神様、修行へ。
昼食を食べ終わったら、花の冠を作りに花畑に行く事にした。
トト君には、ゆっくりして下さい!って言われたけど・・・、何かしないと気が済まないというか・・。
ついでに、香草油の為に花も摘んで洗って干しておく。
・・うん、体を動かしている方が、気が紛れる。
昨日の夜の事を思い出すと、照れ臭いし・・。
ああ、これからどう顔を合わせていけばいいんだ・・。さっきのご飯の時だって味がしないし、恥ずかしいし・・好きだって、両思い?とわかっても、こんなに照れくさくて堪らないんなんて聞いてないんだけど・・。
「・・・・うう、どうしたらいいんだ・・」
花の冠を作りつつ、悩む。
・・あれかな、慣れるまでちょっと距離を置いて、遠くから眺めておくとか?そうすれば、見るだけでドキドキしちゃうのには有効かもしれない。
肩に掛けたバッグの中の、花の栞を取り出して見る。
まだ何枚か残っていて、「姿を隠す」の栞はある。
・・・こんな事に使っていいんだろうか・・、ふと冷静になるけれど。
今、クロさんに会うのは大変心臓がまずい。でも、これどうやって使うんだろ・・、私に投げるのか、クロさんに投げるのか・・どっちがいいんだろ?
栞を真剣に見つめていると、ククが草むらから出てきた。
「あ、ククだ〜〜〜!!!久しぶり〜〜〜!!」
クロさんとも通じている事を、丸っと忘れて思わず声を掛けてしまった・・。ま、ククなら・・大丈夫。近寄ってきたククの頭を撫でるとうっとりした顔をする。可愛いなぁ〜・・猫、可愛い!あ、でもリリ君も小鳥さんになった時、可愛かったな。
そんな事を思いつつ、ククを撫でていると、空にチカチカ光るものが見えた。
「・・・あ、誰か来たのかな?」
私がククに話しかけると、ククはじっと空を見たかと思うと急にクロさんに変わった。ぎゃあ!!!心臓に悪い!!ドキドキするのに!!びっくりして、隣に座ったクロさんを見ると、ちょっと空を睨むように見ている。
「・・・・・ノアルの野郎だ」
「あ、ノアルさんですか・・。お迎えに行きますか?」
じろっと私を見ると、ビクッとする。
ほ、本当に穏便な感じでお願いします〜〜。
「・・一緒に」
「は、はい・・・」
立ち上がろうとすると、クロさんがぎゅっと尻尾で手首を掴んで、クロさんの膝の上に転げ落ちた。
瞬間に、キスされた。
「・・!!!」
ぺろっと、唇を舐めるとクシャっとした顔で私を見下ろす。
「行くぞ」
「・・・・・・・・・・・・はい」
ものすっごい小さい声で返事しましたよ・・。
ううう、神様・・、本当に勘弁して下さい。
クロさんは、私の体を起こしてくれると手を繋いで水神殿の間まで一緒に歩いて行く。ちらっと横顔を見ると、上機嫌ですね〜・・、尻尾がゆらゆらしてますね〜・・・、照れますね・・。
扉を開けてくれて、先に入ると水神殿の間の真ん中でノアルさんがこちらに向かって、手を振る。
「ヤッホ〜!昨日ぶり!どう?ちょっと休めた?たえちゃん?」
「あ、ありがとうございます・・。お陰様で・・」
「うんうん、良かった〜」
ニコニコ笑いながら、私たちの方へ歩いてくるノアルさんに、クロさんはじとっと睨みつける。
「・・・・それで、何だよ?」
ノアルさんは、ニコニコしながらクロさんを見る。
「僕さ〜、上司になっちゃったでしょ?次の若手の神の育成もしないとだから、クロ明日から修業して来てよ。一ヶ月くらいだし、すぐ終わるよ!」
「・・・なっ!!」
修業???帰って来たばかりで???
思わずクロさんとノアルさんを交互に見る。
ノアルさんは、私と目が合うとバチコーンと音がするようなウインクをしたら、クロさんに目を塞がれた。あ、はい。




