一般人、対策してみる。
サコッシュみたいなバックをトト君が用意してくれて、早速金色の羽を白いハンカチに包んでしまっておいた。
トト君はそれを見て満足して頂けた。
お昼は・・、流石に入らなくて、少しだけ食べるとクロさんに怪訝な顔をされた。
「・・大丈夫か?」
「あ、さっきリリ君と、トト君とお菓子をたらふく食べてしまって・・」
「・・ああ」
説明したら、安心して頂けたようだ。
心配ばっかりかけちゃって、すみません・・。
「午後はどうする?」
「花の冠を作ろうかなって思ってます」
・・・何か手を動かしていた方が、安心するし。ついでにクロさんの神殿をトト君同様、助けたいし。
クロさんは、ちょっと頬杖をついて考え込むと、私をじっと見る。な、なんでしょうか?
「・・無理すんなよ」
ボソッとつぶやいてくれた一言が嬉しくて、思わず笑ってしまう。ありがたいなぁ・・、優しいな。笑いつつ頷くと、ちょっと照れ臭そうに横を向く。うん、ボス・・優しいです。
「とはいえなぁ・・・・・」
まったくケンカの経験もなければ、魔法も使えない。
花の冠を編みつつ、何か自分でも防げたり逃げたりできればいいんだけど・・と、悶々と考えながら作っていく。クロさんみたいにムキムキだったら、パンチの一つでもして撃退できそうだけど・・。
うーん、まったく想像できない・・。
ムキムキの自分・・、ちょっと面白いけど完全ギャグだ。
考え込んでいると、クロさんがこちらへ歩いてきた。
あれ、今日はお仕事じゃないのかな・・。
「百面相してたぞ」
「・・・え、そうでしたか?」
慌てて顔を抑えると、クロさんは可笑しそうに笑う。
「・・色々考えちまうのは、わかっけどな・・」
クロさん・・さすが神様です、ええ、その通りです。色々考えちゃってます・・。クロさんは、一本花を摘むと私に渡す。
「栞にしておけ、あとで魔法を込める」
「魔法・・・?」
「護符にしとく」
「護符!!か、かっこいい!!」
思わず言うと、クロさんはまた可笑しそうに笑った。
「とりあえず、出来る事やっておけば安心だろ」
「あ、はい・・・」
全部お見通しでしたね・・。私は、クロさんの摘んでくれた花を見ながら・・、
「クロさんみたく、ムキムキだったらなぁ・・」
と、呟くと、クロさんが思いっきり吹き出した。あ、真剣に考えてたのに!!!クックと笑いながら私を見て、また笑い出した。失礼な!!
「・・・クロさん、失礼ですよ!私、真剣に悩んでるのに」
シュシュっと、こうパンチをする真似をすると、クロさんは面白そうに私の手を掴んで、そっと握る。
「・・・そういう事はしなくていい」
「え、でも・・」
「そういうのは、俺の役目だ」
・・・見える、見えるぞ、コテンパンにのしちゃえそうなクロさん。
クロさんならイメージ出来るんだけどな・・。
「次はない」
「・・・クロさんが言うと、怖いです・・」
「守りたいんだ、当たり前だろ」
私の手をそっとキスして緑の目がじっと見つめてくる。
瞬間、真っ赤になって気付く。ハッ!!そうでした!二人きりでしたね!!甘いモードでしたね!!
「ええと、大変よくわかりましたので・・その、手を離して頂けると大変助かるのですが・・」
「嫌だ」
「・・・死にますけど」
「神の前で」
「神の前ですけど」
クロさんはニヤニヤしながら手をそっと離してくれて、ホッとする。
「長生きしろよ」
「・・・・手加減して頂かないと、無理だと思います」
獲物を狙うような目つきで、こちらを見ているクロさんの言動は、大分チグハグだと思う。そろっと、クロさんの手が動き出すのを見て、私は逃げた。
100m20秒という鈍足はあっという間に捕まった・・。
ぎゅうぎゅうに抱きしめられて、結局死にかけたのは言うまでもない・・・。




