第12話 戦闘開始!!
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…今、同時だったような…?凛夏が固まっている…、つまりアナウンスが聞こえたか。やばいなこうなるとは思わなかった。…ああ、確かに落ちているな。あの不思議な形状をしたカギが。っち、こうなるなら電話なんて出るんじゃ無かった。
そう思いながら機械メッセージで料金プランを勧めてくる電話を切った陸疾は何をどうして良いか分からなかった。やがて凛夏が隣に落ちていたカギに気付いた。
「…これがそうなのか?」
「やっぱ聞こえてたか。それが技能のカギだよ。そして昨日俺が言っていた色々ってのはそれだ。」
「…引っ越した件だな。なんで引っ越したんだ?これで引っ越すハメになるとは思いづらいんだが…。」
「武装した大人がそれを狙って乗り込んできたからな。…移動した方が良いんだろうか。」
「…は?武装した大人?そんなおっかないもんがやって来るのか?…おいそれなら早く逃げようぜ。」
そう凛夏が言って立ち上がろうとしたその時、上からコンビニの駐車場に目掛けてガタイの良い男が飛び降りて来た。
「逃がさんよ、貴様らは俺の獲物だ。…前回はガーディアンズに手間取られたからな。幸い今回邪魔は無さそうだ。」
陸疾は飛び降りてきた男に見覚えがあった。そう飛び降りてきた男は技能のカギを手に入れたあの時家に乗り込んできた男なのであった。前回に比べるといかつめのグローブのようなものが装着されているのが分かった。おそらくは彼の技能に関わっているのだろう。
「凛夏を…お前らの好きにはさせん!」
そう言うと陸疾は手袋のボタンを操作した。設定通り大きめの盾と鎧、そして研悟からもらった黒槍梔子が握られていた。
「陸疾!…それは一体なんだ…?」
「悪い凛夏。説明してる余裕は無いんだ。でもお前は俺が守るから安心して欲しい。」
「分かった。」
そう言うと凛夏は陸疾の背後に隠れた。幸い後ろは店の壁であり、前にだけ集中すれば良い環境ではあった。しかし陸疾には一つ気がかりなことがあったのである。
「…ほう、貴様あのカギで解放者になったか。…なんの技能かは知らんがその槍…、中々良さそうだな。貴様を打ちのめす楽しみが増えたぞ。」
「…お前、以前は確か2人だったはずだ。…もう1人はどうした?」
「ほう、もう1人の心配をするとはこの俺もなめられたもんだな。前回思い切り殴られた記憶は無くなっていると見える。…まあすぐに思い出させてやるがな!」
男は素早い動きで陸疾に近づくと連続で殴りかかってきた。後ろに凛夏がいるため無闇に下がれない陸疾はそれらの打撃を盾を上手く使いながら器用に左右に受け流していた。ここまでのレベルなら研悟との模擬戦での経験値で受け流せる範囲である。このままでは膠着状態になると悟った男は一度距離を取るようだ。
「…なるほど、この俺をなめてくる程の実力はあるらしい。…面白いこの佐久間拳司の本気をもって貴様に挑むとしよう。俺の技能は追撃…。自らの攻撃にさらに重ねる事が出来る。従ってこういうことが出来る訳だ。―技能解放―《百ノ追撃》」
佐久間拳司と名乗ったその男が繰り出してきた右の拳を盾で陸疾はいなした。しかしそれは最初の攻撃だけであり追撃でやって来た衝撃により盾もろとも陸疾は吹き飛ばされたのである。
「…他愛無い。なんの技能かは知らんが恐らくは防御に特化したただのボンクラだ。それしきの盾で俺の追撃を防げる訳が無いのだ。…さて、さっさと技能のカギを渡してもらおう。抵抗するなら先程の追撃を受けてもらおう。生身でどれくらい耐えられるか知らんがな。」
凛夏に目掛けて再び拳司が右の拳を構えた。凛夏に残された道はもはや一つしか無いように思われた。しかし凛夏は真っ直ぐに拳司の顔を見据えていた。
「…ほう、この期に及んで俺を睨みつけるとは見上げた根性。…カギさえ渡せば見逃してやるぞ?俺も無抵抗の女を殴る趣味はねぇ。」
「…睨みつけている理由はあんたがあいつの敵だからよ。他に理由があるかしら?そして同じ理由であんたに渡すものは何も無い。」
「残念だ。…では容赦は…!」
拳司が再び右拳を構えたその時視界の端で槍を構える陸疾が見えたのである。距離からして無視して良いと思ったが陸疾が《跳躍》により不意に距離をつめてきたので慌てて後ろに下がりその突撃を避けたのであった。
佐久間拳司
技能:追撃 武器:ナックルダスター
ディメンションズのメンバーの1人。同じくディメンションズに所属する弟瞭司と多く行動を共にする。




