第23話 話は食事を取りながら
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景計はそう言うと店の中へ入っていった。2人がそれに続いて入ると中は外観と変わらず高そうな店の内観をしていた。店主らしき人物が見えるようになっているカウンター席がよく見える。陸疾はこう言う時小心者が発動するのである。つまり遠慮がちになり1人だけだと中々お腹いっぱい食べることが出来ないのだ。
「凄いお店…。きっと美味しいものがたくさんあるだろうな。楽しみだな陸疾。」
「あぁ…。楽しみだ。」
「…相変わらず遠慮が勝つのか?私は遠慮しないぞ?」
凛夏がそう言った時店員と話していた景計が2人のもとに戻ってきた。店に入る前と一転してガチガチな陸疾を不思議そうに景計は見ていた。
「なんで相谷くんはこうも緊張してるんだい?…まあ良いか、座席は2階の個室を用意してもらったから2階へ上がろうか。」
「陸疾はいつも高そうなお店に連れて行ってもらうとこんな感じになります。…なので放置で良いですよ。」
「へぇ、なんか面白いね。さ、とにかく2階へ上がろう。」
景計に急かされてようやく陸疾は動き出した。2階には4つほどの個室があり1番奥の個室以外は既に客が入っているようだ。その証拠に入り口には靴が何個か見られる。尤も話し声一つ聞こえないのでやや不気味ではあったが。
景計に続いて1番奥の個室に入ると中は思っているより広々としていた。恐らくあと3人増えたとしても広く快適に過ごせそうな広さである。
「へぇ…案外中は広いんですね。」
「あぁ、この部屋が1番広い部屋になるな。ここに来るときは大抵この部屋を空けてもらってるんだよ。ま、空いてない時もあるけどね。さ、私はここに座るから君らは好きな所に座りな。」
そう言いながら景計が1番奥に座った。言われるがまま2人が手近な所に座るとすぐに店員が入って来てお通しを出してきたのである。陸疾や凛夏にとってお通しが出てくるお店は初めての経験であった。店員は丁寧にお通しをテーブルに置くと注文を聞いてきたのである。まだメニューも見てなかったので陸疾は慌ててメニューを探そうとした…がメニューらしきものは見当たらなかった。
「さて、2人ともアレルギーだとか食べられない食材とかあったりするかい?」
「俺は特に無いっす。」
「私はかぼちゃ以外ならなんでも大丈夫です。」
「OKかぼちゃ以外ね。…この部屋メニューが無いでしょう?常連ならメニュー置かなくても良いだろってアイツが怠けてるのさ。」
にこりと笑って景計はそう言ったのである。隊長の言うアイツとは一体誰なんだろうと思っている内に景計が何点か注文を済ませたようだ。
「さて、料理を待ってる間に詳しく聞こうか。…ええと技能スペースの解放だったっけ?」
「…!こんな誰が聞いてるか分からない部屋でそんな話して良いんすか?」
料理を待ってる間にと景計が持ちかけてきた話は先程報告した2人の成果についてである。個室に入る前に他の客もいることを確認していた陸疾からすれば無用心も良いところだった。それに対して景計はまたにこりと笑った。
「はは、それは心配無いよ。ここの個室は完全防音になってる。こっちが発する音も他の客が発する音もどちらもこの部屋から聞こえることはないのさ。現に他の客の声が一切しないだろう?」
「それちょっと疑問だったんですよね。…ちょっと不気味に感じてました。」
景計の言葉に凛夏が反応を示した。どうやら凛夏も陸疾同様他の客のことを気にかけていたようだがいらぬ心配だったようだ。
「ここはね透の実家なんだよ。だから私も何回も何十回もここに来てる。透や透の家族以外だと私が1番この店の事を知ってるんじゃ無いかな。」
「透さんって言うと…あの透さんですか?」
「そうあの透さん。…ふふ、あのってなんか面白いな。」
陸疾が思わずつけたあのという言葉を景計は気に入ったようだ。料理を食べてすらいないのになぜか満足気な顔をしている。そのことに陸疾が首を傾げそうになったその時突然部屋の扉が開いたのである。びっくりした陸疾が振り向くと先程注文を取りに来た店員がお盆を持っていたのである。どうやら料理が運ばれてくるようだ。舟盛りの刺身や七輪と共に牡蠣やサザエなどが続々とテーブルの上に運ばれその度に2人のテンションが上がって行ったのである。その様子を景計は微笑みながら眺めていたのである。
「さ、腹も減ってるだろう。食べながらでいいからゆっくりと聞かせてくれ。」
「いただきます‼︎いやあ高いお店の焼き牡蠣一度食べてみたかったんすよ!」
最初の頃の緊張はどこへやら陸疾は運ばれてきた料理を次々頬張っていった。その様子に苦笑いを浮かべながらも凛夏もまた料理を楽しんだのである。食べながら2人は技能スペースの解放について出来るだけ詳しく説明していったのである。
私はよく緊張するタイプなのであまり高そうなお店では満足に食べられません。遠慮してるつもりは無いんですがね。




