただ広いだけの空間を訪れていた。ただどうやら先客がいるようであった。壁にもたれて座っているその男はやけに大きく背負うのが難しいほどの荷物を横に置いていた。2人の足音に気づいたのか男は立つと2人に近づいて来たのである。
「やぁ、こんなところに来るって事は技能の解放かい?僕はあの時に出る光が好きなんだが見てても良いかな?」
「…どこの誰か知らない人に見せれるものでもないと思うんすけど。…あなたは誰ですか?」
当然の反応である。見知った人ならともかく見たことの無いこの人物にしかも2個目となる技能の解放を見せるわけにはいかなかった。しかしこの反応を男は予想外のようだった。目を丸くしながら口を開いた。
「驚いたな。てっきり色んな人から僕の話を聞いてるもんかと思ってたんだけど…。もしかして君たちは入りたての新入りなのかい?…まあ僕を知らないならその反応も無理は無いか。僕の名前は橋田丈、しがない武器蒐集家だよ。」
名前だけ出てきていた橋田丈が初登場です。この人はガーディアンズの一員ではありますが所持している技能と自身の趣味から基地で中々会うことの出来ないレアな人です。




