神様、修行の旅へ。
朝食を一緒に食べ終えて、クロさんが身支度すると皆で水神殿の間に行く。
クロさんは、水神殿の間まで何も言わず手を繋いで歩く。
見上げるとまっすぐ前を見ている横顔に、格好いいなぁ・・と思ってしまう。いや・・、さっきあんな事言われちゃったし・・余計にそう感じてしまうのかな?顔が赤いのバレてないといいな・・。
水神殿の間の扉を開けると、プールの中がキラキラと白い光を放っていて神殿中が光で一杯だ。
「え?水面が光ってる・・?」
「ノアルだ」
クロさんがそう言うと、光はキラキラと中心に集まって大きな塊になると、パッと弾けて、その中からノアルさんとリリ君が出てきた!おお、すごい!!
ノアルさんは、今朝もバチコーン!と音のしそうなウインクをする。
「おっはよ〜!たえちゃん元気〜?」
「あ、はい、おはようございます」
すごい。今日も何というか派手派手だ・・。ノアルさんの横からぴょこっとリリ君が出てきて、プールから飛び出して私の前にジャンプしてきた。ひゃあ!!!
「たえさ〜ん!!今日からお世話になります!!」
「あ、はい!こちらこそよろしくお願いします」
リリ君は、ニコニコ笑ってトト君も嬉しそうにリリ君を見る。うんうん、この二人・・可愛いな。クロさんは、じろっと睨んでるけど・・。
「んじゃ、クロ行くぞ〜!早く帰りたいだろ」
「・・・わかってる・・」
あ、クロさんが行っちゃう・・、そう思って顔を見上げるとクロさんは、私の握った手をそっと離すと、プールへ歩いて行こうとする。私は、離された手を見てからクロさんを見る。笑顔・・、笑顔で送るぞ!そう思って、泣きそうだけど頑張って笑って、
「行ってらっしゃい」
そう言ったら、クロさんはちょっと私をじっと見つめて・・側に来ると
尻尾が手首をぎゅっと引っ張って前に倒れそうになる。
「わわ・・!!」
クロさんが、体をキャッチした途端キスするので目を丸くする。
え・・・
ひ、人前ですが!!!
後ろでノアルさんは口笛を吹いてるのが見えて、カッと顔が熱くなるけど・・、クロさんはぎゅっと抱きしめてキスするから、どうにもできなくて目を瞑ってしまう。む、無理〜〜〜!!!
体がガチガチに固まっている私を、そっと離すと頭をクロさんの大きな手が撫でる。
「・・・・行ってくる」
クロさんの目元もちょっと赤いけど、私の比じゃないと思う。
多分、いや絶対ゆでだこだと思う・・・。トト君とリリ君が、なんかニマニマして見てるし・・、うう、恥ずかしすぎる。
ノアルさんが、クロさんを突いてニヤニヤしてるし・・。
クロさんを見るのが難しいじゃないですか・・・。
ノアルさんは、クロさんの肩に手を置いて私を見ると、手を振って
「じゃあ、申し訳ないけどクロ連れてくね〜!ちょっと行ってきま〜す」
「は、はい・・行ってらっしゃい!」
真っ赤な顔だろうけど、頑張って言ったよ・・。
クロさんは、ちょっと照れ臭そうに小さく手を振ってくれた。
そうして、足元から眩しい光が照らすと、一瞬で消えてしまった・・。
呆然としつつ、誰もいなくなってしまった水神殿のプールの水面を見つめていると、トト君とリリ君が、私の側に来て腰にぎゅっと抱きつく。
「すぐ帰って来ますよ?」
「僕たち、ついてますからね!」
心配そうに見上げてくれる・・。皆、優しいなぁ・・嬉しくなって私は二人をぎゅっと抱きしめた。
「・・・・うん、ありがとう」
夜に話をしてみよう・・、そう思って花の栞が入っているバッグをちらりと見た。
・・でも、何を話そうかな。ちょっと考えてしまう。
ボス・・、どんな事にご興味があるんだろう。
・・・話題が思いつかないので、トト君とリリ君に相談してみよう・・そう思った。




