第20話 プロジェクトは進行中
読んでくださりありがとうございます。
「おい陸疾。どれからやるよ。」
「それだよ。…どれからが良い?」
「…どれからでもあんまり変わらないんだよな。無難に上からやるか。」
「そうするか…。場所はどこでする?」
「…技能を解放したところかなぁ。」
なるほど確かにあそこなら不必要なほどに広いしいろんな事を試せそうだもんな。
「よし、それじゃあ早速行こう。」
…さて、その場所に着いたな。しっかしここには何にもねぇな。結構いろんなものが基地の中にはあるから何にも無いここは無機質で不気味な感じがするぜ。
「早速1個目の案を試そうか。“10メートル以上離れて鍵を投げ渡す“だっけ?」
「そだね。…どっちが投げる?私は鍵を10メートル以上投げるのも取るのも難しい気がするんだけど。」
確かに凛夏の言う通りである。鍵は形状上投げるための形をしていないため10メートルと短めの距離だとしても取りやすい所に投げるのは難しいだろう。もちろん取るのはもっと大変である。
「そうだな…。でも別に直線で投げろって言ってないから山なりに投げたら良いんじゃない?多分取る方が危ないだろうから俺そっちやるわ。」
「おっけ。…って言うかどうせ取ったら投げ返さなきゃいけないのか。投げる方とかどうでもよかったわ。…鍵は何でもいいんでしょ?ならこれでいくよ?」
そう言って凛夏が取り出したのは自転車の鍵であった。やや大きめのキーホルダーが付いているためそっちに狙いを絞れば比較的取りやすそうではある。
「…チャリの鍵?それどっかに行っちゃったら面倒くさくね?」
「大丈夫大丈夫。そもそもこれ昔の鍵だし。たまたまかばんに入ってたんだよ。これなら取りやすいんじゃない?」
「なるほど、それなら良いね。それじゃあやってみますか。」
そう言うと陸疾は目分量で10メートルの距離を取った。たかが10メートルとはいえ中々の距離である。特に小さなものを投げるのは少々危なっかしい。
「準備良いか?投げるぞ!…ほい!」
比較的力を入れているのかやや強ばったフォームで凛夏から投げられた鍵は陸疾の頭上をはるかに超えて地面に不時着した。凛夏は約15メートル程投げたことになる。仕方がないので陸疾は歩いて落ちた鍵を取りに行ったのである。
「加減しろよ。これだと飛ばしすぎだ。」
拾い上げながら凛夏に向き直ると流石にバツが悪そうな顔をしていた。
「悪い悪い。ちょっと加減が難しいな。」
「取れたら結果オーライかもしれないけど次に再現する時に距離があやふやだと困るじゃねぇか。こう言うのは軽く投げるんだよ。…よっと。」
先程の場所に戻って陸疾が軽く山なりに投げた鍵は小さな弧を描き陸疾と凛夏の丁度真ん中くらいの所に落下した。凛夏の顔を見ると笑いを堪えているのかやや口元がひきつっているようだ。
「…ほう、大口叩いた割に少々飛ばなさすぎやしないか?これだと5メートルもないぞ?」
「うるさいな、加減が難しいんだよ。」
「だから言っただろうよ。さっきのあんたのが悪くないなら最初の私も悪くない。…これ会議してた時には比較的簡単そうな感じしたんだけどな。」
「…あぁ、俺もそう思ってた。3日で終わるかな…。」
そんな会話をしながら陸疾たちは加減を覚えながら鍵を投げ合っていた。そして何度かの惜しい状態を経て何の成果も得られないまま約15分が経過したのである。
「…ほい!…あ!」
鍵を投げた凛夏が突然声を上げた。一瞬戸惑った陸疾であったが瞬時に状況を理解して銀色の物体に向かって手を伸ばした。指先をかすめて鍵は地面に落ちていった。陸疾は頭を抱えながら落ちた鍵と分離したキーホルダーを拾い上げた。
「…どうする?壊れちゃったな。」
「…まあそんなに投げられる事を想定してないだろうからいつかは壊れるだろうけどな。代わりのキーホルダーは無いし…。どうする?鍵変える?」
今の今までキーホルダーに狙いを絞っていたため先程鍵だけを追いかけると少し怖さを覚えたのは確かである。自転車の鍵程小さなものがそれなりのスピードで飛んで来るのは陸疾ならまだしも凛夏には結構怖いものだろうというのが陸疾の判断である。
「一旦これは後回しにしよう。別に今日これをしなきゃいけない理由なんて無いさ。帰ったら使えそうな鍵が無いか探してみるよ。」
技能のカギの入手方法からして予想もかなり再現性が低くなってますね。ちなみにカプセル状の何かに入れるとこの作業は格段に楽になります。…まあそれで効果があるのかは分かりませんが。




