一般人、逃げ切る?
綺麗な顔を歪めて笑うと、こんなに怖いんだ・・。
どこか頭の奥で思ったけど・・、そんなこと考えてる場合じゃない!
さっと、バッグから栞を出すと、大神様に投げつけた。
バシン!!!
と、音がして大神様が一瞬怯んだ隙に、階段を駆け下りる。
水神殿の間をとりあえず出て、外廊下から庭園へ行こう!階段を一気に飛び降りて、扉へ向かおうとすると、目の前に大神様が降りてきた。
「何?面白いもの、作ったんだね?一瞬だけど・・」
大神様が手を伸ばしてきたので、すかさずバッグから、もう一枚出してすぐに投げた。
バチン!!!
「いった〜い」
大神様の手が一瞬、焦げた匂いがしたけど面白そうに笑うだけだ。
くそ〜〜!!めっちゃ余裕だし!!バッグの中の栞を確認しながら、少しでも距離を取ろうと走って逃げる。え〜〜と、弾くのと、触れないようにするのは使ったし、姿を隠す・・は、いま効果あるのかな?
ふと、金色の羽に指が触れて、ハンカチから出す。
こ、これの使い方聞いておけば良かった〜〜〜!!!
手に持ちつつ、大神様がこちらにふわっと飛んでくる。ニコニコ笑ってるけど、目の奥が怖い。言い知れない怖さに、ゾワゾワする。
逃げようとするけど、どんどん近くに来る〜!!!
手が、私の襟首を掴みそうになって、叫ぶ。
「く、クロさぁああん!!!!」
瞬間、タトゥーの入った腕の中にいてぎゅっと抱きしめられた。
え、と思う間もなく水が体を包んだ。
転移するっと思って目を瞑ると、水にバシャンと一人落ちた。
あ、あれ・・??
顔を上げると、ここ・・どこだ?
ガラス張りの円形ドームの中にいる。あ、ここって・・・そう思っていると、ドアが開いてノアルさんが飛び込んできた。
「たえちゃん!?大丈夫??」
「く、クロさんが・・、今、大神様が神殿に・・」
頭が混乱してる。
クロさんが、直前に助けてくれたのは分かったけど、何で私一人・・??!チッとノアルさんが舌打ちする。
「とにかくたえちゃんを守って欲しいって事か・・リリ!!」
ノアルさんが私をプールから引き揚げて、リリ君を呼ぶと転移してきたのかすぐに現れた。
「心得ております!」
「頼む、ティナを連れて水神殿へ行ってくる。たえは、スミの神殿へ」
「え?!そんな・・・!!」
「クロは、俺達が守る。安心してくれ」
ノアルさんが真剣な目でそう言うと、すぐに転移した。
それを見たリリ君も、さっと私に寄り添うと、何かを言う間もなく、転移した。
バシャン
水音がして、目を開けると、まるで森の中にいるような場所だった。
神殿の中に森があるような・・、湖の上にはいくつも小島があって、上を見ると、滝が流れているけれど奥には祭壇のような場所がある。
「たえさん、大丈夫?怪我は?」
声がする方を振り返ると、後ろにスミさんが心配そうに立っていた。
「け、怪我は・・なかったんです、けど、クロさんが・・・」
「・・予想はしていたから、大丈夫。怖かったわね?」
スミさんが、そっと抱きしめてくれたら涙がボロボロ出てきた。
何とかしようと思ったのに、何も出来なかった・・・、怖くて・・、逃げるだけしか出来なかった・・。
「うぅ〜〜・・・、クロさん・・助けてくれて、何も出来なくて・・」
「ちゃんと逃げられたんだから、十分よ」
リリさんは、そっと頭を撫でてくれた。
「ひとまず、ここも危険だから安全な場所へ行きましょうね」
「・・・・はい」
目をゴシゴシ擦って、何とか涙を止めようとした。
スミさんは、私の手をそっと繋いでにっこり微笑む。
「お姫様を守る王子様って、素敵よね〜!」
「・・・・は、え・・・・・?」
リリ君は、はぁっと大きなため息をつきながら、スミさんに向かって遠い目をしつつ・・。
「今は、スミ様の趣味に付き合ってられません・・・」
そうポツリと話した。




