第13話 戦闘の果てに
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「陸疾!無事か?」
「悪い、心配かけた。」
「予想が外れたな。貴様の技能は《跳躍》か。そのバネのような瞬間的移動…間違いあるまい。厄介な技能だがタネが割れれば対処は容易い。」
そう言うと拳司は懐から発煙筒を取り出した。恐らくこれが奴の言う合図なのだろう。
「お前のような近距離タイプは遠距離武器で攻めるのが定説だ。…お前はもう1人の存在を気にしていたな。その通り俺には弟がいる。そして我が弟はこの近くで潜伏し狙撃を狙っている。俺の合図一つでそこの女ごとお前をぶちのめすことが出来るのさ。さあどこから飛んでくるか分からぬ弾丸に怯えるが良い!」
ガシャン!
発砲音には聞こえない機械的な音が拳司の後ろで鳴った。振り返った拳司の視界の先には彼の弟が使用していた銃がバラされて落ちていた。
「…何⁉︎何者だ!」
拳司がさらに視界の奥に目をこらすと見覚えのある日本刀をぶら下げた男がゆっくりこちらに近づいて来ていた。
「顔見てもお前覚えて無いでしょう?お前の弟も覚えてなかったもんな。しかし戦闘中に余所見するのはちょっと不注意過ぎやしないかい?」
「!しまっ」
慌てて振り返った拳司の肩口に時遅く既に跳躍により距離をつめきった陸疾の槍が深く深く突き刺さっていたのであった。陸疾のその攻撃は戦意が完全に削がれるに充分すぎる一撃であった。
拳司を拘束した研悟はやれやれと言った様子である。こうしてディメンションズを捕まえる光景は陸疾にとって二度目であり、捕まえた人も捕まえられた人も同じであった。
「お手柄だな、陸疾。前回向こうに引き渡したんだがこうもすぐに襲撃してくるとはね。一度隊長にも相談しねぇとな。」
「…我等は好きで貴様らに襲撃している訳では無い。ひとえに技能のカギを求めているだけだ。」
「悪いけど、今回はすぐに向こうには返さないつもりだから覚悟しておきな。それじゃああとは頼んだよ。」
研悟の言葉でやはり待ち構えていたらしき男たちが拳司を抱えてどこかへ連れ去って行った。その様子を見届けながら研悟がこちらに振り返った。
「…さて、カギを手に入れたのはそこの女の子だね?名前は八雲凛夏さん。…陸疾知り合い?」
「ええと、…幼馴染です。」
「…そう、幼馴染ね。ここで話していても良いんだけどまた別のディメンションズの奴らが来ても面倒だしね。陸疾!基地に案内して差し上げろ。俺は違うルートで基地に向かう。着いたら真っ直ぐ隊長のところへ向かえ。」
「わかりました。」
陸疾がそう答えると研悟はどこかへ歩いて行った。先程拳司を抱えて行った男たちと同じ方向だったため陸疾は後でその別ルートとやらも聞きたくなったのである。
「…ねぇ、話が全く分からんのだけど。…そもそも基地って何?」
至極もっともな質問である。そもそも凛夏はディメンションズはおろかガーディアンズのことも知らないのだ。
「基地ってのはガーディアンズの基地だよ。」
「ガーディアンズ?…そういえばさっき陸疾に倒された奴がそんな事を言っていたような…。ガーディアンズがあんたの味方でディメンションズがあんたの敵っていう認識で良いワケ?」
「…まあ、一言で言うとそうだな。」
「それじゃあわたしはそのガーディアンズの基地ってのについていくよ。」
ー
ガーディアンズ基地
―
ガーディアンズの基地に着いた凛夏は初めて基地に来た時の陸疾と同様の反応をしていた。無理もない古本屋の外観からは想像もつかない程の建物なのだから。
「…へぇ、あんな古本屋からこんな場所に繋がっているなんてね。隠しボタンが霞むくらいの衝撃だわ。」
「あぁ、俺もびっくりしたよ。さ、早く隊長のところに行こう。研悟さんも待ってるはずだ。」
2人が隊長である藍原景計のところへ訪れるとその場所には先客がいたのである。と言っても研悟ではない。楽しそうに談笑する2人のもとへ恐る恐る近づくと知らない男の方が先に陸疾たちに気づいたようだ。
「お、カズ用事があるみたいだぞ。」
「ん?あぁ、相谷くんか。そっちの子は八雲凛夏さんかな。ようこそガーディアンズへ。」
「…なんでわたしの名前知ってるんですか?」
率直な凛夏の質問に男の方が吹き出していた。陸疾も以前同じ質問を研悟にしたものだ。気持ちはわからないでもない。
見事拳司に勝つことが出来ましたね。どうやら弟の瞭司の方は研悟が倒してくれていたようです。さて陸疾は凛夏を連れて基地に行くようですね。隊長である景計の所には先客がいるようですが…。




