一般人、休む。
スミさんが案内してくれたのは、スミさんの神殿だった。
え?あそこ神殿じゃないの??
ただの転移場所だったの??と、頭が疑問だらけになっていると、スミさんはにっこり笑って、
「あそこはね〜、転移場所なんだけど・・私の趣味部屋なの!」
「趣味・・・」
それにしては、スケール大きいな・・。
スミさんの神殿は、真上がガラス張りの円形のドームになっていて、両面の壁はステンドグラスで飾られている。
「うわぁ・・・、すごい・・素敵ですね」
「うふふ〜嬉しいわぁ〜」
扉を閉めると、スミさんは私の頭の上に手を置いて淡い光で包む。
「これで、万が一あの馬鹿が入って来ても見つからないからね!あ、でも声を出しちゃダメよ!見つかっちゃうから」
「は、はい・・・」
刻々と頷くとスミさんは、にっこり微笑む。
「本当はお部屋へ通したいんだけど、守りが弱くなっちゃうから、今日はここで休んでね」
「え、でも・・クロさん・・・」
「大丈夫、あの3人だって結構強いのよ?今は、ちゃんと休みなさいね」
「・・・・・・はい・・・」
スミさんは頷くと、手の平を壁の方へ淡く光らせると三角のテントが出て来て、その中にハンモックがぶら下がっていた。
「可愛いでしょう〜!ハンモック!!」
「は、はぁ・・・」
「スミ様、落ち着いてください・・・」
「落ち着いてるわよう!ここの布を垂らせば、見えないから・・ゆっくり休んで!リリ君、頼むわね」
「はい!」
リリ君は、クルッと一回転するとハンモックの横にちょこんと止まる。
あ、可愛い・・・・。
こんな大変な時なのに、キュンとしてしまった・・。
スミさんは、そんな私を察したのか頭を撫でてふわりと笑ってくれた。
「ずっと気を張り詰めてても、ダメなのよ〜。そうやって笑ったり、楽しむ気持ちを大事にするの。笑っても、泣いても、状況が変わらない時は、特にね」
「スミさん・・・」
また泣きそうになるけど、ぐっと堪えた。
そうだ・・状況は変わらないなら、ちょっとでも笑顔でいよう・・、そう思って笑ったけど・・泣き笑いになっちゃった。スミさんは、静かに頷いてハンモックの場所まで連れて行ってくれたので、私は横になった。
「・・大丈夫、今日は安心して寝てね」
「はい・・・」
スミさんが、三角のテントの布をおろしてくれると、真っ暗になった。
・・ひとまず寝よう・・、明日・・クロさんに会えたらいいな・・そう思って目を瞑った。
次の日の朝、うっすらテントの中に光が差し込んでくる気配に目を覚ます。
「・・・・朝・・」
ぽつっと呟いて枕元に小鳥のリリ君が、こちらを見ている事に気付いた。
「リリ君、守ってくれてありがとう・・」
リリ君はチョンチョンとジャンプしながらやってくると、頬にスリスリと頭を撫で付けてきた。あ、可愛い・・・。私は、フニャッと力の抜けた笑顔でリリ君をそっと指先で胸の辺りを撫でてみた。
と、たたっと足音が聞こえたので、体をそっと起こしてテントを開けると、トト君が立っている!!
「っ・・トト君!!!」
「たえさ〜〜〜ん!!!!」
走り寄って、抱きしめるとトト君の体に傷がいくつもあった。
「トト君・・、傷・・、これ・・」
「はい!!名誉の負傷です!!」
「名誉って・・・」
涙がまた出てきて、トト君をまたぎゅっと抱きしめた。
トト君は嬉しそうにぎゅっと腰に腕を回して笑っていたけど、悔しくて・・涙が止まらない。
「トト君、クロさん・・は・・」
トト君は、ハッとして私の顔を見上げる。
え、なにがあったの??
「・・・クロ様は、大神様に刃向かった罪で、スミ様の祭りまで水神殿で謹慎です・・」
謹慎?!
なんで??!びっくりして言葉が出なかった・・・。




