第11話 落としたカギ
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夏休みであるが故に特に起床時間も決めず起きたら起きるというぐうたら生活を陸疾は過ごしていた。疲れもあってか陸疾は昼前までぐっすり寝ていたのである。
…ふぅ、よく寝たよく寝た。…お、11:34か。…もうすぐ昼だな。特に食材も買って無いし近くのコンビニにでも行ってくるかな。…お?電話だ。…凛夏からか、なんだろ。
「もしもし。」
「お、陸疾。…お前今まで寝てたのか?声が起きてねぇぞ?」
「…夏休みだからな。特に起きる時間とか決めずに寝ちまった。」
「そうかそりゃ起こして悪かったな笑まあ良いや、…こっちは暇なんだよ。」
「おう、俺も…暇っちゃ暇だ。」
「なんだよ今の間はよ。」
「あぁ、…昨日片付けずに寝ちまったからまだ段ボールが山積みなんだよな。」
「へぇ、…つまり暇だな。暑いからさ冷麺でも食おうぜ。」
「冷麺か…。良いよ行こうか。」
「よし来た!それじゃあ10分後に駅前な。」
「りょーかい。」
…さて、それじゃあ駅に向かいますか。カバンとかは特にいらないかな。鍵とか財布とか適当にポケットに突っ込んで…と。あいつの言う駅前って言うとあそこだな。…お?もうこんな時間か、走って行かないと間に合わないや。
陸疾がやや小走りで待ち合わせ場所に向かったのだが少し間に合わなかったようだ。既に凛夏が時計を見ながら近くの壁にもたれかかっていた。走って近づいてくる陸疾に気づいた凛夏は携帯の画面から顔を上げると首をすくめてみせた。
「遅いぞ!女子を待たせるとは何事かね?」
「悪い悪い。引っ越した分まだ時間がどれくらいかかるか予想しにくいんだよ。間に合うと思ったんだけどね。」
「まあ良いや、とにかく店に入ろう。こう暑いんじゃ何も考えられない。私が行こうとしていたのはそこだ。」
凛夏が指を指したのはどうやら駅ビルらしい。確か先月中華屋がオープンしていたはすだ。冷麺が食べたいと言っていたから多分そこだろうと陸疾は思っていた。予想通りオープンしたばかりの店に凛夏は入って行った。予想が当たったなと思いつつ店の雰囲気を眺めてから陸疾も後に続いた。駅ビルの中にあるその店は中に入ると冷房の心地良い風が入ってくる陸疾を出迎えているかのようであった。
「あ、やっと来た。2名でお願いします。」
「かしこまりました。それでは奥の席へどうぞ。」
2人は案内された席に座るとメニューを広げた。
「冷麺って言ってたけど冷麺を食うにはちょっと涼しすぎるんじゃねぇの?」
陸疾にそう尋ねられた凛夏はやや渋い顔である。
「…そうなんだよなぁ。今日は暑いから冷麺は美味いに違いないって思ってたんだけど…。ちょっと寒いなぁ。」
「俺は別にそこまで冷麺が食べたい!って言う気分でもないからな。味噌ラーメンでも食うかな。」
「…味噌ラーメンね、それも良いや。…迷うなぁ。」
散々迷った挙句凛夏は冷麺を頼んだのである。しかし冷房が効いた店内での冷麺はやはり相当冷えるようで食べ終わる頃には凛夏は少し寒そうであった。
「おぉ…、外があったかい。」
「今そんな事を言っているのはお前だけだ。俺は普通に暑い。」
「やっぱさこの季節は冷麺とか冷たい物を冷房が効いた部屋で食うのが良いんだよ。…あ、そうだコンビニ寄って良いか?」
「良いけど…、何買うの?」
「冷麺食ったらちょっとコーヒーが飲みたくなってきたからさ。」
「なるほどね、そりゃ良いや。」
そんな会話をしながら2人は歩いて近くのコンビニへ向かっていた。陸疾はアイスコーヒーを凛夏はアイスラテを買うと店先で飲もうと凛夏が言い出した。どうやら少し疲れたようで店先に座りながら凛夏はアイスラテを飲んでいた。その左横で壁にもたれながらアイスコーヒーを飲んでいた陸疾の携帯が鳴った。どうやら誰かから電話がかかってきたようだ。電話がかかってくるとは思っていなかった陸疾は勢いよく携帯をポケットから出した。その時一緒に入っていたものが携帯と一緒に出てしまいそのまま宙を舞った。
丁度その物体は座っていた凛夏の手の近くへ落ちていったのである。陸疾がポケットに入れていたのは3つ。裏ポケットに財布そして右ポケットに携帯と鍵であった。流れるように凛夏は陸疾のポケットから落ちた鍵を拾った。…地面に落ちるのと同時に。
《技能のカギの入手条件を満たしました。》
偶然というのは奇妙なものですね。




