神様に送る気持ち。
クロさんの修業行きは決定らしい。
その間の水神殿の管理は、リリ君、トト君にノアルさんが一時的に力を貸して、穢れを清められるようにするらしい。
トト君が準備してくれたお茶を飲みつつ、サクサクと決まっていく事態に目が白黒しそうだ・・。す、スピーディーだな・・神様の世界・・。
「ごめんね〜、クロ!」
「・・・・思ってねぇだろ・・」
じろっとお茶を飲みつつ、ノアルさんを睨む。
修業って何をするのかな?大変なのかな??ノアルさんと、クロさんを交互に見るけど、クロさんはノアルさんを睨むばかりだ。明日の朝、リリ君をノアルさんが送りがてら、クロさんを迎えに来る事に決まるとノアルさんは、あっさり帰って行った。
忙しそうだなぁ・・・・神様って。
夕食をトト君とクロさん、私で一緒に食べる。
せっかく一緒に帰ってきたのになぁ・・と、遠くから見ようと思っていた割に寂しく感じてしまう。・・言えないけど。
トト君はリリ君が来るので、嬉しそうだ。
そうだよね〜、あの少年二人で遊ぶ姿は癒される・・。寂しいけど、私も何か神殿のために頑張ろう。
そうして部屋へ戻って、お風呂から出てくると、
クロさんがベッドに腰掛けてた。
あれ・・??
「あ、れ・・クロさん・・」
「来ないから、来た」
「あ、はい・・・?」
あれ?そんな感じになるんですね??
クロさんは、ツカツカと私の前に来ると、ひょいっと抱き上げるとそのままクローゼットの方へ歩いていく。
「ええ?あの、クロさん??!私、そっちへ行くとか言ってないんですが・・」
「そうだな」
長い足は、クローゼットを通って、クロさんの部屋まであっという間に着いてしまう。な、なんてこったい!
「あ、の・・部屋、部屋に戻り・・」
「今日はダメだ」
問答無用すぎです、ボス!!!
ベッドで、何もしないですよね???無理ですよ??いや何が無理かって言われたら答えませんけど!!すでに真っ赤になった顔の私を、そっとベッドに置くとクロさんもベッドに乗り上げると、ぎゅっと抱きしめてそのまま横に倒れた。
ひゃああああああ???!!!
真っ赤な顔で、クロさんの顔をロクに見られない。
と、クロさんから匂いがふわっと香ってきた。あ、私のあげた香草のだ・・。
「・・・たえ」
「・・・・はい?」
クロさんに呼ばれて、顔を見上げると、鼻と鼻をくっつけるくらいにクロさんの顔が近付く。喉がごくっと鳴って、緑の目を見てしまうと、ドキドキが止まらない。
クロさんが、私の片手をそっと持ち上げると、指先にチュッと音を立ててキスする。
「く、クロさ・・」
無理なんですけど・・、もう心臓もちません・・。
クロさんは私を見つめる。
「すぐ帰る」
「・・・・はい」
ちょっと切なそうに見るから、ドキドキするけど切なくもなる。
クロさんが本当に愛おしそうに見てくるから・・、ノアルさんを睨んでいたような目と全然違うなぁなんて思ってしまう。ぎゅっと抱きしめて、そのまま頭を撫でる。
大きな手にふと、大神様が襲ってきた日の朝の事を思い出した。
「・・クロさん、スミさんのお祭りの日の朝、来ました・・?」
クロさんは、ちょっと目を丸くして柔らかく笑った。
「・・最後かと思ってたから・・」
「最後・・・・」
そうだ・・、私を帰そうとしていたんだ。
この優しい人は、朝・・一体どんな気持ちで私の頭を撫でたんだろ・・。辛かった・・?私だったら辛いな、悲しいな・・。それでも、どこまでも心配してくれたんだ。じわっと涙が出てきた。
クロさんの胸に顔を埋めてみた。
「・・た、え・・・」
「・・・・寂しいですけど、待ってます」
「ああ」
「・・・・好きです」
ぎゅっと、クロさんは答えるように抱きしめてくれた。
私も抱きしめると、クロさんが頭にキスしてきた。見上げるとクシャッと笑う顔が見えた。ああ、好きだなぁ・・この優しい神様・・、大好きだなぁ・・そう思って気持ちが伝わるようにキスしてみた。




