一般人、溶ける。
ノアルさんの所から転移して、無事水神殿の間へつく。
はぁ・・と、思わず息を吐いた。
クロさんは無言のまま、プールから私を横抱きしたまま出て行く。
と、サンルームの方の扉から、トト君が駆け寄ってくる。
「たえさん!!クロ様!!!」
「トト君!」
心配そうに駆け寄ってくるトト君を見ると、クロさんが私が持っていた袋を取って、トト君に渡す。
「ひとまず休ませる」
「はい、お疲れ様です」
「え、じゃあ下ります・・」
そう言うと、クロさんがじろっと私を見る。あ、はい・・そのままで。
クロさんは私を横抱きしたまま、ズンズンと進んで行く。外廊下から、サンルームのある部屋へ行き、私の部屋のドアの前を通過する。・・・え?あれ?部屋はあっちですが・・。
一番奥のドアを、器用にクロさんは開けるとそのまま部屋へ入って行く。
「え?え?」
落ち着いた紺色の壁に絨毯が敷き詰められた部屋に、大きな天蓋付きのベッドがある。
・・ここ、もしかしてクロさんの部屋?
キョロキョロ周りを見てしまう。
クロさんは、小さく笑ってベッドに私をそっと置く。
「ええ・・と、ここで寝るんです・・か?私・・」
「ああ」
いや、その、自分の部屋で寝たほうが・・休める・・かなー?なんて・・、ねぇ?
そんな私の思いをよそに、クロさんは近くのデスクに、ジャラジャラ付けている装飾品を置いて、なんならジャケットも脱ぐので、思わず回れ右をする。ななななんで??!なんで脱ぐ??!
体が固まって動けない私の後ろに、クロさんが体を寄せてくる。
「たえ」
低い声に、体が強張って動かない。
すみません!!無理です!!振り返ることは不可能です!クロさんは、私の首元を顔を寄せて匂いを嗅ぐ。
「な、な、な・・・」
「匂い、まだ付いてるな・・」
「あ、ああ・・そういう・・」
ちょっとホッとしたけど、安心はしてない。心臓はもうずっと大暴れだ。クロさんは、私の耳をそっと触る。
「耳、真っ赤」
「それは・・、そうでしょうね・・、あの、だから離れて頂けると・・」
そうすれば多少は熱も引くと思うんですよね・・。
クロさんは私の後ろで小さく笑うと、いきなり抱きしめて、そのままベッドに横倒しにすると、ぐるっと自分の方へ向かせる。ち、力が強い!!あとなんで上半身裸なんでしょうか?!
真っ赤な顔の私と、面白そうに笑うクロさんと目が合う。
目が、どこを見ればいいかわからなくて・・、あちこち泳いでしまう・・。
クロさんは小さく笑うと、そっと私を抱きしめた。
「今日は、とりあえず寝ろ」
「は、はい・・・」
でも、これ・・多分寝るのは難しいと思います。クロさんの筋肉の胸に埋れて寝るって・・不可能じゃないですかね?ドキドキしながら、クロさんをそっと見ると、嬉しそうに見ていた。
「・・・たえ」
「はい」
「好きだ」
「・・・・えっと・・、私も好きです・・」
う、うあぁあああ、めちゃくちゃ恥ずかしい!!
思いあってても、こんな風に言われると恥ずかしい一択しかない。
クロさんは、頬を指でスリスリと撫でる。あ、なんか猫を触る時みたいだな・・。猫って、撫でられるとこんな感じなのかな?そう思って、笑ってしまう。
「猫を撫でてるみたいですね・・」
「・・ああ」
大神様に唇を撫でられた時は、ゾワゾワと気持ち悪さと怖さしかなかったのに、クロさんはホッとするなぁ・・そう思ってくすぐったいけど、撫でられるままにしていた。
指が、そっと首を撫でるとゾワッとする〜〜。
「そこ、くすぐったいですよ〜!」
思わず笑ってクロさんを見ると、クロさんの緑の目は獲物を見つめるような目になって、突然噛みつくようなキスをする。へ?って言葉になる前に、クロさんの舌が口の中を味わうように動くので、驚いて手をぎゅっと握りしめると、クロさんの手が重なってきて、握ってくれた。
クロさんのキスが終わった時は、もうなんというか・・安心して寝られるとは、とても思えなかった。




