第21話 アナウンスは空耳?
読んでくださりありがとうございます。
「そうするか。…それじゃあ2個目をやってみよう。“技能のカギを交換する“だな。」
2個目の案は技能のカギを交換することである。技能のカギは使用した後消滅することなく解放者の手元にあるままであり各々好きな場所に仕舞ってあるのである。持っていても何か効果があったわけでは無いが何かあれば大変なのでガーディアンズでは各々で管理するよう景計から指示されていたのだ。
「しかし…変な形状だな、いつ見ても。しかも人によって違うのは面白いよな。」
陸疾のカギは持つ所は割とシンプルな形状ながら、あれば…あるのかは知らないが鍵穴にどう差し込めば良いのかわからない程入り組んだ鍵をしていた。逆に凛夏のカギは持つ所は歯車のような形をしておりやや掴みづらいものの鍵の形自体は至極シンプルであり陸疾のものより一回り大きいのである。
「…まあとにかくやってみようぜ交換。つまり渡して貰えば良いんだろ?…ん?今私カギを陸疾に渡したよな?」
「…あぁ、俺も確かに凛夏に渡した。…これはまた不思議なこともあるもんだな。」
結果として技能のカギの交換は成立しなかったのである。両者の手に渡った瞬間交換されたはずの技能のカギは元の形状をしていたのである。それは何度交換を試しても同じであった。
「…これ普通にカギを渡したらどうなるの?…ちょっと持ってみてよ。」
そう言うと凛夏は持っていた技能のカギを陸疾の左手に押し付けた。すると陸疾の手には2つの同じような形の技能のカギがあったのである。これすなわち技能のカギは物体と言うよりは概念に近いのだろう。手にしたものに応じて技能のカギは形状を変えるのである。
「…これは凄いな。凛夏のカギだったはずなのに形が変わっちゃった。」
「…それだけじゃないかもね。両方見比べて見てよ。なんか微妙に形が違うように私には見えるけど。」
そう言われて陸疾は両方のカギをじっと見比べて見てみた。
なるほど確かに形状が少し違うような気がする。具体的に言えば持つところに描かれている文様が微妙に違うのだ。鍵の部分は正直複雑過ぎるのでこれと言った違いは見出せない。とは言えどこか違う技能のカギであることは間違い無さそうである。
「ちなみにこっちのカギを凛夏に渡すとどうなるんだ?」
陸疾は元々持っていた方の技能のカギを凛夏に渡してみた。すると渡したその瞬間渡した技能のカギは凛夏のものへと変わり持ったままの技能のカギの文様が変わったのである。
「…不思議なものだな。原理が全く分からないや。よく分からないついでに3個目の案をやってみる?」
「そうしようか。確か“技能のカギをどこかしらに一定時間かざす“だっけ?」
それから陸疾たちは10秒から10分くらいの時間を適当に決めて思い思いの場所に技能のカギをかざしてみたのである。なんの手ごたえもないまま約1時間が経過したその時その瞬間は突然訪れたのである。
きっかけは単なる冗談であった。陸疾が技能のカギを普通のカギを使うイメージで前に差し伸べたのである。それを見た凛夏が同じように陸疾の目の前に立ちポーズを真似て技能のカギの先端をくっつけたのである。その行為は何の意味も持たない戯れのはずだったがなぜか陸疾はそこに手ごたえのようなものを感じたのである。
「…ん?待て凛夏そのまま止まって…。」
突然の手ごたえに戸惑った陸疾はひとまず凛夏を静止させようとした。その時凛夏の表情を見ると同じく謎の手ごたえを感じているのか戸惑いと驚きに満ちた顔をしていた。
「…なぁ、これなんかあるんじゃない?」
「…俺もそう感じてたところだ。このままキープするか?」
その問いかけに凛夏は首を横に振った。
「無理。そんなにキープ出来ないよ。出来て1分が限界。くっつけ続けるの大分神経使うんだから。…ねぇ、このままの状態で一回カギを回してみない?」
…回す⁈鍵と同じように使うってことか。
「…やってみよう。何も起こらなくてももう一度くっつけてみたら良いさ。それじゃあ行くよ。…3、2、1。」
2人は技能のカギをくっつけたままカギを回すように90度回転させたのである。…何も起こらない。…なんだ気のせ
《解放条件を満たしました。技能のスペースを解放します。》
ここで言うところの手ごたえというのは例えるなら、知恵の輪があと一ひねりすれば解けそう…のようなものです。おぼろげながら出来そうな感じがするあの感覚です。そしてその感覚は正しかったようで少し進みましたね。




