一般人、慌てるばかり。
スミさんの所のお祭りは、一週間後らしい・・。
夕食をトト君と、クロさんと一緒に食べながらトト君が説明してくれた。
トト君は、もぐもぐとお肉を食べつつ、
「今年は、大神様がこの世界の神となられた事を祝う年なんで、どーーーーーしてもお祭りしなきゃいけないんですよねぇ・・。たえさんが来る前に、クロ様の神殿でのお祭り・・、終わっていて本当に良かったです!」
「へぇ〜、そんな風に決まってるんだ・・。そのお祭りって何年周期なの?」
「百年に一度ですね」
「ワー、スゴイ、タイミング・・」
百年に一度のタイミングで来ちゃうとは・・。
「他にもお祭りはあるの?」
「いえ、スミ様で終わりです。太陽の大神様と月のスミ様は対になってますので」
「つい・・?」
「同じくらいの立場ですね」
「ああ・・・、だから大神様の神殿に来られたのかな・・?」
「そうだ」
クロさんが静かに言った。
「・・あいつは、神格が上だから・・。こっちには来れても、あっちへは許しがなければ入れない・・」
ゾッとした・・。
じゃあ、捕まったらどうにもできないじゃないか・・。
スミさんがいい人でよかった〜〜。
「・・だから留守中、気をつけろよ」
「は、はい!!」
トト君は、フォークでお肉をブスッと勢いよく刺す。
「も〜〜〜〜!!!スミ様が大神様に選ばれれば良かったのに!!!高位の神様はなんであっちを選んだんでしょう!」
「と、トト君・・落ち着いて」
クロさんは、お茶を飲みつつ・・、
「そればっかりは神しか知らん」
「・・・神様なのに、神様がさらにいるんですね・・」
「まぁ、俺達は下っ端みてぇなもんだ」
神様なのに、下っ端・・・。
思わず笑ってしまった・・、こんなオラオラ系なのに・・、ムキムキなのに・・・。むしろボス感満載なのに。トト君は、笑った私を見て、
「ええ〜〜、たえさん笑う所でした?」
「ごめん・・、なんか下っ端なクロさんが想像できなくて・・」
「・・るせぇ」
ちょっと拗ねた顔をするクロさんを、トト君と見て笑ってしまう。
うん、こんな穏やかな時間が続けばいいのにね。
部屋に戻って、ベッドに横になってバッグから金色の羽と栞を取り出してじっとみる。護符ってどう使うかわからないし、これの使い方・・、聞いておかないとだな・・。
ゴロッと仰向けになって、天蓋ベッドの天井を見ると、草花の絵柄が見える。横に太陽と月、星の絵柄もあって・・、大神様を思い出してため息が出る。
諦めてない・・って、なんで私を狙うんだ。クロさんの事が気に入らないらしいけど・・、だからって、人を傷つけるのはどうかと思う。神様の上に更に神様がいるなら、なんで放っておくんだろう。私だったら注意するけどなぁ・・・
悶々と考えていると、気落ちしちゃう・・。
「・・とりあえず、お風呂入っちゃおう!」
ガバッとベッドから起き上がって、お風呂に入る。
・・癒される。しかし、このいつの間にか浮かんでくる花って、どうなってるんだろう・・。お湯を抜くと、花も消える事をこの間知って、私はお風呂の底を三度見したからね。
バスタオルで、体を拭いて気付いた・・。
しまった・・、着替えを忘れた・・。
あの、絶対近付きたくないクローゼットに置きっ放しだ・・。
「・・・ダッシュで行って、ダッシュで戻ろう・・」
洗面所の扉をそっと開けて、キョロキョロと周囲を伺う。
よし!誰もいない・・!!
そっと周囲を警戒しつつ、クローゼットの扉をそっと開けて誰もいないのを確認した。ホッと息を吐いて、手前にあったワンピースをさっと取って急いで洗面所に戻ろうとして、ふとベッドを見るとクロさんが座ってこっちを見てた。
ベッドに座ってクロさんが見てた。
え?
どゆこと?
ニヤニヤしてるクロさん、なんでいるの???
「手伝ってやろうか?」
声にならない叫びを上げて、洗面所へ走った。
鍵!!鍵〜〜〜〜!!!!!
扉の向こうで笑う声が聞こえたけど、出ていける気が全くしなかった・・・。




