一般人、大ピンチ!
空がどんどん暗くなっていく。
クロさん、どうしてるかな・・そう思うとソワソワしてしまう。
テーブルの向かいに座ってる大神様は、呑気にお酒を飲んでるし・・。
「たえは、どうしてクロの所に帰りたいの?」
「・・え、それは・・」
す、好きって言うべきか?
いや・・、でも私の事を気に入ったって言った人だし・・、ちょっと悩んで・・、
「・・・・大事に思っているからです」
うん、この辺にしておこう。しっかりと大神様を見て話すと、にっこり笑うんだけど・・笑顔が嘘くさい。
「ふぅん・・・、半獣風情をねぇ」
「半獣って・・、何かダメなんですか?」
「醜いじゃない?」
「え?醜いですか??耳も尻尾も綺麗だと思いますけど・・」
大神様は、私を見て目を丸くする。
「醜くないの?」
「・・・そう、思った事はありません。尻尾便利そうだな〜なんて思った事はありますけど・・」
あの尻尾で手首を掴まれると、大変ドキドキするけど・・。
大神様は、面白そうに私を見る。
「ふふ、たえにとってこの世界は綺麗に見えるんだね」
「大神様は違うんですか?」
神様なのに?
思わずそう思って言葉に出てしまった・・・。
「だって、勝手なことばっかり言ってるじゃない?何もできないのに!すぐ争うし、醜い!」
う、それは私の胸に刺さる・・。
そうだよね・・。でも、何もできないじゃなくて、できない人も中にはいるし、努力してる人もいると思うんだよな・・。
「・・そういう人もいるけど、そうじゃない人もいると思います」
「誰?」
「・・・・・クロさんとか?」
こっちの世界で努力してる人って言ったら、真っ先にクロさんが浮かぶ。
だって、私に会えないのに私を守りたいからって神様になる?!そんなの・・すごいと思う。
大神様は、ああ〜と言いながらグラスに入ったお酒をぐいっと飲み干した。
「・・・そうかぁ、半獣は随分懐いてるんだね」
「ど、どうでしょう・・かね?」
なんか、こっちを見る目が怖いんですけど・・。
体がビリビリする・・、これは・・、ちょっとまずいぞ。椅子から立ち上がりたいのに、足が震える。大神様は、立ち上がると、私に近付く。
「・・・僕は?綺麗?」
「綺麗・・ですよ。な、なんの神様・・でしたっけ?」
「太陽だよ」
知ってます・・。あえて聞いてみました。
「だから・・金髪なんですね・・、はい、私の世界にもそういった髪の人はいましたけど、こんな風に綺麗な人はいませんでした・・」
言葉をなんとか捻り出す。
大神様は、綺麗な顔をして笑う。
「・・・たえは、いい子だね」
細くて綺麗な指が私の唇をなぞる。
瞬間、青ざめる。
何・・、なんでそんな・・怖い。
「花火はもういいや、こっちへおいで」
行きたくない、怖い、嫌だ。
そう思うのに、椅子から体が立ち上がる。なんで?私、立ちたくないし、大神様の所へ行きたくない。胸がドクドクと鳴る。体は震えてるのに、大神様は構わず私の手を握る。
「僕のものにしちゃえば、半獣も諦めるだろ」
頭がガンガンする。なんて・・?
誰のものに??
誰が諦めるって???
グイグイと大神様は、私の手を握ってバルコニーから部屋へ戻ろうとする。ダメだ、部屋へ行ったら危険だ・・。頭のどこかで危険だと言ってる。
「・・や、」
なんとか声は出るけど、震えて小さく音にしかならない。
「ふふ、大丈夫だよ、たえ」
大神様は綺麗な顔で私に微笑む。
・・・そうじゃない!
大丈夫じゃない!!
バンと、バルコニーの扉が開いて、そちらを見るとスミさんが立っていた。
「大神様、女性に無体を強いるのは無視できませんわ!!」
「無体じゃないよ?可愛がるだけだ」
スミさんの後ろから、アスちゃんが顔を出す。
「そ、それは愛じゃないです!!!」
大神様は、そんな事気にせず私を連れて行こうとするけど、スミさんの姿を見て少し勇気が出た。思いっきり手を引っ張ると、手が離れた!!
私はスミさんの方へ駆け出そうとすると、アスちゃんが思いっきり光を放って、私はバルコニーの外へ投げ出された。な、なんでーーーーーーー!!!!???




